第286話 ドラゴン狩りの作成会議

 一方、ダンジョンに残ったメンバー達はというと。


「主殿が帰られるまで、ここでぼーっとしているのも、どうかと思うがの?」


「確かに、でも無理して怪我したら目も当てられないさ。だからといって、ただ待機しているのも時間がもったいないよなー」


「それなら、ある程度の数を『釣り』して引っ張ってきて倒すと言うのはどうですか?」


「おお、それならいいかも知れないな。そうなると、その役割は…」


「まぁ、言い出しっぺが俺ですから俺がやりますよ」


 しっかりと休憩を取った後、ニクスがぼやく様に呟くとガントがその話に乗っかる。

 折角貴重な素材の元となる魔獣が沢山いるのだ。

 ここまでにもかなりの数が手に入ったが、多くて困るような物ではない。

 それに余った分は、ギルドに売ればそれだけでかなりの収入になるだろうから金策になるのだ。


 それを聞いたカイトが、ゲームでは一般的な狩りの方法である『釣り』で安全に狩りをしようと提案する。


 『釣り』とは、囮になるプレイヤーが遠くから攻撃を仕掛けて敵にターゲットされてから、安全な場所で討伐するやり方だ。

 数も調整出来るし、なによりも優位な状況を作りやすい。


 ここはゲームの世界ではないが、それでも同じやり方が出来るのはこれまでの旅で実証済みだ。

 問題はある程度慣れている人がやらないと『トレイン』という、無数の敵を引っ張ってきて大混乱に陥る可能性があるため、上手くターゲットを連れて来れるかどうかだが。


「引っ張る役は、カイトよりもミラの方がいいんじゃないか?かなり遠距離からでも攻撃出来るだろう?」


「確かにそうだけど、それだと早い敵に追いつかれた時にかなり危険になる。それに魔法検知する範囲が広い敵がいるから魔法だと予想よりも多くの敵を引っ張ってきかねないよ」


「そうなると、カイトが中距離から『剣閃』を放って素早く離脱するしかないって事ね」


 ダンが思いついたように提案してみるが、既に考えてたようでカイトが難色を示す。

 アイナが成程と頷きつつ、やっぱりカイトがやるしかないという事だと結論を述べた。


「まぁ、そう言う事だね。よし、早速やってみようか。ついでに、あのクロノスが配下にした悪魔達がどんな風に反応するかも見てみたいし」


「さらっとおっかねー事を言っているな。まぁでも、それを確認しておかないと本当に安全かも分からないか?」


「いざとなれば扉の向こうに行くしかないけど、そうならないと願いたいわ。ミラ、とびっきりの魔法を頼むわね」


「分かったのです!でもいくら天井が高いといっても、範囲の広い魔法を使うと巻き込んじゃうので、私は単体対象の魔法を中心に使うのです」


 とりあえず作戦は決まった。

 囮はカイト、引き込んだ敵をみんなで一網打尽にする。


 最初にミラの魔法で大きくHPを削り、そこからは接近戦の得意なメンバーが前に出て攻撃をする。

 遠距離攻撃が得意なミラ、ユウマ、ダイキは後方から攻撃支援とし、取り巻きがばらけないように壁役のレーナとアーヤが左右から挟むこむ事になった。


 ニクスは狙った獲物の後ろからやってくる敵を分断して近づけない為、炎の壁を作って数をコントロールする役目になった。

 これにより、『トレイン』が発生してもある程度の数を抑える事が出来る。


 勿論、こんな事が出来るのはニクスがユートが従える高位の魔獣だからであるが。


「ふむ、面倒な役割だが力を示すには丁度良いかのう。では妾がお主らに格の違いという物を見せてやろう」


 口では面倒だと言いながらもやる気満々なニクス。

 手に持つ扇子で口元を隠しているが、機嫌が良さそうのは見えなくて分かった。

 意外と扱いやすい奴かもしれないと、口に出さずに思うカイト達であった。


 早速、カイトは相棒のグランに乗って飛び立った。

 狙いはエルダードラゴン等の高級素材だ。


 この世界の冒険者からすれば伝説級の魔獣であるが、今のカイト達であれば問題なく倒せる相手となった。

 伊達にこの世界で鍛えてきたわけじゃ無い。


 それに今のカイト達だと、このクラスの魔獣じゃないとスキルの熟練度が稼げないので、相手としても丁度いい事になる。

 熟練度も上げれて、お金も稼げる。

 そんな絶好の相手となるのだ。


「さーて、ユートさん達が帰ってきたら驚くくらい稼がないとな!」


 そういって、ドラゴンの咆哮が聞こえる方に飛んで行く。


 その様子をカースオブクイーンが眺めていたが、動く様子は無い。

 どうやら、本当に攻撃してくる様子は無い。


 かといって、手助けをする感じでも無かった。

 多分、自分の領域に入らない限り攻撃するは無いんだろうと考える。


「でも、連れて行ったらいきなりドラゴンと戦ったりしないよな?」


 そうなると、先ほど考えた作戦が無駄になる。

 戦いは楽になるのかもしれないが、ボス級が遠慮なく攻撃を開始した場合は、自分達が巻き添えをくらいかねない。

 流石にそれだけは勘弁したいところである。


「お、いたいた。グラン、怖気づくなよ?くらえっ!剣技『炎月』!!」


 こうして、カイトが放つ剣技が開戦と合図となるのであった。

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