第250話 新しい冒険者
「さて、これで移動手段はある程度楽になる想定だけど、メンバーをどこまで連れて行くかだな」
「全員じゃないんですか?」
素朴な疑問を投げかけるカイト。
確かに、移動手段があるなら全員でも問題はない。
しかし、その場合は俺の屋敷に誰もいなくなる。
パルラやパールみたいな非戦闘員もいるし、全員連れて行けばいいとはならない。
それに、屋敷に誰もいない状況はなるべく作りたくないな。
サニアの冒険者達が見回りなどもやってくれているが、それだけだと心許ない。
訓練も兼ねて、何回かに分けた方がいいだろう。
「カイトの疑問はもっともだが、全員を連れて行くのは移動先に拠点を張る場合だけにしたい」
全員連れて行くのが理想だけど、今かなりの人数になっている。
ある程度、補給が出来る状況にならないと、行った先で食料不足になる可能性もある。
それで足止めされるのは避けたいのだ。
「それ以外だと食料やら生活用品やらで結構補給物資が大変だからな。必要に応じてメンバーをチェンジするつもりだ。あと、残っているメンバーにもゴンドラを使って依頼をこなして貰ったり、スキルやランク上げにも勤しんでもらいたいしな」
「うーん、そうですよね。常に出番があるわけでもないし、ついて行くだけでは無意味ですもんね。それを考えれば、ランク上げの為にもそれぞれのチームでも動いた方がスキル上げの効率は良さそうですね」
「うん、その通りだ。見てるだけでは熟練度もステータスも変わらんからな。なるべく経験積むためにもギルドの依頼を個々のチームでも受けて貰いたい」
それに俺への王命は、それなにり急がないといけないので、ゆっくり育成をしながらとか出来ないのも理由だ。
「各自の行動指針についてはそんなところか…、あとは装備などのメンテナンスや食料の調達についてだな」
これを機に、ガントの助手や弟子を雇っておきたいところだな。
常について来て貰えるのはありがたいけど、メンテナンスが必要な数もかなり増えている。
いくらスキルの恩恵があるからと言っても、一人で数十人分の武器防具のメンテナンスを請け負うのは厳しいだろう。
今回一緒に復興を手伝ってくれたり、箱舟を作るときに手伝ってくれている職人に声を掛けて貰うようにしておこう。
そういう細かい交渉はゼフに丸投げしておくことにした。
また、必要そうな物資を合わせて調達するように指示するのも忘れない。
「はい、旦那様。商人ギルドに話を通しておきますね」
「あ、マリエルさんにもお願いしておいてくれ」
「承知しました、旦那様」
これで物資や補助人員の確保はなんとかなるだろう。
「最初の目的地である【嵐の神殿】は近場だし、俺とリン、ニケ、カルマ、ヘカティア、ディアナで向かう。一応、アリアネルもついてくるといいだろう」
「はい、是非ともよろしくお願いします。それと…」
「ん、なんだい?」
「実は今後の事も考えてギルド本部長にお願いしまして、冒険者登録をしました。教会職員のままですと、色々と制約が多いので王都から出るのも本当はダメなんです。なので、今後しばらくは一冒険者として活動することになりましたので、よろしくお願いします。あ、登録名は"アリア"にしましたので、今後はアリアとお呼びくださいね」
「えええっ!?…アリアネルって意外とお転婆なのな?あ、いや今はアリアか。まあなんだ、よろしくなアリア」
「ふふふ、この歳でお転婆も酷い言われようですが、これからよろしくね、ユートさん?」
悪戯っぽい笑みを浮かべつつ、俺にお辞儀する。
「あれ、またユートさんの周りに綺麗な女性が増えている…?」
サナティがぼそっと呟いたみたいだが、俺には良く聴きとれなかった。
そして、なぜか視線が痛い。
おかしい、俺は何もしていないのに!
それはさておき、話をすすめよう。
「それでだ、嵐の神殿から戻ったら本格的な調査に入ると思っていてくれ。向かう場所は───」
水の神殿は北大陸【ノーセリア】にあるらしい。
氷の神殿に寄ってから向かう予定だ。
土の神殿は東大陸【イーガス】にある。
ここはまだ未踏の地になるので、魔族との衝突も考えられる。
世話になったアーカニアの村に寄って、すこし情報を手に入れたいところだ。
時間があればガガノアにも久々に会っておきたい。
もしかしたら、彼等が案内してくれるかもしれない。
ちなみに、リンを助けるのを手伝ってくれた魔王クロノスだが、この東大陸の最北端にある国を治めている魔王らしい。
カルマがこの一か月で色々と調べて来て、分その事がわかった。
もし会えるのであれば、彼にも会ってお礼がしたいと思っている。
カルマも会って何かを確認したいと言っていた。
そして星の神殿は、何処にあるか不明。
もしかしたら、敵の本拠地がある中央大陸【ウルステラ】にあるかもしれないとの事。
なにせ星の精霊自体が滅多に確認されないので、その存在を知らない者の方が多い。
なので、火・水・風・土・光・闇の6つを指して、六大精霊と呼称するくらいなのだ。
「もし星の精霊を見つける事が出来たら、それだけ大発見になると思います。私ですら文献でしかしらないのですから」
なんと王族であるアリアですら、星の精霊と接したことが無いらしい。
「星属性の魔法はちゃんとあるのに、星の精霊を見たことが無い人が多いって不思議なのです」
「ミラは星属性の魔法もつかえるんだっけか」
「はい、コメットとかがそうなのです」
俺は習得していないが(魔法書がレアだったので、とても高価で買う余裕が無かった)、LBOでは攻撃魔法メインにしている人は結構使っていた。
見た目派手なのと、効果範囲が広いためだ。
威力も申し分ないのだが、消費MPがバカ高いのと、逆に味方も巻き込むほどの範囲の広さで使うタイミングが限定されていたようだけど。
そして、この世界にも使っている人はそれなりにいるようで、認知度はそこそこあるようだ。
しかし、精霊魔法ではないので星の精霊と交信したことがある人間は見たことがないという。
「うーん。星の大精霊はひと先ず保留だな。各地の大精霊に聞いて情報を集めよう」
きっとそのうち見つかるだろうと考えて、所在が分かっている精霊から会っていく事に決めるのであった。
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