第236話 魔になっても天才
「リン!正気に戻れっ。<聖浄>!」
期待は出来ないが、神聖術スキルでリンの状態異常を取り除いてみる。
「ん~?キラキラして綺麗ね!パパの血も綺麗なんだろうなっ!」
そういうと手に持つ刀で剣閃を飛ばしてくる。
躊躇のない攻撃は、間違いなく殺意が込められている。
一体何をしたらこうなるんだ?!
いくら異世界でも、さすがに人体改造とか簡単にやって欲しくないんだけど。
というより、どうみても肉体レベルで変化しているし。
そのせいで精神にも影響が出ているのか?
「ニケ、どうにか抑えれないか?力量はお前の方が上だろ?」
『主様。どういうわけか、彼女の能力が格段に上がっています。手加減してもあまり効果がなさそうなので、本気でやらないとこちらが深手を負う可能性があります。』
はあ?!
ランクSS魔獣と同等とか、格段に上がり過ぎだろ?
しかし、このままでは埒が明かないしな。
よし、多少はしょうがない。
カイト達にも援護を願いたいが、星獣フェンリルとかいう謎な種族になったクロの相手をしてもらっている。
前よりも体も魔力も上がっていて、さらにはステータスが上がっている。
〈高位生物鑑定〉を使った結果は以下の通りだ。
星獣クロ ランクSS+ 種族:フェンリル
HP:19542/22800 MP:3000/3200 SP:2500/3200 属性:星・闇 耐性:星
特性:星属性無効 魔法半減 幻覚無効 状態異常耐性
STR(力):1200 MAG(魔):600 VIT(耐):300 INT(知):300 SPD(速):600
くっそ、どこのボスキャラだよ!
いくらなんでも、ステータス上がりすぎじゃないか?
次にリンも試しに鑑定をしてみる。
魔姫リン ランクSS+ 種族:魔人
HP:7560/8000 MP:1500/1500 SP:1500/1500 属性:闇 耐性:なし
特性:闇属性無効 魔法半減 痛覚無効 状態異常耐性
STR(力):800 MAG(魔):1100 VIT(耐):320 INT(知):500 SPD(速):800
魔族…なのか?
魔人って聞いた事ない種族だな。
てか背中に羽ついているし、悪魔系の魔族だと思ったんだけど…。
「ほら、パパ何処を見てるのかな? コッチだよっ!!」
超高速で移動して、死角から攻撃をしかけてくるリン。
もはや俺では受けるのがやっとの速さだ。
ガキンッ!という金属がぶつかる音を聞いて、なんとか受け止めれてるんだなと自覚するくらいだ。
まだまだ負けるわけにはいかんし!と思ってはみるものの、本気を出すとリンを殺しかねないので対応が中途半端になってしまう。
「しかし、ある程度は削らないとか…。しょうがないか、いくぞリン!燃え盛れ!
あれだけHPあれば、ある程度はダメージに耐えれるだろう。
ならば効果範囲の広いスキルで回避できない攻撃に切り替える。
スキルを発動したことにより、辺り一帯が火の海と化す。
流石に逃げれないだろうと思うが…
「わー、あっついね。でも、空に飛んじゃえばそこまでじゃないかな~?」
なんと、上空に飛んで逃げた。
あの翼は飾りじゃなかったのかっ!
てか、それほど大きな翼じゃないのにどういう原理で飛んでるんだよ…。
『ですが、主様。今なら先ほどまでのスピードは無いはず』
「だな…、行くぞ!〈
リンが浮かんでいる辺り一帯ごとスキルで吹き飛ばした。
『切り刻め!〈
ニケも広範囲スキルで追撃をする。
俺のスキルを食らった後に、ニケの〈
さすがに結構ダメージが入ったと思われるが…。
魔姫リン HP:6060/8000
うへぇ…。
なんで全然減らないんだろ?
