第48話 デートへ行こう
館かー、明日が楽しみだな。
昼までは、時間があるな。
一度、宿屋に戻って厩舎へニケとカルマ以外を預けに行くことにした。
フィアとゲンブを連れて厩舎へ来た。
ちなみに、クロは相変わらずカルマの影に潜んでいるので、連れてこなかった。
「あ、こんにちわ~ユートさん」
厩舎の娘が俺を見つけると駆け寄ってきた。
相変わらず、タンクトップから見える肌が眩しい。
「やぁ、こんにちわ。また、預けに来たよ。この子達の面倒頼むな。」
「はーい、分かりました。他の子達に顔見せて行きます?」
丁度、ご飯の時間ですよと教えてくれた。
「ああ、そうだな。有難う。そうするよ」
連れてきた子達を連れて餌場に合流させた。
既に、ご飯中だった。
ホワイトファングのシロと、ウインドドラゴンのピューイが俺を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。
よーしよーしと、撫でてやると嬉しそうにシロがクンクーンと鳴いて、ピューイはやっぱりピューイと鳴いた。
ほんと、可愛いなぁ。
二匹を構ってると、自分も撫でろとフィアがすり寄って来て、なでなで。
ゲンブも珍しく首をグイッと寄せて来て、スリスリ撫でてやる。
テイマーにとって、これほど至福な時はない!
「結構飼い慣らされてる人多いですけど、ここまで懐かれてる人久々に見たよ〜。本当に大事にしてるんですね!」
と、厩舎の娘が言った。
「そうなのか?みんな、俺の大事な家族だからなぁ。普通は、大事にするだろう?」
そう言いながらも満面の笑みで、みんなを撫でてた。
暫くそうしていたが、そろそろ昼になったので戻ることにした。
みんなが、名残惜しそうにしていたが、また明日来るからなと告げて、厩舎の娘に、みんなを宜しくなと言って出て来た。
服に、羽やら毛やら付いていたので払い落しながら、再びギルドに向かった。
到着すると、丁度カウンターでミルバと話をしている女性がいた。
お、サナティだ。
良いタイミングだったようだ。
「あ、来ましたね!丁度サナティ様も来たとこなんですよー!」
ミルバとサナティは年の頃が近いのか、雑談が盛り上がってたようだ。
「なんか、盛り上がってたみたいだな?」
邪魔したか?という顔で聞いてみる。
「いえいえ、もうすぐお祭りなんで誰と行くんですかとか聞いてただけですよ」
と、ミルバは意味ありげな顔でコチラを見ている。
ん、なんだ?
「あ、もう。あのことはナイショですからね!」
と、サナティが慌ててミルバを制していた。
ちょっとおじさんにはわからんな。
まあ、いいや。
取り敢えず要件を伝えないとだな。
「?よく分からんけど、邪魔じゃないならいいか?サナティ、こらからご飯でも一緒にどうだ?この間の礼をしたい」
「あ、はい!え、でもお礼をしたいのはこちらの方でしたし…」
「いやか?それに、リンとシュウの件は気にしないでいいぞ?ある意味、今じゃあの子らは俺の家族だからな。逆に、知らせてくれて良かったよ、有難う」
そう言うと、両手の平を目の前でブンブン左右に振って、滅相もないです!と恐縮している。
これじゃ埒が明かないな。
よし、それなら!
「じゃ、こうしよう。俺はこれからご飯を食べに行くが一人で食べるのは侘しい。君みたいな素敵な女性が一緒に来てくれると嬉しいのだか、誘われてくれないか?」
と、若干気障かなと思いつつも、どお?と聞いてみる。
「う、そこまで言われたら断れないじゃないですか…。でも、嬉しいです。お誘い、有難うございます!是非ご一緒させて下さい」
と、にこやかな笑顔で承諾してくれた。
カウンターの向こう側で、ニヤニヤしながらいいなーと言ってるミルバはスルーする。
君は、明日だからね?
