第298話 因縁の対決
「さぁっ、ユート!楽しい戦いのお時間だぜええええっ!!」
喜々とした顔をして、怒号と共に襲い掛かってくるグラム。
いや、なんでだよ!楽しくなんかないぞ!?
そんな俺にお構いなく、凶悪なフォルムの斧がブオオッ!と音を立てて襲い掛かってきた。
それを新しい愛剣ソル・マーニで難なくはじき返す。
見た目と違い、かなりの攻撃力を持つ剣なので驚いたに違いない。
チッと舌打ちをしてから更に追撃をしてくる。
流石に同じ攻撃はしてこないようだ。
すぐさまに、
うっすらと赤い光を纏っているから、金剛でも使ったのだろう。
先ほどよりも、一撃が重くなったがそれでも問題ない。
こちらもまだ本気で戦っているわけじゃ無いし、今はお互いじゃれ合っている程度だ。
「そらそらっ!どうした!?その程度じゃねーだろうっ!もっと本気で来いよユート!」
「はっ、断る!何が楽しくて、おっさん同士で遊ばないといけないんだよ。それに、お前の相手はアイツだろ?」
「ああん?何言ってやがる!お前以外に俺とやり合えるヤツなんて…」
ドゴオオオオンッ!!!
突然グラムの目の前を何かが通り抜け、地面に大穴を空けた。
一瞬で広場が滅茶苦茶になっている。
その中心には衝撃と摩擦によってなのか、燃え上がる一本の槍が突き刺さっていた。
「おいおい。グラムはどうでもいいけど、町はあんまり壊すなよ?あとで住民に恨まれるぞ?」
「そんなもの、後でどうにでもなるでしょう?それよりも、お久しぶりねグラム。今日と言う今日は、もう容赦しないからね?今まで私が受けた苦しみをその身をもって贖ってもらうからっ!」
「お、おまえセツナか?なんか妙に色っぽくなったな?ははーん、さてはユートに…」
「セリオン、ブレス攻撃!」
『任せろ。アイスブラスター!』
グラムが言い終わる前に、相棒のセリオンから氷属性ブレスがグラムに向って撃ちこまれる。
無数に散らば目られた氷の飛礫と、触れるだけ凍り付くブレスが容赦なく襲い掛かる。
流石にすぐに回避するが、グラムが居た場所は更に地面が抉られてあたり一面が凍り付いた。
「あっぶねぇな。何すんだてめー!ちょっと会わないうちにえらく綺麗になったから、からかっただけだろっ!」
「ふん、今さらあなたにおだてられても嬉しくもなんとも無いわ」
セツナはセリオンの上からグラムを睨みつけ、すぐに呆れたような顔に変えてため息をつく。
「そうね、ユート殿はあなたと違って良い暮らしを提供してくれたから、荒れ果てた生活させられたあの時よりも綺麗にもなるってもんだわ。それにユート殿は優しいし、みんなを守れるくらい強いし、お金もちゃんと稼いでるし、いい筋肉しているし、ちょっと酔った勢いで誘惑しても揺るがないくらい身持ちが堅いし。本当、もうちょっと揺らいでもいいのに!」
「あ、あのセツナ…さん?」
なんか怒りMAXになってて、色々と口走ってませんか?
