第65話 よし、競争だ!
───地下3階に到達して既に30分くらい経っていた。
「地下3階も厄介なのはリッチくらいで、あとは大したことないか。このままいけばもうすぐで上の階へ行けるな」
段々、魔力の霧が濃くなっていく中で迷わないで進めていることだけでも異常なのだが、それよりも進行速度が尋常じゃなかった。
なぜならば、地下3階はニケとカルマに乗ったままだからだ。
「事前情報通り、イレギュラーも特にいないしこのままでいいな。少し警戒しすぎたか?」
「主よ。天使の塔の事があります。少し警戒心が高いくらいで丁度いいかと」
『カルマの言う通りです主様。あのような存在が度々現れるなど考えたくはないですが、実際にあったのですから想定しておくのが良いと思います』
「まあボスとかも違ったしな」
警戒しないとと言いながら、雑談しながらモンスターを作業的に排除していく。
「ユートさん達は、天使の塔をどこまで攻略してきたんですか?」
その話を聞いていたカイトが聞いてきた。
「俺たちは、20階のボス部屋までは攻略してきたよ。なかなかの激戦だったがなんとか倒せたよ」
あの時の戦闘を思い出しながら話をする。
「本当ですか?!20階のボスと言えばSランクの熾天使が出るって話でしたよね」
カイトは、ギルドから聞いている通りの話をした。
「いいや、俺らが遭遇したのは、S2体、S+1体、SS1体の計4体の熾天使だったよ」
と正直に話をした。
「は??いや、SSって。しかもS以上が4体??一体どうやって倒したんですか?!」
と目を点にして聞いてきた。
道中に現れるモンスターの相手は、ニケとカルマが殆どしてくれているのもあって暇を持て余していた。
なのでその時の戦闘を細かく説明してあげた。
アイナも聞き耳を立てて聞いていたようだった。
「そんな事をわざわざ嘘を付くとは思いませんが、にわかには信じられませんね…」
そんなカイトを一瞬ニケとカルマがギラっと睨んだが、よせよせと手で制しておいた。
「別にお前が信じようが信じまいが、俺にはどうでも良いことだよ。但し、いつでも状況が変わることを念頭に動いた方がいい、という事だけは覚えておいてくれ」
「あ…。ギルドで手に入る情報と違うことがあるという事ですか?」
「それもあるし、LBOでの知識がこっちで役に立たないこともあるってことさ。俺らの想像を超える強さのモンスターになっているかもしれない。だから実際に戦うまでは安心しないほうがいい」
実際にリッチやバンシーと戦ってみたが、ほぼLBOと同じ行動や魔法しか使ってこなかった。
そこまで確認しないと、行動が変わっているだけで、使う魔法が違うだけで脅威が段違いに変わる可能性があるのだ。
まして、数は少ないが見慣れないモンスターも出ている。
そういうのは基本自分の目で見るまでは判断付けれないと思っていた。
「相手の特性がしっかり把握出来ないと、格下の相手にすら負けることは多々あるからな。これからは気にするようにしたほうがいい、この先も生き残りたいならな」
「う…。今の自分には一番堪える言葉ですね。肝に銘じます」
そうこう話しているうちに、部屋の扉らしき前に着いた。
どうやら次の階段の前の扉のようだ。
「この部屋の先に彼らがいるはずです」
「ここのボスは出ないのか?」
「いえ、この中の部屋にはいます。そのボス倒した先が4階へ降りる階段へと繋がっているのです。彼らはそこで待機しているはずです」
「ちなみにボスはなんだ?」
「オックスソルジャーという、ミノタウロスの劣化版みたいなやつです。怪力でHPも多いようです。魔法やスキルを使ってこないので長期戦にはなりましたが、私達でも倒せるほどでした」
迷宮といえばミノタウロスというお約束なやつなのだが、本物はSランクモンスターでそこそこ強い。
素早くて、
試しにテイム出来ないか試したことがあったが、残念ながら亜人型扱いでテイム出来なかった。
なお、レア版のブラックミノタウロスというのもいるがこれはSSランクモンスターなので、基本見たら逃げろって言われていた。
SSランク戦闘職が、レアマジック武器を落とすから結構探しているみたいだったが、戦闘が専門じゃない俺がまともに相手が出来るモンスターではない。
ニケとカルマが育った今なら勝てるかもしれないが…。
「なら、ここもニケとカルマに任せようか」
「え?ユートさんは戦わないんですか?」
「何言っているんだ?テイマーはペットを戦わせてなんぼだろ?それに出番はないと思うぞ?まぁ、見てな。アニマブーストⅢ!ビーストコマンドⅢ!」
カルマとニケに能力および攻撃力UPスキルを発動する。
赤と緑のオーラに包まれている。
「じゃあ、行こうか。カルマ、ニケ頼んだぞ?」
「承知」
『お任せください主様』
扉を開けるとそこには一体の大きなモンスターが仁王立ちしていた。
手には大きな粗雑な斧を持っている。
一応鉄製だろうが切れ味は悪そうだ。
「あれがオックスソルジャーか」
「はい、動きは鈍いですが、力だけは本物なので気を付けてください」
「了解だ。とりあえず〈生物鑑定〉!」
透かさず
迷宮兵オックスソルジャー ランクA+ 種族:巨人族 HP:1500/1500
「うん、余裕だな。ニケ、カルマどっちが倒すか競争な!」
「!!」
『!!』
次の瞬間、ドドドドドドドドドドっっとふたりが走り出し、オックスソルジャーに飛び掛かった。
俺は見た。
番人であるはずのオックスソルジャーが、あまりの迫力に顔を引き攣らせながら後退ったのを。
その後には、オックスソルジャーのグモオオオオオオオオオオオという断末魔しか聞こえてこなかった。
「勝負結果は…ドロー!うーん、同時だったなぁ、残念」
オックスソルジャーは、見るも無残な状態になったが肉は肉なので食料調達として上半身を解体して柔らかそうな部分だけ肉隗としてストレージに入れといた。
残った部分の一部は、ふたりがもそもそと食べていたのは見なかったことにした。
「これで、オッケーだな。あとはお前の仲間が無事かどうかだが」
「えっと、はい、ありがとうございます」
自分たちも倒した相手とは言え、それが何も抵抗できないまま瞬殺される瞬間を目の当たりにして呆けていた二人は、声をかけてやっと正気に戻った。
もちろん念のためにブーストしていたのも要因だが、数発殴られたあとに倒れる光景は結構ショックだったようだ。
しかも、一撃当たるごとに肉片や血しぶきが飛び、オックスソルジャーが変形していくのだ。
苦手な人だったら、その光景を見ただけで卒倒しかねない光景だ。
「Sランク魔獣2匹を連れていくとこんなもんだよ。まぁ、気にすんな!さあ、早く仲間の安否を確かめよう」
といって、出口側の扉へ押していった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッと重い音をたてながら開けていくと、正面に奥の方に降りる階段が見えた。
さて、どこら辺にいるかなーと辺りを見渡すと、すぐに見つけた。
あれがそうだろう。
小さなテントが左側の方に張ってある。
どうやら動けなくてビバークしていたようだな。
下手に動き回るより賢い判断だ。
旅慣れしているメンバーがいるんだろう。
「ザイン!ダン!ミラ!」
テントを見つけて、駆けていくカイトとアイナの二人。
その後ろから、俺らも付いていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます