異世界転生が本当に良いことだと思うのか?

れいれい

第0話 何があったか。





「……アニメとかで見たような光景だな。」





目の前に広がるのは黒い空間。光は無いが見える。自分は今、椅子に座っている。


「や。気分はどうだい?」


目の部分だけの仮面を付けたソイツはいきなり目の前に現れた。

文字通り突然。


「突然現れてそんなこと聞かれても。僕は死んだはずじゃあ……とか驚けばいいのか?」

「はっは、いいね。そこまで軽口が叩けるのなら、会話をするには十分だ。」


そんな声が聞こえると同時に、真正面に椅子が現れる。その椅子へと、目の前にいた男は座りこちらへと語る。


「私の名は……そうだね。天ノ屋(あまのや)とでも言っておこうか。」

「明らかに偽名だけども今はいい。天ノ屋、何故僕は生きている?」

「生きてはいない。しっかり死んださ。周囲の声に耐えきれず、未来が見えずにいたところに死んだ哀れな男よ。」



足を組み手を顎に当てながらその男、天ノ屋は語る。こちらの事もよく知っているみたいだ。

「……なら、何故僕はこんなところにいる。」

「君の人生を終わらせるに至ったその理由を知っていると言ったら、君は驚くかな?」

「質問の答えになっていないな。だいたい……」

「君が車で轢いた少年少女達の行方を知っている。」

「なんだと……!?」


思わず立ち上がり声を荒げる。僕が死ぬに至った原因、それは……


「……あんたは所謂、神みたいな存在か?ここは死後の世界で、最後に真実を教えてくれる。」

「神はこんなに親切じゃあ無いよ。人一人死んだところで知らんぷり。一個人のためにこんな対話の場を設けたりしない。」


座れ、と天ノ屋はその腕を椅子へと指し示す。思わぬところで自分の知りたいことを知っていると言われ混乱した頭を冷やすため一呼吸入れ、座る。


「あんたは何なんだ?」

「天ノ屋だよ。さっきも言っただろう?」

「そういうことを言っているんじゃ……」

「私のことよりも君のことだ。それに、君の死の原因を語ることで、自ずと私の話にもなる。」

「……わかった。話してくれ。最後にそれを聞いて冥府に行くのも悪く無いだろうし。」


嘘は言っていないだろう。突拍子もない事態になっているのはわかるが、ここでジタバタしてても話が進まなさそうだ。それならこの正体不明の男の話を聞いてもいいかもしれない。



「では、話そうか。君の人生の終末の話を。」

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