第113話 迷宮《ラビリンス》再び
俺達は、【
どこのダンジョンも入口付近はモンスターが少ないので、一旦ここでキャンプを張ることにした。
簡易テントとキャンプセットを設置して、夕食の準備を開始する。
用意していた肉と野菜を煮込んでスープを作り、パンと一緒に食べた。
前までは考えられなかったが、香辛料も持ってきているので味もまぁまぁ美味しい。
これもユートから『食べ物は体の資本だぞ?普段からいいもん食っとけよ、金はこれからいくらでも稼げるだろ?』と言われて町で購入したものだ。
「俺たちもSランクか…。まだ実感が沸かないな」
「ああ、まだ戦闘すらしてないし、ステータスを結構上げないと実感は出ないだろ」
「それもそうか。さてと、明日だけど朝からダンジョンに入ろう思う。目的の場所は地下4階だ。辿り着く迄に半日は掛かる見込みだから、4階に降りる前に休憩が必要になるだろう。…今度は慎重に進んでいこう」
そこは、カイト達が足止めを食らい全滅し掛けた所だ。
苦い思い出がある所だが、だからこそ避けては通れないだろう。
カイトは戦闘して少しでもHPが減ったら、回復職の二人に常に回復するように話した。
ランクアップクエストの対象であるSランクに自分達がなったので、いつかは達成するだろうと考えたからだ。
アイナとザインも同じ事を考えていたようで、俗称"包帯"を沢山持ってきてるのでそれで問題ないと返した。
その後も明日の計画を話し、少し早いが寝ることにした。
最初の見張りはカイトがやる事になった。
カルマは寝る必要が無いので、一緒に辺りの警戒を行っている。
「目標は地下4階か。あそこの敵はお前たち人間にとって厄介な敵ばかりだな」
「ああ、おかげで前回に大失敗しているからな。今回はうまくやるさ。君にばかり頼るわけにはいかないし」
カルマは、【旧王都の廃墟】と同じく余程の事が無い限り手助けはしないと言う。
ただ、あまり進み具合が悪いのは好ましく無いので、後ろは気にするなと言ってくれた。
そうなると、ガンガン進んでいける。
「じゃあ、明日は頼んだよ。俺らも早く終わらせたいから君の助けはありがたい」
「何、気にするな。道を切り拓くのはお前たちがやるんだ。後始末くらいはやってやる。その代わり、速やかに進め」
「ああ、そのつもりさ。君がいるだけで、こんなにも安心感があるんだな。ユートさんが羨ましいよ」
専門職の専売特許を羨むのはお門違いではあるが、こんなにも強力な助っ人が常にいるのは羨ましいと、カイトは素直に思った。
「我の力は、主が鍛えたおかげ。だからこそ、ナイトメアの状態でも強いのだ。逆に言うと、ここまで鍛えていただけたからこそ、精霊の力を開放出来たのだ。そうでなければ、器の強度が足りなくて我が体は吹き飛んでいただろう」
「そうか、あのユートさんのペットだからこそ強いのか。うん、なんか納得だな」
LBOでは奇人とまで言われたユート。
その所以は、ペット達を鍛えるのはかなりのチャレンジが必要だからだ。
育つまでは弱いので、時には自分自身を盾にしてペットを育てるのだ。
まさに子供を育てる親の如く、自分の事を顧みずに戦う。
だから、育て切るまでに諦めてしまう者や、もっと強いペットを求めて育成を途中で終わらせてしまう人が多いらしい。
なので、ユートのように殆どのペットを育てきる人は滅多にいないみたいだ。
しかしテイマーの武器は、やはり自分が調教したペット達だ。
その武器を極限まで強くするのも当然なのかとも考えていた。
交替の時間になり、ダンが次の見張りとなったのでカイトも仮眠を取ることにした。
明け方に、全員の目が覚めたのでそこで軽く朝食を取った。
昨日余ったスープに、パンと干し肉と言う感じだ。
簡易キャンプを片付けて全員の準備を整えると、早速【
ステータスAランク時MAXまで上げてからの突入となる今回は、前回来た時よりもかなりスムーズに進める事が出来た。
カルマも約束した通りに殿を務めてくれたので、後方の敵には一切の注意を払う必要が無かった。
カルマは、倒すどころか<吸魂>でレイスやらゴーストやらを吸収して魔力に変えていたため、どんどんと魔力を回復していたのでかなりの余裕があったみたいだ。
この場所は、【ナイトメアロード】姿のカルマにとっては餌場と一緒だ。
現在のカイト達は、カイトの相棒のグランにカイトとアイナが乗り、ダンとザインはそれぞれ”召喚ナイトメア”に乗っている。
ミラはなぜかカルマに乗せられていた。
カルマ曰く、『この娘は
現在、地下2階いる。
前来ていたときもここまでは全く問題なく進んでいた。
そろそろボス部屋だ。
前の時も特に問題なく倒した”カース・ナイト”が登場した。
ユート達の時は、カルマがあっさりと<吸魂>で倒してしまったので、戦う事すら出来なかったやつだが、ここではカルマが出しゃばる気は無かった。
「前にも倒したけど、油断せずに行こう。落ち着いて戦えば、問題なく倒せる敵だ!」
カイトがそういうと、全員気を引き締めなおして戦闘態勢を取った。
前衛はカイトとグランコンビと、ダンが引き受ける。
結果だけ言えば、楽勝だった。
剣技と槍技を使って、二人だけで瞬殺してしまった。
「もはや、相手ではないですね。みんなが頼もしくなってて嬉しいです」
前回は、すこし負傷したりもしていた仲間たちが無傷で戦いを終えた事にアイナはほっとしていた。
次の地下3階の守護者では、多少の負傷もあるだろうが、この分なら目的地までは問題なくいけそうだ。
心配なのは、ミラのランクアップクエストだ。
ある意味では、ボス戦よりも厄介な相手なのだが、ランクアップクエストの性質上戦闘中は手助け出来ない。
もちろん命に係わる状態になれば、全員手助けすることになっているが、一度負けるとすぐに次の相手で挑戦するというわけにはいかない。
精神的に追い込まれてしまうため、仕切り直すのが難しいのだ。
まだ始まっていない事を心配しても仕方ないと、気を取り直す間に地下3階も半ばまで来た頃だった。
リッチやバンシー達が奥からわらわらと出てきた。
「また、こいつらか。みんな今度は油断せずにやろう。あの時とは違うと分からせてやろうぜ!」
ダンが前に出て、盾を前に出して全員に発破をかけた。
さらにスキルを発動した。
「
聖なる力で、邪悪なるものからの状態異常や攻撃の効果を半減するスキルを発動した。
効果が高い分、自分だけの効果となる。
だからこそ使うパラディンのスキルがある。
「
範囲内の特定の相手に敵意をぶつけるこのスキルは、結果的に攻撃を自分に集中させることが出来る。
壁役になるパラディンにとって、なくてはならないスキルだ。
「さあ、こいお化けども!俺がすべて受け切ってやる!」
ダンにリッチやバンシーの魔法やスキルが集中する。
だが状態異常は一切受け付けず、リッチの攻撃魔法すら弾いていく。
「すごいな、ダン!よし、こちからも仕掛ける!ダン頼んだぞ!」
ダンがリッチ達を抑え込んでいる間に、攻撃を仕掛けて一体ずつ処理をしていった。
ボロボロになりながらも、どこか満足気な顔をしているダン。
ダンは攻撃を一手に引き受けてすべて防いだ。
前の様に混乱することも無く、被害は最小限に食い止めることが出来たのだった。
「これで、もうここで負ける事はないさ。このまま目的地まで進んで行こう」
バンシーからの不意打ちももはや問題無く処理出来る事がわかり、ここでの心配事も無くなった。
あとは、"リッチロード"に会うまで油断しなければ大丈夫だろう。
アイナから回復を施してもらい、一息つくとカイト達は先に進むのだった。
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