第45話 戦いで得たもの

「よし…、終わった。勝ったぞ皆!」


 おっしゃーと、ガッツポーズを取った。


 ゲンブが、〈絶対防御〉を解いた。

 そして、中からシュウとリンが飛び出してきた。

 中で、意識を取り戻してたみたいだ。


「ユートさん!やったんだね!さっすが!」

「パパッ!すごい、やったね、すごい!!」


 子供たちが、意識を取り戻したばかりなのにダッシュでこっちにやってきた。


 ステータス紋で、自分のステータスを見た。


 HP:752/1800 MP:47/1500 SP:180/1400

 

 うん、かなり危なかった。

 MPとSP切れたらコマンドが切れて一気に劣勢になりかねない。

 …うーん、なんとかMP/SP回復ポーションとか入手しないと、この先危ないなぁ。


「主、最後は見事でした。段々、体のキレが戻ってきましたね」


 とカルマに賛辞を贈られる。


 ん、戻ってきた?

 そういや思ったよりも体が動くようになって気がするな。


『主様、これで地上に帰れるようになりますね。例の男の事もありますし、そこに現れた報酬を回収したら一旦戻りましょう」


 と、ニケが提案してきた。


 確かに、安全確保してさっさと帰らないと。

 今、何かに襲われたらひとたまりもない。


「ユート!さすがだなぁ。俺は、回収作業やっとくぞ。お前もMPほとんど無いだろうが、回復とかしといてくれ」


 ガントは、今の状況をよく分かっているようだ。

 率先して、帰るための準備を行ってくれている。


「とりあえず、シュウ、リンはこれを飲んでおいてくれ」


 シュウにポーションを2本渡した。

 これで、二人のHPは回復出来るはず。


「ニケ、精霊魔法でフィア、クロ、ゲンブを回復してやってくれ」

『承知しました、主様。ポーションは借りていきますね』


 そういうと、差し出した高級ポーションを丁寧に咥えていった。


「カルマは、俺が回復しよう」


 魔法ではなく、獣医学バラナリースキルのペットポーションでの回復をさせていく。


 獣医学バラナリースキルは、パッシブスキルなので、スキルを所持しているだけで効果が勝手に現れるものだ。

 なので、俺がペットポーションを使うと、スキルを持っていない人に比べて、2ランク以上いいもの使った時と同じになる。


 なので、中級ペットポーションでも、俺が使うと…あら不思議!すべての傷が一瞬で消えました!という、具合だ。


 ちなみに、SPもMPも消費しない。

 難点は、効果が出るまではペットの近くにいないといけないので、戦闘中の使用には不向きな点だ。


 さて、全員の治療が終わったようだ。

 俺も、ニケに治療してもらった。


 全員、HPが満タンだ。

 〈祝光〉とか使いたいが、MPが足りないため離脱を優先することにした。


 ガントも回収が終わったようだ。

 と、いっても金色の灰と、マジックアイテムが数個落ちてただけらしい。


 今回もマジックアイテムの中には、アーティファクトがなかった。

 残念だ。


 …そういや、大量の灰に埋もれて出てきたものがあった。


 小さな宝箱だ。

 カギは…開いているらしい。


 ガントが、お前が開けろとよこしてきたので、俺が開けた。

 その中には、腕輪が1つ入っていた。

 それをガントに鑑定させる事にした。


「おぉ、これはアーティファクトだな。間違いない。しかし、効果が転移門の利用が可能になると出ているな。効果は、パーティー全員に及ぶとさ。あと、装着時にMP回復効果が現れるだってさ。1秒で5回復だってさ」


 !?まじかっ!

 さすがアーティファクト。


 MP回復とか、金貨1枚以上の超高級ポーションか、自然回復しかない。

 自然回復だと、1分で1%の回復だ。

 1秒で5回復だと、今のMPなら300秒…イコール5分で全快する。

 しかし、自然回復だと100分かかる。

 これ、普段の戦闘ならポーションなくてもやっていけるかも。


「で、最後に。『この腕輪を持つものは、塔の主への挑戦権を得る。これを持つものは、さらに上層階へと繋がる扉が開くことが出来るであろう』だってさ」


 ミカエルが言ってた、主ってやつか。

 うーん、いつかはチャレンジしたほうがいいかもしれないな。


 しかし、今は暖かい風呂と飯だな!


「そうか、ありがとう。さて、とりあえずクエストも達成したし、帰ろうか。あの扉でたらポータルゲートがあるはずだ」


 と、いい。宝箱はゲンブに入れておくかとしまおうとする。

 それをガントが止めた。


「その腕輪は、ユートお前がしておけ。今回思ったが、お前のスキルが使えないとこの先も厳しい。MP回復はかなりいいんだろ?常時装備しておけ」


 といって、渡された。


「だが、報酬は…」

「いや、これだけはお前用だ。俺らの為にもお前が使ってくれ。みんないいよな?」


 と、リンとシュウに向かって聞く。


「え?そんなの当たり前じゃん?ユートさんがリーダーでしょ?使ってよ」


 シュウは、さも当たり前だと言う。


「うんうん、MP回復も大事だけど、転送門とかっていうのも関係するなら、パパ以外に装備するひといないよね?」


 と言って、リンは俺が持たされてた腕輪をするっと俺の左腕に付けた。

 腕輪から、力が流れ込んでくるのが分かった。


「おお。すごいな魔力が流れてくるのが分かる。あ…、これ、塔のMAP見れるようになるな。そんな副効果あったのか。よし…とりあえず、ポータルで外に出よう」


 そういうと、みんなを引き連れて入ってきた扉と反対側の扉を開けた。


 扉を開けてすぐに、青く光る魔法陣が見えた。

 腕輪も指示しているが、あれは外との出入り口だ。

 あれに入ると、1Fの出入り口ゲートに出るようだ。


「腕輪の事もあるし、みんな先に入ってくれ」


 みんな、素直にはーいとか、おうとか言って入っていった。

 念のため、最初に入ったのはカルマだった。



 ───全員、無事にゲートを抜けて塔の入口に戻ってきた。


 試しに、もう一度入ってみたら、さっきの場所まで戻れた。

 これでいつでも、20階から探索を再開出来ることが分かった。

 

 外は、すっかり夜だ。

 正直、おなか空いた。


「なんか、途中でヤバイことになったけど、こうして無事にクエスト完了および脱出出来た。お疲れさま!こっからまだ帰るのに1時間くらいは掛かるから、各自水分だけは取って、すぐ帰宅するよ」


 みんなは、はーいと言いつつ荷物チェックと、それぞれの相棒の背中に乗っていく。


 ニケは、ガントとゲンブだ。

 カルマは、俺とリンフィアを乗せる。

 そして、クロがシュウを乗せて高速移動を開始した。


 そのうち、ウルフライダーとかになりそうだな…。


 とにかく、目的は達成した。

 まずは帰って久々の酒場飯だ!


「よーし、帰るぞ!しゅっぱーつ!」


 そういうと、ニケとカルマは高速移動しつつ競争して帰るのだった。

 …クロは、意外なことにそんなふたりの競争に平然とついていってみせるのだった。

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