第148話 ニンジャと幻龍

「イドラ。幻術を使っているやつがいるみたいだ。そいつの場所を教えてくれ」


『なるほど、承知した』


「探せ!〈精霊使役ファミリア〉!」


 イドラは体を霧状にして、辺りを探っている。

 俺もスキルを発動し、妖精の形をした闇の精霊を解き放ち視線を共有していた。


 ここからが本当の戦いだ。

 タイマンならまだしも、二人も俺を狙っているので油断は禁物だ。


 最大の警戒を以て当たるべきだろう。


 〈幻体龍神〉を使えば勝てるだろうが、今使えば先にSPが切れる。

 先に黒尽くめの男を倒さないとだ。


『クククッ、ひさびさに楽しめそうだな…、さぁ嬲り殺してやろう』


 どこからともなく男の声が聞こえる。


 だが、まだイドラは検知出来ていない。

 うーん、妖精達の視覚にも全く掛からないみたいだし…。


 もしかして奴等が使ってるのは“幻術“じゃない?

 何かのスキル?

 だとすれば…、そうかっ!


「…死ねぃ!」


 突如、地面から黒尽くめの男が現れた!

 手に持つクナイで俺の首を狙ってきた。


「そこから来るかっ!」


 やっぱり、土に潜るスキルか。

 まさにニンジャだな!


 咄嗟に双剣でガードするが、また別の男が現れた!


「ぶちかませっ!〈グランドスラム〉!!」


 大斧で繰り出される大技に、咄嗟に〈錬気障壁オーラバリア〉を出すも打ち砕かれて吹き飛ぶ。


「がああっ!!」


「主様!…荒れ狂え!〈天嵐〉!」


 しかし、ニケがすぐさま反撃でスキルを発動した。

 いくつもの竜巻がグラムを取囲み、さらに雷が打ち付けた。


「ぐおおおっ、なんだこりゃああっ!?」


 初めて食らう技に回避し損ねるグラム。

 慌てて仲間の男がニケに攻撃を仕掛ける。

 しかし…


『掛かったな…、小僧!』


 イドラが霧状の身体を集結させて男に絡みついた。

 まるで蛇に捕らえられた小動物かの如く、締め付けて離さない。


「な、なんだこいつっ!?がああっ!!」


 キリキリ締められて、苦悶の表情を浮かべる男はスキルを使おうとするが、イドラの幻術に掛かり上手く発動できないようだった。


「かはっ、痛てて。流石SSランクだなぁ。でも、これでチェックメイトだな」


 俺は痛む体を起こして、自分にヒールをかける。

 こういう時、魔法は便利だな。


「そっちの男はニンジャか?またレアな職業を仲間に連れてるなぁ。通りで、仲間の探索スキルに引っかからないわけだ。さてグラム、そのままだと死ぬぞ?」


 〈天嵐〉に囚われて大ダメージを受けているグラムは、既に未動き取れない。

 

「くっそー、こんなはずじゃ…。──なんて言うと思ったか?」


 グラムとニンジャの男がシュッと消えた。


 !?なんだ、これもニンジャのスキルか?

 なんて厄介なやつだっ!

 あの男の意識を先に刈り取らないと埒が明かないな。


 気を引き締め直し、〈錬気障壁オーラバリア〉を張りすぐに迎撃体制を整える。

 ニケも油断なく辺りを見渡している。


「こういう相手は初めてですね、主様。まるでカルマの相手をしているようですよ」


 確かにな。

 人間よりも狡猾に戦える精霊って、よくよく考えたら恐ろしいやつだ。

 …前から、知ってたけど。


 そんな事を考えていると空から無数の手裏剣が飛んできた。

 〈攻撃予測〉で受けないで躱したら、なんと地面で爆発した。


「うおあっ!あっぶないわ!」


「隙あり…っ!」


 今度は、影になってる部分から4体の黒装束のニンジャが現れた。

 こうなると、どんどん厄介になっていくのがニンジャだ。


「そう簡単にやらせると思うなよ!〈錬気障壁オーラバリア〉!…〈錬気撃オーラショット〉!」


 攻撃をガードしカウンター気味にオーラを撃ち出した。

 当たったかと思ったら、消えてまた次が現れてまた攻撃してくる。

 そんな事を繰り返していた。


「…あなた本当にSランクなんですか?これだけやって倒れないだなんて!!」


 俺よりも、ニンジャの方が焦っているようだ。

 普通の相手ならこの状態に持っていけば詰みだったのだろう。


 しかし、俺は無傷だ。

 そして、どっちかというと手加減しているのはこちら側だ。


「くそっ、SSランク冒険者より強いテイマーとか、悪夢を見ているようだっ!」


 グラムも本気を出して〈武技アーツ〉などのスキルを使っているようだが、ニケには全く通じていないようだ。

 見た目に反して、ニケは接近戦に強いのでちょっとやそっとじゃびくともしない。


 逆に手を出しているグラムの方が傷がどんどん増えていく。

 深手を負うとポーションで回復しているので、手持ちがなくならない限りは徐々に追い詰めると言うのも現実的じゃなさそうだ。


 やはりここは、短期決戦かな?


「お前たちは、体力に自信あるよな?」


「…何を言っている。お前よりは上だろうよ」


「それを聞いて安心したよ。じゃあ、死ぬなよ?ニケ!範囲攻撃を全力でいけ!」


「! 承知しました。〈大旋風 〉!!」


 強烈な嵐が巻き起こり、範囲内にいたグラム達を容赦なく風の刃で斬り刻んでいく。

 だが、ここで手を緩めない。


「ここからが勝負だ!〈幻体龍神〉!」


 俺は幻龍のチカラを解放するのだった。

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