第144話 絆と進化
「よし。準備はいいな?」
少し距離を取り、お互いの準備をする。
俺はもちろん、神聖魔法と神秘術≪ミスティック≫で強化済だ。
対するセリオンは、魔力を高めて周りに冷気のバリアを張っている。
触れるだけで冷気ダメージが入るそれはカルマの<黒炎>に似ているが、ダメージはナイトメアのそれよりも上だ。
よし、セリオンなりに本気モードの様だな。
『行くぞユート!我の全力を受け止めてみよ!』
そう言った瞬間に辺りに冷気の渦が作り出され、そこから無数の氷の飛礫が降り注ぐ。
『〈悠久の
初手から奥の手を使うか。
なかなかいい判断だな。
流石に〈攻撃予測〉を使っても、範囲攻撃では完全に回避出来る場所が無いか。
少しでもダメージを少なくするため、威力の弱い所へ移動する。
『お前の動き、こちらからは丸見えだぞ?〈ブリザードカノン〉!』
回避した先に、冷気を凝縮したブレスが撃ち出された。
どうやらセリオンは、吹雪の中でも視界を奪われないみたいだな。
前までの俺なら、これでダメージをかなり喰らったかも知れない。
だが、今の俺にはこれがある。
「スキル発動、〈幻体龍神〉!」
俺の体を竜のオーラが包み込み、力が漲る。
そして、そのまま俺は
『な、なんだと?!』
「ほら、そうやって大技の後に油断する癖が出てるぞ?」
真後ろに出現した俺は拳に炎と爆発属性を付与し、更に錬気術≪オーラ≫で力を溜めこんで構えていた。
「燃え盛れ!爆炎錬気砲≪バーストオーラキャノン≫!!」
掛け声と共に、うねる炎とオーラが混ざり合いまるで炎の龍がセリオンに襲いかかった。
ゴオオオオオオオオオオオッ!ドガアアアアン!!
爆炎と轟音が辺りに襲い掛かる。
「もう一丁!錬気斬≪オーラスラッシュ≫!!」
まだ炎に包まれているセリオンに追い打ちをかけるように、双剣で胴を切り裂いた。
たった2ターンの攻撃。
だが、
『グオオオオオオオッ!せめて、一矢報いねば、終われんっ!!<アブソリュートゼロ>!』
炎で視界を奪われながらも、感覚だけで俺を狙いすまし絶対零度の檻に閉じ込めた。
咄嗟に錬気障壁≪オーラバリア≫を展開しダメージを防ぐもジワジワとダメージが入る。
「くっ!なかなかやるじゃないか!」
だがしかし…
ドオオォンッ…!!!
そこでセリオンは力尽き、倒れ込んでしまった。
─────────
──────
───
『う…、我は…?』
「お、気が付いたか?動けそうか?一応、手当はしてあるけど」
あれかまだ30分ほどしか経っていないがすぐ気が付くあたり、流石は氷竜族の長だ。
HPがほぼ0になってしまい、一気にSPを失って気絶したようだったが、ぎりぎり一命を取り留めた。
『う…む、大丈夫だ。まだ、体中に激痛が走っているが動けなくもない』
「そうか、良かったよ。危うく死なせてしまうところだったよ。焼き肉にされてなくて良かったな、ははははは」
『笑えぬ冗談だな…。しかし、凄まじいなユートよ。本当にお前はニンゲンなのか?』
「
最近、そうじゃないと言われる情報が多すぎて自分でも疑い始めているが、俺自身まだ人間を辞めたつもりはないのだ。
「で…どうだった、さっきの俺は?お前の主人と認めるに足りるか?」
真顔に戻し、真剣に聞く。
これでも認めれないなら、理由があっても連れてはいけないだろう。
『これだけされて、何の不足があるというのだろうか。完敗だよ。”汝、ユートを我が主人と認める。”この言葉には魂を賭けて誓おう』
「なら決まりだな!セリオン、お前を俺の仲間にしてやるよ。さあ、俺の仲間になれ!〈
セリオンがぱぁっと光に包まれる。
それと同時に竜玉が眩く光りセリオンを照らした。
その結果…
『こ、これは!』
セリオンの姿が変化しいていく!
