Ally-10:地道なる★ARAI(あるいは、たったひとつの/ニートなやりかた)
―どぅががことと?
絡み合う視線。目で語りかけて来る不穏な顔。分かっている。これが異常事態であるということは……ッ。そもそも三ツ輪さんって学食派だったっけ……? 仲のいいふたりくらいといつも教室で弁当だったような……朝の絡みといい、何かしらの意図があるとは……言えないだろうか……
―何らかの罰ゲーム……その
僕もそのようにアイコンタクトにて対話を試みる。一度振り向き直って、確かにそこに三ツ輪さんが立っているのを確認する。薄茶色のブレザー、深緑のチェックのスカートは膝くらいまである真面目な丈であったものの、もしその愛くるしいことこの上無いだろう膝小僧とかふとももが露出していたのならば……ッ
……我々は正気を保つこと、困難であったろう……すらり伸びたすべらかなおみ足は、紺のハイソックスに包まれさらにその神秘性を保っている……と、
―『ぺんぎんくんWARS』を知ってたぃがぞ……? ファミコンの中でもマイナーばに過ぎるわげ、それイコール仕込みで無いっちゃあ
アライくんからそのような深い洞察含みの言葉が……今日はいやに冴えてるな……というか目と目でここまで語り合えるものなのだろうか……それに何だか二人ともこの心の会話の方が流暢だぞ……
しかし。
「あ、えっと……ごめんなさい、食事中にいきなり声かけちゃって……」
天上のせせらぎのような(あるかな)、その柔らかさとは正反対に、こちらの心を根っこごと掴んで引きずり倒してこんばかりの
―何ぞが、企みおぅとが?
そんな中、僕の右方向からまたもそんな心の声が響いてくる。でも確かに、何のメリットも無いはずだ……三ツ輪さんのようなカースト最上位に属する御方が、我々のような底辺も底辺の輩どもに御自ら話しかけるなどと……ッ
―わからないよ……僕らにお金があるわけでも無し、何かしらこの僕らが慌てる様子を動画なんかで録っていたとしても……
―
普段ではありえないほどの高速無音のやり取りが僕ら二人の間で為されるものの、思考はそこで袋小路に嵌まり込んでしまう。どうしよう。でもどうであれ、こちらを不安げに見つめてきている三ツ輪さんをこのまま無視し続けること、それも出来ない……ッ
「三ツ輪の。
とか思ってたら直球で言ったーっ、アライくんは見たことも無いような鋭い目つきで三ツ輪さんを睥睨すると、いったんテーブルに置いた
そんな下賤の民の伝法にも程がある態度を見ても、殿上人は不快そうな表情を欠片ほども見せない……どころか、俯いて軽く握った右手を顎辺りに当てて少し顔を赤らめるといった、意識してるにしてもしてないにしても破壊力が尋常のレベルじゃないほどの仕草をしつつ、さらにの暴虐なる言の葉を紡ぎ出して来るのであった……
「ふ、ふたりの邪魔をするつもりは無かったんだけれど、朝さぁ、ウォークマンとか、ファミコンとか、すごい面白そうなことやってるなって思って……え、えぇとそ、それで良かったら、なんだけど、私も、その混ぜてもらえたらなぁ……って、あ!! あの……もちろんやだったら諦めるけど……」
何かもうドッキリでも何でも良かった。三ツ輪さんと同じ空間に居て、
あ、あわわあぅわわと本当にそんな言葉しか発せられなくなった情けない僕とは違い、アライくんはゆらりと椅子から立ち上がると、決然と三ツ輪さんとの間合いを詰めていくのだけれど。ええ、すごいメンタル……さらに。
「……三ツ輪の。いやさもう『
優位に立ったと見るにつけの、またもやな尊大目線で高らかに言いよりおったーッ……というかそんな名前だったんだねこの謎活動……それでもって古株の僕を差し置いていきなりNo.2の座が献上されているよ流石だねへぇぇぇぇ……
天上の表情を輝かせる天使に癒されつつ、団長の無慈悲な采配に抉られつつ、僕はプラマイゼロの真顔で佇むしかなかったわけで。でも、諸々差し引いても、アライくんは出逢ってから一番のクリティカルな事を成し遂げおった……
いきなりの幸運にうまく対処できないまま、も、もしかしたらこれ、学外でも三ツ輪さんと行動を共に出来たりなんかするということになるんじゃ……との妄想を膨らませる僕であったけれど。
「むわてむわてぇ~い」
「フフ……皆の衆……これは幸甚というもの」
突如として掛けられるそのような野卑なる声と不気味なる声。やはり……好事魔多しとはこのことか……しかし……ここは引けない。引けない戦いが今ここにある……ッ(たぶん)
アライくんと僕は、地道に敵も味方も増やす。
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