え、俺誘惑されてたんか!?なんか俺に矛先向いているし。
まぁ身に覚えは…、無くはないが本気にしてなかったよ。
「それにね、この際だからハッキリ言うけど。あなたより、ユートの方が百倍イケメンだから!」
「なっ、て、てめぇ!それをこんな所で言うかよ!ちくしょー、ボコボコにしてあとで
「そういう、下品な所が全くダメなのよあなたは!やれるもんならやって見なさいよっ!返り討ちにしてあげるわ!セリオン行くわよ!」
セリオンに戦いの号令をだしつつ、自身も剣を抜く。
セツナも自身の
その手に持つ剣も光を放っている。
「さあ、いくわよグラム?今までありがとうね。そして、死ーーーーーーーねええええええええええええええええええっっ!<グランドクロス>ッッ!!」
ああ、もうストレートに死●って言っちゃったし。
かなりプッツンきているね。
まぁ、聞いてた話だと殺意が湧いても仕方ないレベルだししょうがないな。
それを皮切りに二人の決闘が始まった。
お互いに頭に血が上ったように見えたが、さすが戦闘に関しては二人とも一流なだけはある。
一撃一撃が的確で、必ず急所狙った攻撃をしている。
しかしその表情は、獰猛な猛獣が獲物を襲う時の顔だ。
グラムもセツナもお互いの手の内を知り尽くしているからこそ、一切の手加減の無い攻撃をしている。
「くっそ、思ったよりもやる様になってるじゃねーかっ!」
「いつまでも、あの時のままだと思わない事ね!それに、一対一で戦っているだとか思っているんじゃないでしょうね?セリオン!」
「なっ、てめー!」
『凍てつけ<アブソリュートゼロ>!!』
絶対零度の冷気がグラムに纏わりつく。
セリオンも自らを鍛える為セツナと幾度ともなくクエストに出ていた。
そのおかげであの時の数倍の強さを身に付けている。
そのセリオンの繰り出すスキルの効果は絶大だ。
「くっそ、ボス級の飛竜とかありかよ!」
『我は飛竜ではない、白き氷竜帝セリオン。そこらのドラゴンと一緒にされては困るな』
そういいつつ、あたり一面に魔法陣を展開する。
そこから無数の氷の槍がグラム目掛けて撃ち出された。
「ぐぅ、がぁあっ!!」
躱しきれず氷の槍に体を抉られるグラム。
すかさず回復ポーションを飲んで治療をして治しているようだが、そこに大きな隙が生まれる。
そんなチャンスを逃すセツナでは無かった。
「プレイヤーを目の前にして、それは悪手ねグラム!〈デンドエンド〉!」
セツナから無数の剣閃が繰り出された。
そのどれもが正確に急所を突く。
一瞬の油断を許したグラムは捌き切れずその防御を突破されてしまった。
「ぐあああっ!くそ!くそ!!!」
あまりの威力に吹き飛ぶグラム。
しかし、その勢いを利用して距離を取る事に成功したようだな。
流石戦い慣れているな。
「お前相手に切り札使うなんて、俺も随分やきが回ったもんだぜ。だが、四の五の言っている場合じゃねーなこりゃ」
素早く取り出したポーションを体に振りかけると、手に持っていた斧を迷わず投げ放った。
「そこのデカ物じゃあ、躱せねーだろっ!〈スカイドライブ〉!!」
スキルの効果により、高速回転した斧がセリオンの胴体を目掛けて襲い掛かる。
しかもまるで意思がある様に、躱そうとするセリオンを追尾していった。
咄嗟にその鋭い爪で斧を防ごうとして、
グオオオンッ!!
思わず咆哮を上げるセリオン。
すぐさま回復ポーションをセリオンに振りかけるセツナ。
そして、一瞬出来た時間がグラムの狙いだった。
「全てを打ち払い、全てを断ち切る神剣よ、俺に力を貸せ!〈
グラムがいつの間にか取り出した古びた長剣を点に掲げ叫んだ。
その似合わない恰好はともかく、眩く光り出した剣は間違いなく
「セツナ!その剣はヤバイぞ!!」
「分かっているわっ!やらせるかああああああっ!!〈神速剣〉!」
セツナの最高スキル、発動した瞬間に相手を切り裂く必殺の剣。
それは間違いなくグラムを切り裂くはずだった。
しかし、ガキンっと金属に弾かれるような音が響きその攻撃が防がれた事を告げられた。
「え、効いてない!?」
「はっはっはっはっは!今の俺には、そんなチャチな攻撃じゃきかねーぜ!」
そこに居たのは、金と黒の光に包まれたグラムであった。
…いや、どっかの戦闘民族かよっ!と心の中で突っ込んだのだった。
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