氷の様な透明の氷の様な鱗が、輝く純白色の鱗に変化する。
体は一回り逆に小さくなり、牙や爪が金色に変わった。
「一体何が…。あ、そうだ!スキル発動。〈高位生物鑑定〉!」
氷竜帝セリオン ランクSS 種族:氷竜帝 〔盟友〕
HP:5800/5800 MP:3200/3200 SP:2200/2200 属性:氷・光 耐性:氷・炎
特性:氷属性吸収 全魔法耐性(小) 眷属能力向上(中)
STR(力):680 MAG(魔):800 VIT(耐):200 INT(知):400 SPD(速):400
「うあ、すげー強くなってる」
「ふむ…、魔獣時の我らと同等くらいですね。これなら合格と言えるでしょう」
さすがカルマ先生、スキル無いのに分かるんかい!
「ん?我ら魔族はそういう目を持っているのだ、主よ」
更に心を読むんじゃない!
って、思いっきり顔に出してたからバレバレだっただけか。
『おお、我は進化したのか?これがユートの力。力と歓喜が底から湧いてくるかのようだな。なるほど、だから皆はついて行くのだな』
『ふん、それだけではありませんがね。でも、主様の素晴らしさに気が付いた事に免じて許してあげましょう』
なぜかニケも上から目線でセリオンにそう言っていた。
その後も、いかに俺が素晴らしいのかと滾々と語りだし、セリオンも洗脳されたかのように頷いていた。
大丈夫なのか、これ?
「よし、ちょっと予定と違ったけど、セリオンも連れて中に入っていこう」
せっかく仲間になったので、永久氷晶はセリオンの背中に背負わした。
隊列も組み替えて、前衛にニケ、中衛にカルマとそれに乗る俺とセリオン、後衛にディアナとヘカティアう感じだ。
俺以外全員SSという、ゲームなら最強と言えるパーティだな。
このパーティに勝てるのは、神か魔王か…そして
「ニケ、ここに人間の気配は感じるか?」
『いえ、感知できないですね。精霊達にも聞いてみましたが、ここしばらくは来ていないそうです』
なるほど、精霊がそう言うならほぼ間違いないだろう。
どちらにしろ、外じゃないのに吹雪が吹き荒れる場所になんて長居したくはないだろうな。
なぜなら、純粋にすっごく寒いし。
「祭壇はどのくらい奥なんだっけか」
『地下の…3階ですね』
「じゃあ、それほど遠くもないか」
『いえ、結構広いのでこのペースでいくと半日は掛かるかと』
今は、永久氷晶を運びながら移動しているので高速ダッシュは流石に出来ない。
それでも、駆け足程度には速度を出しているので半日くらいで済むのだった。
「しかし、敵が出てこないな」
『今のところ、ここの精霊達は歓迎してくれているので障害にはならないでしょう。生息していた魔獣達もこの寒さで出てこないようですね』
「こっちとしては、好都合だな」
───
それから、しばらく何も出ないまま2時間くらい進んだ。
現在丁度祭壇のある階に来たわけだが…。
「主、これは…」
「前見えないね」
カルマが絶句するくらい、もの凄い吹雪がダンジョン内に充満している。
目の前が真っ白で、何があるのか分からない。
今は、ニケと会話している精霊たちが導いてくれるのが正しい言葉と信じたい。
さらに30分程経過した頃だった。
急にニケが止まりだした。
「急にどうした?」
『主様、ここが祭壇への入口です。到着したようです」
「おお、良かった。やっと到着か。これでようやっと永久氷晶を設置出来るな」
そんな時だった。
・・・助けて・・・・
・・死んで・・・・
・・・痛い・・・苦しい・・・
祭壇の奥から哀しそうな、それでいて悲鳴を上げているような声が聞こえて来るのだった。
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