ネット小説となろう系の問題について。

無銘 竹光

 なろう系と消費系

 現在、ネット小説はかつて無いほどの人気を持っています。しかし、その勢いの中に潜む闇と、それが引き起こす「ライトノベル文化」の崩壊。それを、のではないでしょうか。これについて、語っていきます。




 まず、最近の流行である「異世界転生」「異世界召喚」「無双」「最強」「ハーレム」…いわゆるなろう系ですね。それについてです。


 この文を読んでくださっている方の中にはいわゆる「なろう系」が嫌いな人も多いと思います。ですが筆者、そもそも「なろう系」と一括りにして評価してしまうのがあまり好きではありません。なぜなら「なろう系」に属するであろう作品の中にも、筆者がぼろ泣きした作品もあったり、腹を抱えて笑った作品もあるからです。また、なろう系でも一番嫌われているであろう「異世界召喚(転生)最強ハーレム作品」という括りであっても、筆者、そのジャンル自体は嫌いになれません。


 皆さんは「ゼロの使い魔」という作品をご存知でしょうか?「なろう系」の火付け役とも言われてる作品ですね。というか、「ゼロの使い魔」のSSが派生して「なろう系」が生まれたといわれています。内容は「異世界召喚!主人公強い!ハーレム!」の三拍子です。ですが、「なろう系嫌い」と公言しているどころか日頃から罵倒までしている友人に全巻貸して無理やり読ませたところ、一週間後に「全巻買ったから返すわ」と言わせるような作品です。なぜ、彼をそこまで動かせたのか。その理由を他作品との差を交えて考察していきます。


 まず、ジャンル「異世界、主人公強い、ハーレム」に関しては、前述したとおりなに一つ変わりません。では何が違うのでしょうか。筆者は、「異世界に召喚ないし転生する創作的(作者的)な理由」にあると考えています。


 例に挙げています「ゼロの使い魔」の作品の本筋として、「主人公が持つ価値観とヒロイン達の持つ価値観とのすれ違い」いわゆる「文化の差」が存在します。ほとんどの価値観はストーリーが進んでいくにつれ、譲歩、順応していくのですが、とある一つの価値観だけは絶対に譲りませんでした。そのせいで何度もけんかになっちゃうんですけどね。

 ですが、「好きな人のために、これだけは絶対に譲れない」と豪語する主人公には、正直惚れました。自分の価値観、矜持を守るために、命を賭ける主人公は本当にかっこよかったです。筆者、もう何十回読んだかわかりませんが、今でもその話を読むと泣けてしまうので家から持ち出し厳禁なんです。

 そういう主人公のかっこよさを見せるための「異世界召喚」だったんだなぁとしみじみと感じられる作品となっております。


 一方、現在の大多数の「なろう系」、筆者は陰から「消費系」なんて呼んでいますが、その「異世界召喚ないし転生」の創作的な理由は簡単に見えてきてしまうんです。単純ですよね。「召喚ないし転生させるときに主人公に最強の能力を付与するための道具」でしかないんです。この場合、作者がその主人公に自己投影することは何の問題もないのですが、その作者が「かっこいい」の意味をはき違えると大変なことになっちゃうんです。「俺最強!超モテモテ!かっこいい!」になってしまうと、(筆者的に)頭を抱えたくなってしまう作品が生まれてしまうわけです。

 そのため筆者は、「神様の手違いで殺してしまったけど元には戻せない決まりがあるから、お詫びとして強い能力あげて異世界に転生させるね」みたいなのは申し訳ないですが即ブラウザバックしています。初手からご都合主義じゃあ筆者の趣味に合う作品のはずがありませんので。


 一応ハーレムについて言及しておきましょう。「ゼロの使い魔」のハーレムは「主人公がかっこいい、だからモテモテ」と、あくまでキャラクター視点であるのに対し、「消費系」のハーレムは「モテモテ、だからかっこいい」と作者視点となり、作者の道具でしかない、ことの差があると考えています。


 


 このことから「なろう系」と言われている作品であっても、絶対に面白くないなんてことはないはずなんですよね。なので、「なろう系は悪」と言っている人はとりあえず考えを変えて、「少しだけ読んで見ようかな」と思うと世界が広がって見えるかもしれません。


 この次は「消費系」作品がもたらすインターネット小説文化とライトノベル文化の危機と、インターネット小説と、紙媒体のライトノベルの差について書いていきます。

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