第183話 温泉旅行へ行こう!

 ─── 翌日。


 俺は、一旦王国に戻ってきた。

 夕方にはサニアに戻ってくるとリンとセツナに伝えてある。


 二人だけで移動すれば、かなり早いので夕方になるまでにザニアに帰ってこれるだろう。

 

「カイトはいるか?」


「あ、ユートさん!おかえりなさい。早かったんですね、あちらはどうですか?」


「おう、順調に修繕が進んでいるよ。このままなら再来週には出来あがるらしよ」


「それは嬉しいですね!俺もあの屋敷が一番住みやすいですし、落ち着きますので早く帰りたいです」


「『帰りたい』か。なんか嬉しい言葉だな。あそこはもう俺達全員の家になってるんだよなぁ」


「あたり前じゃないですか。今の俺らには、あそこ以外に帰る家は無いですよ」


「ま、そうだったな」


 物質的にも、精神的にもあそこあが俺らの家なのだ。


 皆もそういう風に言ってますよ、とカイトには付け加えられた。


「それはそうとさ、ちょっと交易するために南の大陸に行こうと思っているんだけど、お前たちもくるか?」


「ええ!?南大陸というと、サウサリスに行くんですか?もちろん、行きますよ!すぐに準備しておきますね」


「あー、いや、今日じゃないんだ。1週間後にしようと思う。皆にも伝えておいてくれないか。1週間後に迎えに来るから準備しておくようにと」


「分かりました。ゼフさんとメイアさんにも伝えておきますね」


「それには及びませんよ。カイト様」


「うわっ、いつのまに?!いつも急に現れますね…」


 振り向くとそこには、いつのまにか現れたゼフが立っていた。

 カイトの苦情を笑顔で軽くスルーしている。


 なんというか、ステータスでは測れないタダ者じゃない感があるんだよね。


「おかえりなさいませ旦那様。急に戻ってこられたのは、あちらで何かあったからですか?」


「ああ、実はな…」


 サニアで冒険者を救ったことと、ライの計画が進んでいる事を話をした。


「なるほど、ライ様とサナティ様は元々お勉強の出来る方だったようですよ。町では有名なお二人らしく、冒険者になる時は皆さんに反対されたらしいですからね」


 と、町で聞いていた話を教えてくれた。

 そうか、結構有名人だったんだな。


「そういう事でしたら、お任せ下さい。せっかくサウサリスへ行かれるんでしたら、観光もしていらしたら良いでしょう。メイアに準備させておきますので、一週間後に王国の門のところで待ち合わせましょう」


「分かった、宜しく頼んだよ。メンバー全員連れて行くから伝えておいてくれ。その間の留守番は頼むな」

「承知しました、私共がしっかり留守を守りますのでご安心を」


 その後、ガントに会って素材集めの状況を確認した。

 今回南大陸に行くのは、ガントのランクアップの素材集めの為でもある。


「おう、ユート。フィアとゲンブのコンビのお陰でかなり素材集め進んでるぜ。今週中には大体集まるぜ?あとは、ここでは採れない鉱石なんだか…」


「ああ、丁度その話をしに来た。来週にサウサリスへ向かう。そうすれば揃うだろ?」


「まじかっ!?すげー助かるよ!」


「俺としても、早くもっと上の素材を使えるようになって貰いたいからな。それにだ…」


「ん?それに…」


「あそこは、温泉地だろ?療養に最適だろう?」


「?!おん、せん、だとっ…?!」


 お、案外食い付いてきたな。

 やはり日本人たるもの、温泉に惹かれない訳がない。


「そんな訳だから、楽しみにしてろよ?」


「お、おう!」


 若干、反応が怪しいがまぁ大丈夫だろう。

 だが、邪な考えをしているわけじゃないみたいだ。

 ん~、残念。


 え?ほら、それを理由に揶揄えないじゃん?


 そこでガントと別れたあと、シュウとマイニャにも会ってきた。

 二人とも丁度厩舎に居たので、ちょうど良かった。


「おう、シュウ、マイニャ」


「あ、ユートさんお帰りなさい!」


「おかえりなさいませ旦那様」


 シュウは元気よく挨拶を返す。


 マイニャはすっかり従業員らしくなって、丁寧にお辞儀した。

 …なんかちょっとさみしい気もする。


「シュウどうだ?シロとの訓練は」


「うん、バッチリだよ!シロも前より強くなったし、俺も乗りながら戦うの慣れてきたよ!」


 今なら、壁を走りながら戦うのが出来るらしい。

 お前達はニンジャかっ!と心の中でツッコんでおいた。


 当のシロはマイニャに手入れをされていたようで、俺を見つけるなりダッシュで飛び付きじゃれて来た。


 よーしよし。もふもふもふ。

 よーしよしよしよし。もふもふもふもふ。


 いっぱい撫でてやったら、もっと撫でてと仰向けになって甘えてきた。

 傍から見たら、でっかい白い犬だな。


 前まではセントバーナードくらいの大きさだったのだが、最近更に大きくなってライオンくらいの大きさがあるので迫力が出てきたな。


 どうやら、マイニャの訓練が功を奏しているようだ。


「シロのトレーニングは順調のようだな」


「はい、旦那様のお持ちくださるお肉で肉体が強化されていくのも大きいです。それに凄く訓練を頑張ってくれてかなり強くなっていますよ」


 ちなみに、マイニャには俺がランクアップした時に『動物調教師アニマルテイマー』スキルを継承済みだ。

 これにより、彼女は訓練師トレイナーであり、調教師テイマーでもあのでペット育成の専門家プロと言える。


 スキル上限いったらランクも上げたいので、1つでもカンストしたら教えてもらうようにしている。

 今からその時が楽しみだ。


「君のトレーニングセンスはいいな。来週に皆で南大陸の【サウスサリス】へ行くから付いてきてくれ。あっちでも色々トレーニングをやって貰いたい」


「えっ!そうなの?俺も行けるの?」


「ああ、シュウももちろん一緒だよ。…温泉に入りにいくぞ!」


「わーっ!本当!?嬉しいなぁ。俺、今まで温泉とか2回くらいしか行ったことないよ~!」


 シュウが思ったよりも嬉しそうで何よりだ。

 マイニャの方はいまいちピンと来ていないようだったが。


 こうして着々と温泉旅行の計画が立てられていくのだった。

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