第315話 役割と決意

 久々に光の塔に来たわけだが、先ずは下層で戦うメンバーの為に安全確保を行う。


 天使はランクの低いメンバーには手強い相手となるので、ランクの高いメンバーと組ませて慣れさせる。


「うらぁっ!」


「アイスランス!」


「うわっ、ミスった!そっちいったぞ!」


「任せて!って、あー躱された!?」


「問題ない、私がとどめを刺す」


 最初は順調に倒せていたが、5階層辺りまで来ると苦戦をするメンバーが出てきた。

 うん、ここら辺がいいかな。

 適度に苦戦するくらいが丁度いい。

 五階層の広場で簡易キャンプを張らせる。

 ついでに、メイア達にここで給仕してもらう。

 子供や若者だらけなので食事を直ぐにとれるようにとの配慮だ。


 今回はチームの中でも新参組のカミオたちも参戦している。

 カミオ、バーナー、レオナ、ミリンダみな元気そうで良かった。

 本人の希望もありデュークは冒険者を引退して、屋敷の管理に精を出している。

 普段四人ははライの手伝いをしていて、空いた日はライが選んだクエストをこなしている。

 それなりに成長したが、やはり高位ランクと一緒に戦う方が上がりやすいし、多少無茶が出来る。

 それに自衛だけだとしても、最低Bランクは欲しい。

 なので重点的に鍛えさせる予定だ。


 レーナのチームはもう少し上層がいい気もするな。

 自分らで回復出来るし、10階層あたりでキャンプを張らせるかな。

 本来ならセツナを一緒に行かせたいところだが、こちらも戦力が必要なので俺のチームに入るのが決まっている。


 セツナ本人に話したら、『勿論だっ!ありがとうっっ!!』と言って抱きつかれ、周りからの視線が痛かった。

 これで覆したら、刺されかねないので決定事項だ。


 回復出来るメンバーをカミオたちに付けておきたいが、誰をつけるか悩むな。

 アイナはカイトと一緒がいいだろうがカイトを下層で遊ばせるのは勿体ない。

 大魔王と戦う時、カイトは連れていく。

 しかし、今回は最上階にいるであろう守護者よりもヤバいのが来るというし、それが終わるまでは連れて行けない。


 取り敢えず、カミオたちのサポートはミラとザインにしてもらおう。

 よくよく考えたら、Sランク冒険者二人がサポートにつくって贅沢な話だな。

 うん、死なない程度には厳しくやってもらおう。


 そして、レーナのチームにはカイトとアイナだ。

 まだまだ成長期な奴多いからな。ビシバシ鍛えさせよう。


「また、俺ら留守番なんですか?!」


「んー、何回も死にたいなら来てもいいけど?」


「何回もっ!?って、そんな危険な所ならなおさら少しでも戦力があるほうが…」


「カイトよ、お主では魔物たちは倒せても奴には手も足も出ない。

 既にSランクであった主が手も足が出なかったバケモノが


「!?」


「そうか、もう居るのか…」


 背中に嫌な汗が流れる。

 あの時の光景は今でも忘れない。

 全身が炭になってまで守ってくれたカルマとニケ。

 ふたりが居なかったらとっくに終わってた。

 二度とふたりをやらせない!


 カルマの説明に絶句するカイト。

 悪いが今回だけは、連れて行かなければいけない聖女達以外は最低でSSランクのと決めている。


 だから、ゲンブやフィアも5階層に残っている。

 素材回収はしてきたいからね。


「あ、そうだそうしよう」


「なんですかいきなり」


「カイト、俺からの試練を与える。

 カミオたちに10階層をクリアさせて合流。

 そこから20階層のボスを目指して、お前達だけで倒せ」


「確か、ここをクリアした時まだユートさんもSランクでしたね

 分かりました、その試練受けます!」


 うん、いい気合だ。

 カイト達がクリアするのが早いか、俺達がアイツを倒すのが早いか。

 これは良い勝負になりそうだな。

 勿論、俺がアイツに負けるなんて考えていない。

 絶対に勝つ!


 全員の作戦が決まったところで、早速行動を開始した。

 先ずはカイト達を先頭に下層攻略組を出発させた。

 万が一、ヤバいやつがいた場合は安全を最優先し撤退するように厳命した。

 確実に蘇生出来る俺が居ない以上、無理は厳禁だ。


 キャンプが出来上がり、狩りが安定したのを見計らい俺らは一旦1階に戻った。


「さて、ここからが本番だ。サナティとアリアは絶対に前に出るなよ?

 雑魚でもかなり手強いからな」


「はい、分かりました」


「ええ、承知しております」


 2人とも僅かに緊張を滲ませている。

 しかし、そのくらいで丁度いいか。

 21階より上はまだ未攻略領域とされている。

 ここからは俺もまだ見たことが無いから油断はできない。


「主様、2人は私がしっかり守りますのでご安心ください」


「前と違い、我等も強くなりました。それに以前は居なかったディアナ、ヘカティア、ニクスも居ます」


 確かに、この五名だけでも攻略出来るんじゃ無いかと思うくらいに強い。

 予想では、50階までは無双出来るんじゃないか?


「ユート殿、私もいるぞ!」


「パパ、私もクロもいるよ!」


「ああ、そうだな。

 俺は1人じゃない、一緒に行こう!」


 あれから俺自身が強くなった。

 しかし、それ以上に仲間が増えさらにその仲間達も強くなった。

 一人で戦う必要は無い。

 こんなにも心強い仲間がいるのだから。

 そんな想いを胸に、ひたすら塔の中を走り抜けていくのであった。



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