歌集  歌織物~うたおりもの~

坂井 傑

夜の半分は乾燥していて

朧夜の恋路に戻り風ひとつ応える声も小さく淡く


タンポポに日射しの歌が眩しくて街路樹達は春の眼差し


夜空から水の後先降るだけの傘を忘れた深夜の靴音


まだ速い摩天楼の夢あたためて今宵に眠る口紅の人


語るまで待つことも無く語るまで背中の言葉淋しさの青


大人とは言えないことを言えないと黙るしかない狡さに閉じて


少年の恋をしまった宝箱白いボタンは勇気の証


〘短歌大会 受賞作品〙


夕暮れのハーモニカの音少年はうまく泣けずに公園で待つ





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