一先ず、ギルドを出てお店を何処にしようか相談した。
なにぶん、そんなにこの町に詳しく無いのでお勧めとか好きなレストランとか色々と聞いた。
その中でも、町の川が少し遠くに輝いて見えるバルコニーがあるお店があると言う事で、そこに行くことに決めた。
食事も美味しいらしく、またこの地方特産の果物のジュースもあるらしい。
「さすが、女の子はオシャレなとこ知っているなぁ。俺一人だと、そんな所は縁がないから入れないよ」
「そうですか?ユートさんなら、お一人でも絵になりそうですが」
と真剣に言われたので、からかうなよと苦笑いした。
「うーん、本当に思うんですけど。あ、あそこですよ」
店の入口を見つけてサナティが俺の手を引いて店を指さす。
心の中で娘によくこーやって急かされたなと思い出したが、流石に口にはしなかった。
二人で店に入ると、笑顔が明るい店員に案内された。
天気もいいのでバルコニーでいいかと聞いたら、もちろんです!と一番見晴らしのいい席に案内してくれた。
「ああ、本当にいい眺めだな。町の郊外にこんな素敵な場所があるんだね。落ち着いてて、好きだよ」
「本当ですかっ。気に入って頂いて良かったです。ここは、たまにしか来ないですけど、お気に入りの一つなんです」
そう言うと、嬉しそうな笑顔でこちらを見る。
うん、若い頃ならこれだけでイチコロだったな。
というか、今でも危ない。
これはどっちへのお礼か分からなくなりそうだな、と苦笑いしそうになって、勘違いされては不味いので耐えて笑顔で返した。
「お客様、ご注文はどうなされますか?」
ふと店員さんが、待っている事を思い出した。
ああ、済まないねと言いつつ今日のお勧めを頼む事にした。
サナティも同じのでいいと言うので同じのを2つ頼み、特産の果物ジュースもつけて貰った。
ちなみに出てきたのは、この地方で取れるらしい魚のスモークサンドと、彩りの良いサラダ。
それと、3種のチーズと新鮮なフルーツのセットだった。
「おー、これウマいな!魚とか久々に食べた気がするよ」
お世辞抜きに美味かった。
地球でいうスモークサーモンサンドみたいな味だ。
「ここの魚のサンドは、絶品なので有名なんですよ?」
そう言って、はむはむと可愛らしく食べてる。
そんな姿を見て、今度リン達も連れてきてやろうと思う俺だった。
食事をしながら他愛のない会話を楽しんだ。
会話が少し途切れかけたとこで、サナティがそういえばと話を振ってきた。
「さっき、ミルバさんに聞きましたよ。なんでもあの【天使の塔】を3日で20階層まで突破したと。本当ですか?」
「ああ、本当さ。最後のボス達がヤバかったけど、なんとか倒せたよ」
その時に出てきたボス達や、それまでに出てきたレアモンスター達の話を詳しく教えた。
例の魔族の男の件は伏せてだが。
「そんなに凄い相手に良くもご無事で。ニケ様やカルマさんが強いのは知ってましたが、ユートさんも大概に規格外ですね…」
はぁ、流石ですねぇと惚けたように聞いていた。
「まぁ、結局はみんなのおかげさ。誰一人欠けても辿り着けなかったと思ってるよ。やっぱりパーティ組めるのはいいよな」
「それはそうですね。私も、兄のパーティに入れて貰ってなかったら、今ごろどこかで命を落としてもおかしくは無かったと思っています」
これまでにも色々とあっただろう。
このアストラの住民にとって、Cランクというのは決して低くないランクだ。
絆が無いパーティだったなら、命を落とすことも容易い事だろう。
「ああ、そうだ。ライとサナティに出会えたのも縁だ。二人に何か困った事があったらいつでも言ってくれ。俺に出来る事なら喜んで協力するよ」
本心でそう思っている。
まだ、出会って間もないが、純粋な心を持つ二人になら力になりたいと思えた。
「ふふ、有難うございます。私も、何かあれば協力しますのでいつでも言って下さい。兄にもそう言っておいてくれと言伝を預かってますので」
「ほんと、人の良い兄妹だな。」
「それを言うならユートさんもですよ?」
その後は、幼い頃にライがイタズラがバレて親に大目玉食らったとか、女学校に通ってた頃に憧れてた人が冒険者だったとか。
そんな、他愛のない会話をして夕方まで楽しく過ごした。
こんな日常を送れることも幸せな事なんだなと、改めて実感するのだった。
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