第147話 人間対人間
テイマーは自分が戦わない分、武器や防具の消耗が少ないためコストが低いと思われがちだ。
さらに高ランクテイマーならその狩りの相手も高位のモンスターなので、一般的にお金持ちだと思われている。
うん、まあ、あながち間違いではないけどね。
「んー、止めといた方がいいぞ?俺の事を知っているなら、俺がどういうテイマーか知っているだろう?」
「はん、たかだかSランクのテイマーだろ?その相棒もSランクのレア魔獣って聞いてるが、こちとらSSランクが3人、Sランクが5人だ。他もほとんどがAランクだぜ?お前に勝ち目はねーよ。同じ同郷の好だ、優しく聞いている内に、出すものだしなっ!」
はぁ…、やはりか。
王都の連中、どうやってこんな奴らを追い出したんだか。
というか、こんなヤバイ思想のやつ野放しにするなよなぁ。
下手したら、暴動起こされたうえに王都占拠されてたんじゃないのか?
しかし、昔の俺の情報しか持っていないみたいだな。
まぁ、まだこっちに来て1か月ちょいだし、それも当たり前と言えば当たり前か。
「俺がSランクなんて昔の話だ。今はもうランクも上がっているし、仲間ペット達もSSランクだ。まともにやり合ったら、お前らも只では済まないぞ?」
一部に本当の事を混ぜて、嘘を言う。
これは交渉の基本だな。
だがしかし…
「あっはっは。嘘言うなよ。おい、どうだ?」
「ああ、グラムさん。ユートはSランクのままだよ」
「だとよ?」
あら、何かしらの鑑定系スキルを使えるのがいるのか?
だが丁度いい、仲間ペット達を見て驚く事になるだろうさ。
「だけど…、あの前にいるやつらランクがSSですね。しかも、後ろの竜もSSランクですよ?…横の女の子たちはSランクだな」
「なんだと?!ちっ、面倒なのを連れてきているな。だが、SSランク3匹か。上等じゃねーか。どっちにしろお前さえやっちまえば終わりなんだ。さあ、覚悟は決まったか?」
手加減出来る程弱い相手ではない。
しかし、本気でやれば間違いなく死人をだすだろうな。
さて、どうしたもんか…。
「グラム、分かっているのか?ここは死んだら終わりの世界なんだぞ?もうゲームの世界じゃないんだ。お前は死ぬのが怖くないのか?」
「あん?そんなのはとっくに分かってるよ。だからこそ、楽しいんじゃないかっ!それによ、俺らは俺らであって、あの世界の俺らじゃないって、もうお前も分かっているんじゃないか?」
!?
まさか…。
グラムは、カルマが俺に言っていた事をもっと詳細に分かっているんだろうか。
「どう足掻いてもよ、もう【地球】には帰れないんだ。だったら、こっちで死ぬまで好きな事やった方がいいと思わないか?俺はこの先、魔族領側に行こうと思っている。そこで、俺らの国を作って好きにやらせてもらうのさ」
そんな時だった。
カルマが急に動き出した。
「下等生物が…、べらべらと随分と余計な事をっ…!貴様はまだ本当の恐怖を知らない様だな。だったら我が教えてやろう!!」
言うが早いか、カルマが真の姿に変貌する。
しかも、魔力を全開に放出しているようだ。
俺でもここまで強烈なプレッシャーを放つカルマは初めて見る。
やはり、相手を強敵と認識しているようだな。
「なんだ!?人型になっただと!?全員、戦闘態勢!全力でアレを撃ち落とせ!!」
グラムがそう言うと、一斉にカルマに目掛けて魔法と弓矢が降り注ぐ。
「ニケは、主を守るのだ。我が奴らを仕留める!」
『分かりましたカルマ。相手は人間よ、やり過ぎないようにね?』
そう言うと、ニケも大精霊の姿へ変わった。
それと同時に、魔力障壁を展開する。
「わわっ!ここは私達も行かないと損だよね!ディアナ!」
