第265話 賠償と交渉の話
なるほど、やはり魔王の収める土地なんだな。
しかし、魔王って思ったいたよりも沢山いるんだな。
「魔王って事は、中央大陸の魔王ルキデウスとも繋がりがあるのか?」
「繋がりは無いと言えばウソになるな。というよりは魔王と呼ばれていて、ルキデウス様に関りを持たない者はいない。仲がいいかどうかは別としてな」
なんだろう、暗に魔王ラーザイアはルキデウスとは仲が悪いと言っているように聞こえるな。
もしそうなら、願ってもいないが。
「そう言うもんなんだな。出来るなら、そのラーザイア王と会っておきたいな。なるべく、この大陸にいる間は襲ってこないように話を付けたい。あとは、今回捕らえた兵士たちは捕虜になるから、その身代金を請求しないといけないだろうしな」
「おいおい、随分とちゃっかりしているな。まぁ、軍を出した以上戦争と変わらんか。俺の首ひとつで済めばいいがなぁ…」
今回の失態の責任は取らないといけない立場のレオナルドは、自分が獣王に処刑されるだろうと考えているようだ。
なんとなく、コイツを死なせたくないなと思っている俺がいた。
そんな事を思っても、他国の事だからあまり口出しは出来ないだろうけど。
まぁ、口添えくらいはしてもいいかも知れない。
「全員の治療が終わったら、そのまま町に行こう。ラーザニア王がいる城にはそこからどのくらい掛かる?」
「王城がある我らの王都はその隣さ。ここから見える町は商業都市サーバン。そしてその奥にある王民が住む街が王都ライオニアだ。なので、サーバンに入れば1時間ほどで王都に入れる」
「なるほどなー。しかし、いくらお前たちを連れて行っても、すんなり入れてくれるか?」
「俺とだけであれば、問題なく入れるだろうさ。中に入ったら、護衛はついて行けないが」
「まぁ、それでも構わないさ。話をしに行くだけだ。じゃあ、町に着いたら王都へ同行することを伝えてくれ。ついでに誤解があって戦闘になった事と、既に和解している事、あと迷惑料を取られそうな事もね」
影の中にクロをひそませておけばいいし、何かあればクロを通じてカルマやニケにも連絡を取る事が出来るだろう。
それに逃げるだけなら、俺だけでなんとかするつもりだ。
いくら相手が魔王とはいえ、逃げる事くらいは出来るだろう。
俺が迷惑料の事も伝えろと言うと、ちょっと嫌な顔をしていたが、仕方なしと呟き俺の言葉にうなずくのだった。
丁度話が終わった時だった。
「パパ、みんなの治療終わったよ。あ、ええと一人だけ『こいつはいいんです!』って言われて断られたけど、それ以外の人は動く分には問題ないよ」
「おーリンか、ご苦労様。よし、丁度終わったみたいだし獣王の国に行こうか」
「街に行くの?そっかー、みんなを送り届けないとだよね」
「まぁ、さすがに1000人を運ぶ事は出来ないから歩いて帰って貰うんだけどね。リン、アリアとカルマを呼んで来てくれ」
「はい、分かりました。それでは、失礼します」
リンはぺこりと丁寧にお辞儀してから、テントと出ると軽快な足取りで去っていった。
「お前の娘か?」
「ああ、そうだよ。可愛いだろう?」
「そうだな。まぁ、俺の娘には負けるがな!がっはっはっは」
なんだお前も親馬鹿かと言うと、『否定はせんさ』と更に豪快に笑うレオナルドであった。
うん、こいつ事好きだな。
事が終わったら、ゆっくり酒でも呑みながら話をしてみたいぞ。
リンに連れられて、アリアとカルマがテントに入ってきた。
3人とも俺の後ろに置いていた席に座った。
「さて、これからの流れについて説明する。まずはサーバン…ここから遠くに見える町だな。あそこにこのレオナルド将軍が連れてきた兵士を全員送り届ける。副官や兵士と俺らのユニオンメンバーはそのまま町で待機。そこからは、俺とレオナルド将軍と二人で王都へ向かう。カルマとニケは城門で待機だ」
「承知」
カルマは素直に頷いた。
多分、意図は察している筈だ。
「そして、王城にて獣王であるラーザイア王に会いに行く。そこで事の経緯と、賠償請求をする。ま、迷惑料だな。まぁお金が困っているわけじゃないし本命は別だから、そこはラーザイア王と話をしてみてからだな。後は、今後俺に兵を差し向けないようにすることの約束を貰うってところだな」
「そうですか。そもそもは、暗黒の森に入りたかっただけですものね。ついでに、ガイドを付けて貰えば宜しいんではないでしょうか?どうも、特殊な結界があるようで、空からの侵入が出来ないみたいですし」
「ああ、それはいいかもしれないな。さすがアリアだな、良く機転が回る」
「あとは、瑕疵がそちらにあるので、請求できるものはすべて請求しましょう。下手に出ると相手になめられてあちらが主導権を握る形になるでしょう?ユートさんは盟主なんだから、そういう交渉はしっかりしないとダメですよ?」
さすが王女だな。
王族との駆け引きで、下からいっても良いことは無いみたいだな。
ようは、交渉の場ではその時点で負けということになる。
遠慮を見せないで、図々しいくらいに行かないと海千山千を乗り越えてきた王族からは譲歩など得られないという事だった。
「よし、アリアも連れて行こう」
「ええっ、私もですか?」
「慣れているだろ?サポートしてくれ」
「それは、まぁそれなりには…。分かりました、その分の見返りは期待していますからね?」
「えっ?!」
「えっじゃないですよ。今言ったばかりじゃないですか。先に下手になった方が負けなんですよ?ふふふ」
うーん、なんか勝てる気がしないからこれ以上は止めておこう。
とりあえず見返りの件はおいておこう。
だけど、アリアが一緒であれば少しは安心感がある。
俺に出来る事ならやってあげる事にしよう。
「よし、ではすぐに出発しよう」
こうして、俺らはレオナルド将軍の案内の元、サーバンの町へ向かうのであった。
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