第86話 VSエルダーデーモン

 真っ黒な普通のデーモンよりも一回り大きなデーモン、エルダーデーモンだ。

 すぐに生物鑑定を行った。


 大悪魔エルダーデーモン ランクS 種族:悪魔 HP3500/3500


「あれが!?なんて大きな」


「見るのは初めてか?中々固いし、魔法も強いから落とされないように気を付けろ!」


「はい!分かりました!」


 エルダーデーモンは余裕をかましているのか、こちらを見ても動く気配が無かった。

 それならばとスキルで準備する。


「スキル発動〈天啓〉!〈アニマブーストⅢ〉!〈悪魔支配デビルルーラー〉発動!」


 〈悪魔支配デビルルーラー〉により、相手の能力を一時的に下げる効果を与える。

 普段はカルマがいるので使わないが、敵が悪魔の場合は有効だ。


 スキルを掛けられて、エルダーデーモンは敵対心をこちらに向けてきた。

 手の平には、闇魔法を発動する魔法陣が浮かび上がっている。

 俺は更に神秘術ミスティックにて、弓に聖属性を付与した。


「喰らえ!」


 まずは、矢を三本同時に撃ち放った。

 ヒュンッヒュンッヒュンッと飛んでいき、見事に命中する。

 

 グオオオオオっ!

 と怒りの咆哮を上げて魔法を飛ばしてきた。

 槍状の闇属性の魔法が空から降ってきた。

 闇中級魔法シャドウジャベリンだ。


「回避!」


「はい!」


 カイトは呼吸を合わせて回避すると、そのまま懐に滑り込むように入り込んで、剣で一閃した。

 そこに合わせて、俺も弓を更に撃ち込んだ。

 ズダンッ、ズダンッ、ズダンッ!!と命中しダメージを確実に与えていく。


 しかし、エルダーデーモンも黙っているわけがなく、今度は口から炎のブレスを吐き出した。

 ブオアアアアアアアアッとあたり一面が火の色に染まった。


 ギャオオッとルベルが悲鳴を上げた。


「く、耐えろよルベル!グレーターヒール!」


 すかさず、普通の回復魔法で回復させた。


 その裏で、炎を回避したカイトは剣を横にして精神を集中させていた。

 剣がどんどん青い光に包まれていく。


「剣技〈七星〉!!」


 言うと同時に横薙ぎ一閃でエルダーデーモンを切り裂いた。

 その瞬間、追ってくるかのようにさらに剣閃6つ煌めいて切り裂いていった。


 グアアアアアア!!!

 後ろから斬られて大ダメージを受けたエルダーデーモンは、その直後にその剛腕でカイトに殴りかかった。

 危険を察知し、振り向きざまに剣で受け止めるが、受け止めきれずに飛竜ごと吹き飛ばされた!


「う、うがああああああああああああっ!」


 一気にHPを半分持っていかれて、苦痛に喘ぐカイト。

 なんとか、体勢を持ち直した飛竜がカイトを空中で拾う。

 間一髪だ。


「ぼさっとしていると、即死だ!攻撃後に油断するんじゃない!!」


「がはっ、はぁはぁ、すみません!!」


「アークグレーターヒール!」


 MP効率など無視して、範囲回復をグランとカイトに掛けた。

 さすがSランクという事なんだろう。

 ただの殴りが魔法よりも痛い。


 さらに、魔法を追加で撃ってきた。

 闇低級魔法シャドーボールを連続で撃ち放ってきた。

 隙間なく撃たれた魔法は、回避しようがない。


「ぐうううう!この程度の魔法!」


 双剣を盾に、ダメージ覚悟でわざと当たって弾いていく。


 だが、そのままで俺も終わらない。

 ルベルの背に立ち、そこからエルダーデーモンに向けてジャンプした。

 意表を突かれたのか、棒立ちの状態になったのでそのまま連続で切り込んでいく。

 ザッザッズダダッダッダッザシュッと横二閃、縦に切り上げつつ蹴りを入れて、横斜めにと切り裂いて連続でダメージを与えまくった。

 最後に、後頭部に両足でドロップキックをお見舞いして宙に飛んだ。


「ルベル!来い!」


 そう声を掛けると宙に浮きあがった俺を背中に見事にキャッチした。


 怯んだエルダーデーモンに今度はカイトが抜刀するかのような構えをする。


「剣技〈炎月〉!」


 炎を纏った剣閃を遠くから飛ばして当てていた。


 あれは、魔法剣みたいなものか?

 さすが本職のやつの攻撃はバリエーションがあっていいなぁ。


 すぐさま、追加の剣技を発動させる。


「剣技〈光輪〉!」


 今度は光の輪が剣から次々と出されていく。


 俺も便乗して、狙いうちされないように飛びながら、爆発と聖と付与した弓矢を撃ちまくった。

 ガガガガッっと光の輪で切り刻まれ、ドゴーンッ、ドゴーンッ、ドゴーンッと爆発されてかなりの大ダメージを与えた。

 ついにエルダーデーモンが耐えきれずに、墜落した。


「最後の詰めだぞ、逃がすなよ!?」


「分かりました!!」


 俺とカイトも急降下して、落ちていくエルダーデーモンを追いかけた。


 ズドーーーーーーーンッッと爆音とともに地面に打ち付けられたエルダーデーモンは、もはや虫の息だ。


「トドメいくぞ!」


「はい!」


 落ちた場所に降り立ち、ダッシュで近づく。


 俺は神秘術ミスティックで聖属性を付与しつつ、うずくまったエルダーデーモンの首を双剣で掻き切った!

 更に、カイトが背中にダイブして止めの一撃を打ち下ろした。


 グアアアアアアアと断末魔が辺りに響き渡り、エルダーデーモンは弾け飛んで塵になった。


「よし、やったぁっ!!」


「喜ぶのは早いぞ?あたりを警戒!新手はすぐやってくるぞ!」


 カイトは、うはぁーと少しゲンナリした顔をするも、すぐに気持ちを切り替えて辺りの警戒をした。


 俺は残ったエルダーデーモンの残骸である角やらキバやら羽やらをストレージに放り込むと、マジックアイテムがドロップしない事を確認してルベルに乗り込んだ。


「よし、ここはOKだ。次に行こう!」


 近くに、デーモンが数体近づいてくるのを確認して、離脱を促す。


 俺とカイトは一緒に次の獲物を探すため、再び空に飛び立つのだった。

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