第50話 相性ピッタリ
矢島萌奈美(やじま もなみ)と幸田一馬(こうだ かずま)がイチャラブしている姿を見つめて黒木(くろき)アイのほおがポッと赤くなった。黒木アイがポツリとつぶやく。
「私もあんな風になりたい」
うっ、これって結果オーライってやつか。この際だ。仕方ないぞ。もっとヤレ、萌奈美。いいぞ一馬!そうだ、萌奈美の顔を押さえて更にぶちゅーっと。いけー。一馬、男をみせろ。
バタン。
廊下へと続く扉が閉じる。
「黒木さん。これ以上は彼氏ができてからのお楽しみだね」
扉を閉じて戻ってきた神崎未来(かんざき みらい)が放心して二人を見つめていた黒木アイの肩に手を置いた。
「じゃー、黒木さんの彼氏探しを続けよっか」
黒木アイはコクリと素直にうなづいた。そっ、そうだよな。一馬と萌奈美みたいな変態コンビに感化されてはいかんもんな。
「ラブレターをくれた人には男子もいたでしょ。黒木さんが気になる男子はいなかったの」
「うーん。ラブレターを貰ったわけじゃないけど、同じクラスの富山修(とみやま しゅう)くんがちょっと気になっているかなー」
おおっ。ちゃんと、いるじゃないか。よしよし。って、富山修くんって誰よ。俺、友達関係が狭いからさっぱりわからない。ここは一つ、学園の頼られ男子こと、方々に顔が広い爽やかイケメン幸田一馬(こうだ かずま)に聞くっきゃないか。って、だだ今、萌奈美とお取込み中でした。
「そっかー。良いんじゃない。で、富山修くんってどんな男子だ」
思わず体を乗り出してしまう。興味津々ってか。いやっ、これは決っして野次馬根性じゃないぞ。れっきとした人助けだからな。
「えっと、髪の毛が短めの丸刈りで、小っちゃくて丸っこくてプニュプニュしている。ちっちゃな目がクリクリってしていてクマさんみたいな子」
ぬぐっ。美男子の容姿を表す単語じゃないなぞ。クマの縫いぐるみと言えば聞こえがいいが、チビ、デブ、ハゲの三拍子揃い組のいわゆる女子に不人気キャラちゃうか。
「彼は勉強がずば抜けてできるとか?」
「んーん。どちらかと言えば、ダメな方かも」
「じゃ、めっちゃすばしっこくって運動ができるとか?」
「秋のマラソン大会では学年最下位だった」
くっ。勉強もスポーツもダメか。聞いた限りでは容姿もそれほどよくないよなー。坊主頭のチビデブときた。さては最後の切り札があるとかか。女子は何気にこいつに弱い。
「大金持ちの大企業の御曹司とか」
「知らないけどそんな話は聞かないかも」
これもハズレか。美少女が惚れる所が見つからんぞ。てか、真逆をいっているんじゃないか。嫌われどころが満載って言うか。
「で、その富山修くんって子のどこが気になるんだ」
「うーん。スマホアプリの『嫁』の話を楽しそうにしてくれた」
あぐぐ。完全なオタクじゃないか。どこのクラスにも公然とアプリキャラの話で盛り上がる連中が一組くらいいるもんな。それにしても、黒木アイに面と向かってスマホアプリの『嫁』の話を楽しそうにするとは・・・。ある意味、大胆不敵と言えるかも。
が、話題にする二次元世界の嫁キャラじゃなくて、黒木アイは実在する美少女だぞ。悪いが、つり合うとはとても思えない。
「大樹は髪の毛伸び放題のヒョロヒョロだったけど、正反対だね」
未来、ここで俺を持ち出すのか。萌奈美と一馬がここに居なくて良かった。やつらがこんな話を聞いたら一生ネタにされかねない。
てか、顔も知らない富山修くん。すまん、俺が言えた義理じゃなかったわ。
「じゃあ、その子に決めよっ。黒木さんの眼鏡にかなったんだから大樹みたいに素敵な男の子だよ。うん、私の勘に間違いなし」
未来、TI技術の推移を尽くしたAI生まれがよりによって勘に頼るのか。そうなのか。占いが大好きな同年代の女子のまんまだな。もう少し、未来の技術を使った科学的な決定法を選ぶと思ったぞ。
「うん。姓名判断も、星座占いも相性ピッタリだ」
そういや、美少女育成アプリの中に占いコーナーがあったような。未来、まさかそれを使ってたりしないよね。んーん。俺と未来の相性はどうなんだろ。後でこっそりと確認しておこう。
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