ダメージ入ってない訳じゃないけど。
「いったーい。でも、この程度ならまだ平気だよ!さぁ、じゃあ今度は私からね!いっくよー!」
そういうと、リンは両手を合わせるとそこに魔力を集めていく。
え、それって…。
「一度真似してみたかったんだよね!〈
「マジかっ!ぐあああああああああああああああ!?」
『があああああああああああっ!あぁっ、主様!〈魔力障壁〉!』
意表を突かれて二人とも無防備だったせいで、直撃をくらうもニケが咄嗟にガードをしてくたお陰でなんとか耐えきった。
「アークグレーターヒール!」
すぐに回復を実施し、全快する。
今の攻撃でMPも一瞬激減したけど、アーティファクトがあるため徐々に回復していっている。
まだポーションを使う程では無いだろう。
「わー、上手くいったね!そうか~、こうやって出来るんだねぇ」
「いやいや、何のスキルも持たないでそれって出来ないからね?リンは天才か?」
「わーい、褒められた!ふふふ…、そういうところが大好きだよ、パーパ!」
少し妖艶な雰囲気を醸し出し、空中で膝を抱えるという器用な事をして見せるリン。
魔人になったせいなのか、少し体が成長しており実年齢よりも少し上に見える。
今だと、ヘカティアやディアナと同じくらいの見た目だろうか。
「そうそう、新しいチカラを授かったんだよ?このチカラがあれば、い~~~っつも一緒にいる妬ましいニケやカルマよりもきっと役に立つと思うんだ!」
普段なら口にしないような黒い事を言うリン。
やはりどこか違う。
それとも、色々溜めこんでいたんだろうか?
「何を言っているんだリン。お前なら自力で強くなって、もうすぐでSランクにも慣れただろう?そうなれば、いつでも一緒に冒険出来るんだぞ!そんな怪しいチカラに頼るんじゃない!」
「え~!これでもダメなの? ふ~ん、じゃあ、やっぱり殺しちゃおっか!そしたらずっと一緒にいれるよね?───〈
さっきの応用なのか、今度はそれぞれの手の平に魔力のボールを作り出し、それをポイポイ投げるようにしてきた。
見た目は可愛らしいが、その威力はエゲツないので当たるとマズイ。
ドゴンドゴンッ!と豪快な音を発しながら、地面にどんどん大きな穴が空いていく。
「あぶっねっ!コラ!そんな危ないもの投げるんじゃない!」
「ぶ~、いやで~す!えいえい~!」
それだけは避けたい。
そんな中、予想していなかった人物がこの場にやって来た。
「ユート殿!」
「え、アリアネル…?なんでここにっ!?」
「私達も~」「いますよ~!」
そこにはヘカティアとディアナ、そしてアリアネルとドルガーがいた。
「ドルガーまで何しに…」
「何しにはねーだろうが!仕事だよ仕事!姫さんの護衛だ」
あー、そうだよねー。
一国の姫が単身とか、本当はあり得ないよね。
「さっきの3バカ騎士を倒し終わったら、丁度アリアっちが来たんで連れてきたよ」
「アリアネル様は火急の用があるようです!」
ヘカティアとディアナは俺が聞く前に、聞きたい事を説明してくれた。
本当、優秀な事だ…。
「いま、俺は、それどころじゃない、んだけどね!」
当然、今は戦闘中なので余裕なんてない。
しかもこちらは手心を加えてるのに対して、相手のリンは俺を殺す気で攻撃している。
まだ本気というレベルではないが、攻撃事態は的確に狙ってきている。
「あ…、え?!あれってリン、かなディアナ?」
「ええ、そうですね。前に私達が魔族化されていた時に近い状態のようですが…」
あの時はカルマが弱体化させた上に、相手が竜族という事もあり
しかし今目の前にいるのは、人だ。
俺のスキルの対象にはならない。
「ヘカティアさん、ディアナさん。お二人で変わり果てたリンちゃんを抑えてくださいますか?もしかしたら、解決する事が可能になるかもしません」
「うん、分かったよ!じゃあディアナ!リンと遊んでこよ!」
「そうですね、さっきの3バカ騎士よりはマシな運動になるでしょう。強くなったリンがどれほどか試してましょうか」
そういうと、ふたりが俺とニケの代わりにリンに飛びついた。
「え~、パパと遊んでるのに!あ、二人もパパを独り占めするの?!じゃ~ま~し~な~い~で~!!」
「ううん、マスターは皆のマスターだよ!それよりも、私達とちょっと遊ぼう!」
「そうそう、こんな風に遊べるようになったんだもの、目一杯はしゃぎましょうね!」
こうして、双子とリンの格闘が始まるのだった。
(…俺らの事忘れてる訳じゃないよね?)
少し離れた所では、カイト達も死闘を繰り広げていたが、…ここでは割愛する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます