第124話 ハーピー族との遭遇
ユート達は、今海の上を飛んでいる。
ここは、西大陸【ウルガイア】を北に飛び越え、そこから北東に進んだところだ。
見渡す限りの海原に、カルマですら感動していた。
ニケも海を見るのは初めてらしく、感銘を受けたようだ。
『マスター!これが海なんだね!私達も海は初めて見るよ!』
『そうですね、湖なら見た事を何度もあますが、海に出てくるのは初めてです』
二人(2頭?)は、嬉しそうな声を出しながら優雅に飛んでいる。
そのおかげで、周りには魔物たちが寄り付かなかった。
なんせ、ドラゴンロードが2頭も飛んでいるのだ。
余程の命知らずじゃない限り近づいても来ないだろう。
じゃあここまで戦闘が無かったかと言えばそうでもない。
───時間を遡り海を越える前。
西大陸の山を越える時にハーピーの縄張りに入ったらしく、急に現れた俺らに驚いて若いハーピーが襲ってきた。
当然返り討ちにしてしまったのだが…。
そこからが大変だった。
"ハーピーリーダ"ーが怒り狂ってしつこく追いかけて来た。
最初は相手にしないで先を急ごうとしたが、しきりに攻撃を仕掛けてきたのでニケが…。
『邪魔です』
の一言と共に雷撃を喰らわせて落としてしまった。
それを見た仲間のハーピー達も襲ってきて、最後には"ハーピーロード"なる空域を支配するハーピー族の女王と、その番いの"セイレーン"が現れた。
流石にハーピーロードはSランクだったので、戦闘態勢に入ろうとしたが、俺らを見てハーピーロードが話しかけてきた。
『そこにいる人間よ、一体なんの真似だ。伝説級の魔獣達ばかり引き連れて来おって…我が一族と戦争をする気か?』
俺以外の仲間ペット達は、全員SSランク。
傍から見たら、一族を滅ぼしにやってきたと思われてもおかしくはないか。
「いやすまない。急いでいたもんで、君達の縄張りとは知らずに突っ切ろうとしただけなんだ。先に手を出して来たのはそっちだし、君達がこれ以上襲ってこないならこちらも手を出すつもりは無いよ」
俺は正直に戦うつもりは無いことを告げた。
それまで心配そうにハーピーロードの傍らにいたセイレーンは、それを聞いてホッとした様子だった。
『そうか。我らの縄張りを荒すつもりでは無いのなら、これ以上こちらも手を出さない』
「そうか良かったよ。じゃあ騒がせて悪かったな」
これ以上面倒な事には巻き込まれたくないので、そう言って去ろうとした。
『まて。…そのまま行けば、また他の者たちが手を出すかも知れない。お前達相手では我等もただ数を減らすだけだ。よって、我等の縄張りを抜けるまで先導しよう』
他のハーピー達がざわっとしていたが、王の言う事は絶対らしく俺等を守るかの様に取り囲み1時間ほど付いてきたのだった。
やっと縄張りを抜けて、またここを通るときはこの笛を吹いて欲しいと一本の角笛を貰った。
これを吹けば、ハーピーロードが迎えに来ると言う事だった。
───
そんな事があり、ハーピー達に見送られ、無事に海に出ることが出来た。
『しかし、彼等のお陰で大分時間を浪費してしまいましたね』
「しょうが無いさ。彼等なりの誠意でもあったんだろ。それにまだ全力で飛ぶのは早いからな。誤差の範囲さ」
そうは言ったが、少し速度を上げたほうがいいだろうな。
皆にも、ペースアップするように促した。
それ以来は、とくに敵と遭遇する事は無かった。
ワイバーンの群れを一度見かけたが、金と銀の竜を見るやすぐに旋回して逃げていった。
逃げ去るワイバーンを見て『お肉が逃げた…』とへカティアが言ってたが、聞かなかった事にした。
海も見飽きた頃、遠目に大陸が見えてきた。
雲で隠れて見えて無かったが、その奥には雪に包まれた山々が
ほぼ白一色に染まった世界。
こうやって、海側から見るのは俺も初めてだったので純粋に綺麗だなと感じた。
それからしばらくして、ついに北の大地【ノーセリア】に辿り着いた。
まだ沿岸部は寒気が緩やかだと聞いていたのだが…
「ううっ、寒いよマスター」
「これで暖かい方って嘘なのでは!?」
と、双子の竜姫でもこんな感じなので、かなり寒い。
俺もかなり着込んで来たが、手先の感覚が麻痺しそうなくらいに寒さを感じた。
一先ず正確な位置情報を確認するために、近くにあるはずの村を探すため地上に降りた。
双子がドラゴンロードの姿のままだと大変な事になる為、今は人型になっている。
二人にはガントがおまけとして作ってくれた、分厚い羽毛と羊毛で包まれた分厚いコートを渡してあるのだが、それでもガタガタと震えていた。
というか本当にこの二人、竜族なのか?
そんな二人を見てカルマが一言。
「お前達、思ったいたより軟弱だな。そもそも魔力操作出来るだろう?魔力の膜を分厚く張れば寒くなくなるはずだが?」
と、さも当たり前に言うカルマにディアナとへカティアの二人は、
「「それを先に言え〜っ!!」」
と憤慨してから、直ぐに魔力を練ってカルマが言った通りにしていた。
言われてすぐ実現出来るのは、やはりセンスがあるんだろうな。
先程までの震えがピタリと止まる。
「くー、数百年生きてきて今初めて知るとか…」
「しょうがないわよへカティア。ほとんど城に居たのだし。こんな極寒の地に来る事なんて無かったものねぇ」
なんてニートみたいな言い訳をしていたけど、実際にそうなんだろう。
必要がない技術を身に着けるのは、そういうのが趣味なやつだけだ…と俺は思っている。
もう寒くない筈なのにも分厚いコートを脱がない理由を聞いたら、これは気に入ったので着ていたいという答えだった。
なんでも、もふもふしてて可愛いかららしい。
俺は機能性がいいので着ているだけだが、女子の感覚というのはおっさんには良く分からない。
実際は双子の方がかなり年上だとしても、そこに触れてはいけない…。
「ん?なーにマスター」
「私達に何かついてます?」
「いや、やっぱり女の子なんだなと思って。そのコート似合っているよ」
「ふふふ、お褒めいただきありがとうございます。嬉しいですマスター!」
「流石マスターだね、よく分かってるよ!」
二人一緒に喜ぶ姿を見て、そっと胸を撫でおろすのであった。
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