第114話 祭壇の女神
───その頃のユート達は。
「ここは、綺麗な所だな。かなりゆっくり進んで来たが、野良の魔物以外は襲ってこないし、観光気分だよ」
中に入って2日目になるが、双子の力も借りる事なくここまで進んできた。
まだ、目的地は先だが余裕はありそうだ。
ここは、嵐の神殿の隠しフロアの地下十階。
通常の神殿から、隠し通路を抜けてから地下に降りてきた。
そこからは、遥か昔に棲み着いた魔物達が次つぎに襲って来たが、ユートの相手にはならなかった。
精霊たちもいたが、ニケがいる為襲っては来ない。
たまにイタズラをしてニケを怒らせてはいたが。
『まったく、私の眷属たちはイタズラ好きが多いのは知ってましたが、ここまでとは…』
と、愚痴っていた。
内容は、野良の魔物たちをけしかけたり、案内すると言って間違った道教えたり、トラップ回避したのに発動させたりと様々だ。
危うく俺が串刺しになりそうになった時は、ニケが激怒して数体の精霊が消滅させられそうになって、平謝りしていたが。
精霊が土下座とかなかなかシュールな絵面だった。
そんなことがあったにも関わらず、今度は風と雷の力で操るゴーレムを繰り出してきた。
全長3Mもある大型のゴーレムで、金属で出来ているみたいだ。
『この先に行きたければ、私達の傑作のガーディアンを倒してみなさいな!』
陽気な精霊達の愉快そうな笑い声と共に、そんな言葉が響き渡った。
ニケが蹴散らそうと前に出ようとした時だった。
「マスター、私達に遊ばせて〜!」
「うんうん、そろそろ飽きてしまったので、へカティアと一緒にあのゴーレムさんと遊びたいです。宜しいですか、マスター?」
双子が新しいおもちゃを見つけたような瞳で、こちらに訴えてきた。
まぁ、誰がやってもいいし、ストレス発散には丁度いいかと思い許可を出す事にした。
ニケは微妙な顔をしていたが、諦めたようだ。
「いいよ。遊んでおいで。材料は持ち帰りたいから、消し炭にだけはしないでくれな」
「「はーい、分かりましたマスター!」」
二人は声を揃えて言うと、たったったと走って向かっていった。
『あははっ、そんな子供が私達のガーディアンに敵うわけないじゃない!』
と、余裕をかます精霊達に双子が息を合わせて魔力を拳に溜めてから
当たった瞬間に、ゴーレムの巨体が後ろの壁まで吹き飛んでいった。
『な、な、なにそれ!ただのパンチで吹き飛ばすなんて、なんてバカ力なの?!』
動揺する精霊達にお構いなく、次々にパンチやキックを繰り出す双子達。
その動きは、なかなか洗練されていて美しいと言えるほどだった。
「あの動きは参考になるな。伊達に長い間生きてるわけじゃないなぁ。あの体術をリンとシュウにも教えて欲しいな」
俺は、苦笑いしながらも両腕を組んで眺めていた。
それからゴーレムが動かなくなるまで5分程しか掛らなかった。
どう見ても、オリハルコン級の金属の体がボコボコに凹んでいた。
あれは、俺がやってもならないな。
流石
基礎攻撃力が段違いだ。
動けなくなったゴーレムを見てパニックを起こしていた精霊たちを、ニケと一緒に捕まえて拘束するのはとても容易であった。
『ゴメンナサイ』
精霊の土下座再び。
今日は面白いものがよく見れるなーと、遠い目をしていたら思わぬ収穫がもたらされた。
『ここは、守護の間。この先には大精霊様の魂が封印されています。正しき心と強さを持ち合わせた者のみ通すようにと風と雷の女神様より承っています。さぁ、あの扉を開放しましたのでお進みください』
そういって、部屋の奥にあった扉が開いていく。
ニケにフェイクではないか?と聞いたが間違いなくこの先ですと答えが返ってきたので、捕まえた精霊の達を引き摺りながら進んでいった。
『あ、あの?!私達は連れて行かなくてもっ!!』
「何言っているんだ。まだ仕掛けがあるかもしれないだろ?最後まで付き合えよ」
と、冷たく言い放ちそのまま進んだ。
ちなみにゴーレムは双子のストレージに入れといてもらった。
俺のに入れると重量オーバーになるからだ。
持っていこうとする時にも精霊たちから抗議の声があがったが、そこは無視だ。
遊びに来ているわけじゃないので、迷惑料はきっちり貰っていく。
扉を抜けて、奥に入るとまっすぐの道が続いていた。
道の両側には金色の炎の燭台がいくつも並んでいて、奥の方まで照らしている。
その道を進んでいくと、大きな扉の前に着いた。
試しにその扉を押してみるとびくともしない。
『主様、私がやります」
ニケはそう言うと、扉の前で俺には分からない言葉で詠唱をする。
そうすると…。
ギギギギギギ…と、鈍い音をさせてゆっくりと扉が開いていく。
扉の先は広い部屋になっており、その中央には祭壇があった。
中に入ると、祭壇の中央に何かが
俺たちは、その水晶の前まで移動した。
「わあ、綺麗な水晶だね、ディアナ」
「そうね、ヘカティア。でも、それに触れてはだめよ。特殊な結界が張ってあるから、火傷してしまうわ」
そういって、触ろうとしたヘカティアを止める。
ヘカティアも、わわっと言ってその手を止めるのだった。
『私以外が触ると、特殊な結界が作動して高威力の雷で焼かれてしまいます。主様もそこで待っていてください』
それを聞いた俺たちは、祭壇の下の方まで下がりニケに任せることにした。
目を凝らして見ると、中には眠っているかのように目を閉じた一人の女性がいる。
祈るような恰好の女性は、とても美しくこの世のものとは思えない容姿だった。
そう、例えるなら女神様だ。
だが、俺はこの女性をどこかで一度見ている。
『ついにこの時が来たのですね。…主がいた世界の私と、この世界の私が本当の意味で一つになる時が来ました。さぁ、目覚めましょう私。本来の姿へ戻るために…」
そう言って、ニケは全身に魔力を溜めていく。
その魔力の光により、金色に輝いていった。
「すごいな。まぶしすぎて直視出来ない…」
思わず呟いたとおり、辺りが金色に染まり何も見えなくなった。
かろうじて、ニケがそのクチバシで水晶を突いたのが見えた。
次の瞬間、辺りに暴風が吹き荒れる。
祭壇は、雷のドームが出来上がり近づくことも出来なくなった。
「うお、一体何が起こっているんだ…!」
「ああっ!これは凄いですね。
「本当だね、ディアナ!ここ百年くらいはあの魔王しか見てなかったけど、百年前にいた
双子が何やら不穏な事を口走っている気がするが、そんな事を気にする余裕がないくらい部屋の中が大変な事になっている。
余波だけでも、生身の俺には結構キツイ。
双子の方は余裕そうなので、少し後ろに下がり双子を盾に自分を回復しながら様子を見ていた。
10分程経つと、その嵐が急にピタッと収まった。
一応、何が起きてもいいように双子も包帯を使って回復していたので、HPは満タンだ。
さて、鬼が出るか蛇が出るか…。
そう構えて、祭壇を見ると美しい女性が立っていた。
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