「そうですね。マスターをお守りするには、あの周りの雑魚達を大人しくするのがいいですね。さあ、行きましょうヘカティア!」
ヘカティアとディアナはそう言うと、ドラゴンロードの姿に変化した。
その場に美しい金と銀の竜が現れる。
グラム陣営側から、『ドラゴンロードが出現したぞっー?!』と混乱する声が聞こえてくる。
突如現れた事により対処しきれていない様だった。
『我も行こう。ユートの意図は分かった。なるべく意識を奪うだけで良いな?』
「ああ、頼む。あいつらからもっと情報を取り出したい」
『承知した』と言って、飛び出していった。
「俺も援護しないとだな。〈アニマブーストⅣ〉!、〈ビーストコマンダーⅤ〉、〈スピリチュアルコマンダーⅣ〉!〈天啓〉!」
補助スキルを一気に使う。
MPとSPがガガガっと一気に減るが、そんな事は気にしないで大丈夫。
SPは、すぐにSP回復ポーションを使って回復するし。
MPは腕輪で徐々に回復するので、気にしないでおく。
「恐怖をその身に刻め、〈ホラーナイト〉!」
グラムの部下たちを、カルマが放った恐ろしい形相の影たちがグルグル回りつつ鋭い牙で喰らいついていく。
ランクの低い冒険者たちはそれだけで、『ぐああーっ』と呻き声をあげて地に伏した。
耐えた者たちも、恐怖を植え付けられて足をガクガクと震えさせて額に大量の汗を浮かべていた。
『さーて、獲物はどいつかなー?』
『とりあえず、近場からやっていきましょう』
楽しそうな思念波が届いてくるが、現場は悲惨な状態だ。
ブレスで焼かれ、鋭い爪で切り裂かれ、尻尾で吹き飛ばされる者たちが見える。
たった数分で、グラム陣営は既に半壊している。
『貴様は、今の我に丁度良さそうな相手だな。我と勝負して貰うぞ!』
セリオンは、これだけ混乱している中で冷静に立ち回っている女戦士を見つけて強襲した。
相手は、手にしている武器を見ると槍使いのようだな。
「グラムのやり口は好きじゃないけど、今殺されるのは困るのよ。だから、大人しくしてちょーだい白いドラゴンさんっ!煌めけ、〈サザンクロス〉!」
女槍使いは、自身の奥義を初っ端から使った。
出し惜しみしておける相手ではないと、最初から冷静に判断していたようだ。
だがしかし、セリオンはすべてを回避する。
遠目で見ている限り、格段に動きが良くなっているなぁ。
まだ一日経っていないのにすごい成長度だ。
自分の影響とはいえ、ちょっとズルイと思ったが口にはしない。
そんなとき、ふとグラムがいなくなっている事に気が付いた。
おや、どこにいったんだ?
アイツが逃げるとは思えないし。
──そう思った時だった。
「チェックメイトだっ!」
真後ろからグラムと一緒に黒づくめの男が現れて、攻撃してきた。
「うおっっと、いつのまに!?」
咄嗟に展開した〈
だが、俺をガードしているのは最強の相棒のひとりニケだ。
「ライトニングボルト!」
眩い電光とともに、二人を撃ち抜く。
と思いきや、ゆらっと二人は陽炎のように消えた。
幻術の一種か?
それならば…。
「現れよ”幻龍”!!」
竜玉を掲げると、光を放ち半透明な龍が現れた。
『おや、同化ではなく召喚とは珍しい』
「イドラ。幻術を使っているやつがいるみたいだ。そいつの場所を教えてくれ」
『なるほど、承知した』
そう言うと、イドラは自身の体を霧のように霧散させていく。
それに合わせて、俺は闇の精霊もあたりにばら撒いた。
これでレーダーはばっちりだ。
あとは掛かるのを待つだけだ。
グラムとの本当の勝負は、こうして始まるのだった。
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