私の初恋を君に
星塚莉乃
第1話 始まりはあの日から
______________茜、約束するよ。君にこの感情を必ず返すと。茜が16歳になったら迎えに行く。だから、それまで耐えてくれないか。本当は今すぐにでも君を助けたい。けれど、こちらにも準備があるんだ。けど、約束するよ。必ず君を迎えに行くと。
その
「待って! いかないで! 私も連れて行って」
自分の叫び声で目が覚めた。また、この夢。幼いころからずっと見続けているこの夢。いったいいつになったら、あの人は私を迎えに来てくれるのだろう。
私、本庄茜は明日で16歳になる。私には不思議な力があるけど、それを家の人間たちには隠して今まで過ごしてきた。この家の人間は、私のことを家の道具としか見ていない。そんな人達には、何を言っても無駄だと早々に諦めた。
人には感情がある。喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖の7つだ。
私はその中の喜び、悲しみ、驚きがない。なぜ無いのか思い出そうとしても、思い出せない。
きっと5歳の頃のことが、関係してきているのではないかと思う。私には、感情を自由に取り出す力がある。感情は取り出すと、光の玉のようになり、幼いころはそれで遊んでいた。けれど、お父さんに怒られてしまった。このことが、この家の人間にばれると必ず利用されるだからその力は隠していなさいと。けれど、私の両親は7歳のころに忽然と姿を消した。幼い私を、この家に置き去りにして……
でも、どこに消えたのかはわからない。もしかしたら、私のことも連れて行こうとしてくれていたのかもしれない。その真相は、わからない。だが、この家の人間が反対したことは間違いないだろう。
先ほども言ったが、私は5歳のころの記憶が曖昧だ。ただ、感情をなくした私を見てお父さんが言った言葉だけは、鮮明に思い出すことができる。
「そうか。お前も会ったんだね。それなら、その人の言う通りにしなさい。きっとその約束は果たされるから、安心しなさい。だけど、例え覚えていることがあったとしても、知りませんで通すんだ。いいね?」
何を言っているのかはよく理解できなかったが、幼心に私はお父さんが言うのなら、大丈夫なんだと思っていた。
曖昧と言っても、覚えていることもある 。それは感情を妖怪に預けたことと、その人が16歳になったら迎えに来てくれるという点だけ
だから、お父さんの言いつけ通りにした。そうしないと、いけないって思った。
私は、この家の人間が嫌い。この本庄の家が
この家に、私の居場所なんてない。
この家の人間は、狂っている。もしかしたら私も両親と一緒に、居れたかもしれないのに……
7歳の私の誕生日のあの日、私の両親が忽然と消えてしまったあの日、3人で出かけるはずだった。
けど、この家の人間に邪魔をされた。
私を蔵に閉じ込めて、どこにも行かせないようにした。だから私と両親を引き離したのは、この家の人間と言っても過言ではない。
そこまでするかって思った。私の事、大切だなんて思っていないくせに……言われるのはいつもお見合いのこと。
「お前が、16才になったら良家の家の息子と結婚させるからな! だからその日まで花嫁修行を頑張りなさい! お前だけが頼りなのだから」
これに対しての、私の返事はいつも同じ。
「自分の幸せは自分で決めさせてください」
これに対する答えもいつも同じ。
「お前はまだ子供なんだ。だから、大人の私たちがお前の幸せを決める。それに黙って従っていればそれでいい」
こう言われると、私は何も言えなくなる。いや言い返す気力が、無くなるって言った方がいいかもしれない。
あの人たちは、私の事何も見えていない
私は、まだ高校生なのに……それなのに、結婚とか早すぎだし考えが古すぎる。
そんなこと思っていても、口には出せない自分にも失望している。だからもう諦めたの。
私が、何を言っても無駄だって分かったから。10歳の時にそう悟った。いや悟らざるを得なかった、と言った方が正しい。
私が10歳の時、友達と遊んでいて私の不注意で転んで擦り傷を負った時、あの人たちは友達の親に抗議しに行った。
私の娘に、怪我を負わせたと。あの時私は、不注意で転んでしまった。このことにあの子は関係ない。あの子は親友だから、私から奪わないで欲しいとどれだけ懇願しても、あの人たちは決して聞き入れてくれず私は唯一の友達を失った。
その時に思った。私の意見なんて、聞き入れて貰えないんだって。どれだけ懇願してもどれだけ泣き叫んだとしても私の声は、この人たちには決して届かないって。
それなら諦めようこの人たちに、何を言っても無駄だってだから私は諦めた。
それから、この家では笑っていない。笑えるはずがない。
こんな冷たい家で笑えるはずがない。私は愛されてなんかいない。
誰かここから救い出して欲しい。
また、いつもの日常が始まる。冷たく暗い日常が
早く、あの人が迎えに来ればいいのに……
早く、私をここからこの家から、救い出して欲しい。
ここから、この家から出られるならなんだってする。誰にだってついて行く。
それがたとえ人間ではなく、妖怪だったとしてもそれでも別に構わない。
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