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「それで何も出来ずに帰ったってのか」
翌日の朝、教室で事の顛末を水島に言うと奴は大笑いをした。
ちなみに昨日の続きは、襲い掛かって来た二人を俺は余裕でぶっ倒した。
しかし、このまま周藤明日香とエッチするのは無理やりになってしまう、つまりイチャイチャラブラブでは無くなってしまうから、俺はすごすごと体育倉庫を後にしたのだ。昨日の話はこれでお終い。
「そりゃサツマイモじゃ駄目だろ」
「うるせえ! おっぱいは触れたんだよ!」
しかし、巨乳は以前にも城ケ崎のを触ったことがあるので、今回は特に収穫と言えるものは何もなかったのも事実だった。
「まあ、結局ビッチは根も心もビッチだったてことだよ。俺の本当の愛を受け取ってくれなかった」
俺はおどけて泣いて見せた。
いくらそれが事実だろうが、認めたくは無いものだ。茶化さないとやっていられない。
「へ、嘘つきがいったいどんな本当の愛を教えてくれるってのかね」
水島の言葉がチクリと胸に刺さる。
確かに今回は嘘をついたのがいけなかった。
しかし、サツマイモに引っかかる方も引っかかる方だと思う。
いや、反省はしている。俺だって巨乳のカワイ子ちゃんとお付き合いを始めて、付き合っていきなりその巨乳がパッドだと知らされたらぶち切れるもんな、きっと。
「だから次は嘘をつかなくても良い作戦を考える。次こそは周藤明日香をこの手にしてみせる!」
「ほう、お前にしちゃ珍しくターゲットを変えないんだな」
「おうよ、今回であいつの分厚い心の装甲にひびを入れたんだ。一度失敗したくらいでターゲットを変えるのは勿体ない。二撃必殺、せっかく一撃目でひびを入れたんだ。二撃目でぶち割ってトドメと行こうじゃないか」
「果たしてそう上手く行くかな? まあ、お前と周藤明日香の関係にひびが入ってるのは事実だが」
「そういう意味じゃねえ!」
まあ、確かに悪い印象を持たれたかもしれんが、恋において好きの反対は無関心ってよく言うじゃないか。今回強い印象を与えたのはきっとプラスになるはずだ。
あとは悪いイメージを払拭しさえすれば、その強烈な印象が、そのままプラスイメージに変わるはずだ。ただ優しいだけの男がモテない理由を、教えてやろうか水島。
それから一週間、俺は周藤明日香をストーキングし、周囲を調べ上げ、ついに糸口を見つけた!
今回の作戦もばっちり、金を払わない、つまり純愛エッチという条件を満たすことが出来る。
ホント、恋の作戦を考えさせたら俺の右に出る者は居ない。いや、そこは恋に限らずか。
昼休み、食堂で一緒にうどんをすする水島に、俺は作戦を自慢したくてその内容を明かした。
「俺はまた周藤明日香とエッチ出来る方法を見つけたぞ」
「彼女にする方法じゃないのかよ」
「知らないのかエッチの後には愛があるんだよ」
「それはローマ字と掛けた洒落だろう」
「いや、一応科学的根拠が無いでも無い。まあ、それは置ておいてだな――」
「分かった、聞かせろよ」
自分で遮っておいて、とも思うが自慢したいのでお望みどおりに聞かせてあげる。
俺は水島に今回の作戦の概要を解説する。
しかし、その前に押さえておきたいのが、俺が今回のストーキングで何を知ったのかだ。
「実は周藤明日香とタダでエッチが出来るのは、チンコがデカい奴だけじゃあない。あいつのボディーガードと見張り役も、報酬としてタダでエッチが出来るんだ。そして、そのボディーガードとやらは、つい先日俺がのしちまったんで、空きがあるんだ」
「なるほど、それでてめえがボディーガードに立候補しようってわけだな」
「その通り。いやあ、ボディーガードって言ったら姫様を守る騎士みたいなもんだからね。純愛度が上がっちまうわ」
俺は出来過ぎな事態に気を良くして笑った。
「まあ、勝手に頑張ってくれ。俺は今回は降りるぜ。硬派な俺はやっぱり、清純な女の子と付き合わなくっちゃあな。周藤明日香はさすがにビッチすぎる」
前回チンコチャレンジしておいて、考えのコロコロ変わるやつだ。
どこが硬派なんだ。
「今回は最初から誘ってねえよ」
自慢と食事を終えた俺は、自分の教室には戻らず二年c組へと直行した。
教室に着くと、勝手に入って周藤明日香の元へと向かった。
いつかと同じ様に男たちと談笑している。前と違うのは、男の数が五人から三人に減ったことだ。周藤明日香は、俺が声をかける前に俺に気付いた。
「詐欺師が何の用?」
周藤明日香の声に、男たちは談笑をやめ全員こちらを向き、俺をギロリと睨む。
俺は両手を前で合わせた。
「いや、そう怒らないでくれ、この間は悪かった。今回はちょっとお詫びしたいと思ってきたんだ」
「お詫びって何よ?」
「ほら、この前俺があんたのボディーガードを病院送りにしちまっただろ? だから俺がその代わりに、あんたのボディーガードに成ろうと思ってな」
これを聞いて周藤明日香は目を丸くした。
予想していなかったらしく驚いている。
「また何か裏があるんじゃないの?」
「まさか。俺も一度女の子を騙して、よーく分かったんだ。騙す側も辛いってな。あんな真似はもう二度としないよ」
騙したせいでサツマイモを触ってもらうだけ、などという珍事が起きたのだからな。あと一歩という所でのお預けは本当に辛かったぜ。
「うーん、その目はどうやら本当らしいわね。良いわ。ボディーガードとして迎えましょう」
「ありがとう。そうこなくっちゃ!」
よし、後は適当にエッチ出来る日を待つだけ! あと、彼女には悪いが悪漢とかが来て、俺を騎士として認識してくれるイベントなんかが起きて欲しいな。それか、他のボディーガードもライバルみたいなもんだし、裏でぶっ倒しちまおうか。
上手いこと了承を得られた俺は、かなりの上機嫌で自分の教室に戻った。
実に楽な仕事だった。
最初からもっと良く調べて、この線で作戦を進めれば良かった。
そうすればチンコ巨大化薬とかサツマイモとか回り道をせず、さらには心象も悪くせず付き合えたかもしれないと思うと、俺は少し後悔した。
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