第50話 リンの休暇(2)

 買い物を終えた私は、シュウと一緒にランチを食べることにしました。


 シュウも何か買ったようだけど、聞いたら『ナイショっ!』て言われてしまいました。


 シュウにしては珍しい行動だったけど、きっとユートさん達に何かあげるのかな?と思いました。


 お昼は、パスタのような物があるというお店に来ました。


 普通の子供からするとかなりの値段に相当するらしく、店員さんから最初は訝しげに見られたけど、ギルドのプレートを付けているのを見ると、すぐに案内してくれました。


 今日は鎧とかの装備は着けてないので、普段着の紺のワンピースを着ています。

 滅多に着れないのと、アストラに来てからはまだ着たことが無かったのでちょっとウキウキしました。


 店員さんに美味しいのなんですか?って聞いたら、営業スマイルで全部ですと言われちゃったので、うーんじゃあ、オススメは?と聞いた。


 『では、こちらのですね』と言われたので、二人ともそれを頼むことにしました。


 「ん?こっちの、世界でもパスタはパスタなんだね?」


 と、シュウに聞いたら、そんなの当たり前じゃん!と言われた。


 たまに、この脳天気な性格が羨ましいと思います。


 そういえば、あんまり聞いたことのない言葉って、聞いた気がしないかも。

 特に、地球にもあるものとか。


 そもそも、なんでこの世界の人と話せるんだろう?


 そんな事を考えてたら、いつの間にか美味しそうなパスタが、届いていた。


 元の世界でいうとトマトクリームパスタのようで、麺はやや平ぺったくなっていて、生パスタのようでした。


 もちもちして、私は大好きです生パスタ。


「ん~~~、美味し〜〜〜!!」


 久々に食べるパスタに感動します。

 しかも、元の世界で食べたのより美味しいかも?


「そうだ、ここパパにも教えてあげよう!」


 と、つい声に出して言ってしまいましたが、意外にもシュウは、


「ああ、いいね!そしたら、美味しいのいっぱい食べれるな!」


 と、いっぱい食べる算段をしたみたいです。

 …もう、食いしん坊なんだから。

 

 それから、二人でスキル談義をしました。


 特に、武技アーツからのコンビネーションは、話が尽きなかったです。

 これとこれなら繋がるとか、これが繋がればねーとか。


 そのお陰で、お互い新しい組み合わせを思いつけたくらい盛り上がりました。


「もっとさ、強くなりたいよ。テイマーのユートさんですら単体で倒せる敵を、ステータス差があるといってもさ、まだ手こずってるし。せめて、タイマンで負けないようにするには、ランクをもう一つ上げないと厳しいよなー。」


「うんうん、そうだね。私もそれは思ってた。パパ達に今後も付いて行くには、今のランクじゃ無理だよね。逆にお荷物になっちゃうよ。そんなのは、私も嫌。絶対この先も一緒に行きたいから!」


 私にしては、かなり珍しく強い主張をしてたみたいで、シュウが珍しいねという顔をしていました。

 私自身は気が付いていなかったですけど。


「でも、次のランクアップって、何をたおしたら上がるのかなー?」

「んー、私にも分かんない。」


 前なら、インターネットで調べればすぐ分かったけど、今はそんな便利なものはないですし、こういう時に困ります。


 ユートさんに聞こうかな?

 いや、そんなことまで頼ってはいけないと思い直し、調べる方法を少し考えました。


「あ、そっか。ギルドで聞けばいいんだよねっ!」


「ああ、そうだね。じゃ、あとで聞きに行こうか」


 うんうんといいつつ、…今はご飯の後のデザートだよねって!と、チーズケーキを店員さんに頼みました。

 とっても美味しかったです。


 ───そのあと、さらに野イチゴのムースを食べて満足し、結構な時間雑談して、夕方前になりました。


「もうちょっとで、日が落ちるなぁ。リン、さくっとギルドに寄って帰ろう。」

「そうだね。早く帰らないとパパに怒られちゃうかも」


 いや、俺には関係ないし!おじさん怖くないし!

 とか虚勢を張るシュウをからかいながら、ギルドに来ました。


「あら!いらっしゃい、今日は2回目ね。急用?」


 ミルバさんが、私達を見つけて声を掛けてくれました。

 いつも、色々と気を掛けてくれる優しいお姉さんです。


「うん、ちょっと聞きたいことがあって。いいですか?」


 うんうん、私にわかる事ならなんでも聞いてーと、カウンターに呼んで椅子を引いてくれる。


「それで、どうしたの?」


「はい、昨日の天使の塔の攻略で、Aランクの敵とも戦ったんです。そろそろステータスがMAXになるし、ランクアップしたいと思ってて。どうやったらいいかなと」


 そのままミルバさんに、天使の塔での戦いがいかに激しかったかを語り、このままでは役に立てないと嘆いてしまいました。


 「なるほどね、それならランクアップクエストを受けるのが一番早いわね。でも、ここの町でも中々いないのよ?

 Aランクなんて。まだ、早いんじゃないかしら?」


 心配そうに、ミルバさんは尋ねてくれます。


「ご心配有難うございます。でも、パ…ユートさん達に付いて行くには、今のままでは、駄目なんです。」


 私は、真剣な眼差しでミルバさんを見ました。


「んー、分かったわ。でも、二人だけで決めちゃ駄目よ?クエストの対象は…」


 ミルバさんは、丁寧に教えてくれました。


 そこで、分かったのは、既にクエストを受ける資格はあるという事。

 これは、ステータス登録の更新もしてるので確定みたいです。


 次に、討伐対象モンスターは、Aランクモンスターの中でもレアモンスターと言われる魔物で、しかも一人で倒さないといけないらしいです。


 もし虚偽申告しても、ステータスに結果が刻まれるのでバレるからね?と、念を押されました。


 で、当然まだ倒したことの無い相手でした。

 

 いつでも受けれるように、仮のクエスト発行手続きをしてくれました。


 普通のクエスト発行書は羊皮紙等を使うが、ランクアップクエストは遥か昔から在るのと、皆共通のクエストの為、使い回し出来るように銀のプレートに刻まれたものだった。


 もしこれを無くしたら、相当な額の罰金が課されるらしいです。


 なお、討伐に失敗してその場で力尽きた場合は、このプレートを通して分かるらしいので、その場合は回収する専門家が回収するみたいです。

 …その冒険者の遺体と一緒に。


「こう言ってはなんだけど、あなた方は死ぬことは無いわ。だって、あのユートさんが居てくれるんだもの。逆に、一緒じゃない時に挑戦しちゃ駄目よ。最も有利な状況で戦う、これも冒険者にとって大事な事だからね?」


 クエストは、格好つける為にやる訳じゃないと教えてくれる。

 

 格好つけてた訳じゃないけど、地獄の塔での事を思い出す。

 今度は、ちゃんと人を頼ろうとシュウとも話をして決めた。


「色々と有難うございました!」


 ミルバさんにお礼を言ってギルドを後にしました。


(クエストの事は、今度ユートさんに相談してみなきゃだね)


 そんな事を考えながら、シュウと二人で宿屋の方へ歩いて行くのでした。

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