第44話 決着、熾天使戦!

『ほう、お前…なるほど大精霊の化身だったか。どおりで今の我らに近い力を感じるわけだ。だが…調子にのってくれるなよ?時間を待っていたのはお前だけではない。…来たれ、我が力の象徴よ。彼の者共に我が審判を下す。───〈天の裁き〉!』


 一瞬にしてフロア全体が光に包まれた。


 そして上から超重力と光属性の魔力が押し寄せる。


「!!ぐああああああああ、なんつー魔法だ!」

「うお!うがああががああがあっ!」


 ユートとガントが苦痛に呻く。


「きゃああああああああ、かはっ!…」

「うわあああああああ!がぁっ!…」


 リンとシュウも、押しつぶされる。

 ランクの低い二人は、耐えきれずに気を失った。


 グラアアアアアオ!グオオオオオオン!とフィアとゲンブも大ダメージを受ける。

 しかしゲンブは、その中でゆっくり動いて、リンとシュウを首を伸ばして咥えるとカーゴに回収した。

 さらに、分身を解いたフィアを背中に乗せてから〈絶対防御〉を展開した。


 しばらく動けないが、これでしばらくはもつ筈。

 ゲンブ、ナイス判断だ!


 光が引いた後、俺らはボロボロになってた。

 あれを喰らって生きていただけも自分を褒めてやりたい。


 ガントは、いつのまにか取り出してたサマエルのマジックアイテム”死天使のローブ”を羽織り、聖属性を半減してたようだ。


 意外と機転が回るな。

 あ、でも今のでローブがボロボロになったか。


「くそ、売るつもりだったのに!あの野郎!絶対いいもの落とさないと許さねぇ!」


 とか、身勝手な文句を言っていた。

 やっぱりガントは、ガントだ。


「うぐ…、はぁはぁ。よし…ゲンブ、いい判断だ!そのまま防御保持していろ!」


 全身の痛みをこらえてゲンブにいうと、グオオン!と返事した。


 MPがやばいな。


 残り3割切っている。

 他の仲間たちも同じようだ。


 ミカエルのHPは…うーん、丁度10000位ってとこか。

 まだ結構減らさないとダメだな。


 相手は純粋にSSランク。

 しかも、それなりにステータスも高いようだ。

 

 だが…、一撃死の攻撃は持っていない。

 そう、あの男のような暴虐なスキルを持ってもいないのだ。


 だから攻略は可能だ。

 耐えきれるし、回復出来るのだから、死ぬことはない!


「カルマ、ニケ、クロ、フィア。スキル用意!最大攻撃でいくぞ!」


 スキル、アニマコマンドを再度発動する。それぞれの最大攻撃で瀕死にまで追い込みたい。


「承知した!グラビティフィールド!…イビルインフェルノ!」


 カルマは重力魔法で相手の移動を阻害しつつ、威力の高い攻撃魔法を撃った。


『いけ、トルネード!…そして、喰らいなさい!〈天嵐〉!!』


 ニケもMPを使い切る勢いで、魔法とスキルを発動していく。

 さらに羽根にも魔力を通して青いオーラを纏った羽根ダーツが、ミカエルを貫いていく。


 ミカエルが、ふたりの攻撃を受けて、ウオオオオオオオオオオッっと雄たけびを上げた。


 その様子を見ていたフィアも、再び魔力を溜めていく。


 するりとゲンブの結界から抜け出すと体を大きく変化させた。

 そして、〈炎体分身〉により5体を呼び出した。


 最大数を出すにはMPが足りないようだ。


 影に隠れて難を逃れていたクロも地面から出てくる。

 そして、〈眷属召喚〉を使い5体増えていた。


「ワレモ、アタラシキチカラヲ、オミセシマショウ」


 そう言うと、黒い稲妻を体に纏わつかせて、ミカエルの周りを走りだした。

 どんどんスピードが上がっていく毎に、その稲妻の量が増えていった。


「イクゾ。オウギ〈黒雷ブラックスパーク〉!!」


 ミカエルの周りを高速で走るその姿は、黒い稲妻で出来た竜巻のようだ。


 どんどん竜巻は狭まっていき、そのままミカエルを飲み込んだ。

 バリバリバリバリッ!と、凄まじい音を出して黒い稲妻がミカエルにダメージを与えた。


 ミカエルは、追撃によって受けたダメージでグアアアアッっと声を上げてよろめいている。


 そこに、分身したフィア達がさらなる追い打ちをかける。

 グルアアアアアアアアアッ!!と、咆哮し、体の炎を大きくする。


 フィアはミカエルの周りを走り出し、炎の輪となっていく。

 そして、四方から中心にいるミカエルに炎の弾丸となって体当たりをしていった。

 

 炎を纏った強烈な体当たりと囲まれた炎によるダメージで、さらにミカエルのHPを削っていった。


「よし、まだまだいくぞ!…炎よ雷よ!彼のものを滅ぼす力となり、灰塵と変えよ!…精霊魔法、ライトニングフレイム!!」


 覚えたての、複数属性の精霊魔法をミカエルにお見舞いした。

 初めてだったので、ドキドキしてたが問題なく成功したようだ。


『ぐおおおおおおおおおおぉっ!…勇者以外に、この体でここまで追い込まれたのは、数十年ぶりだ…。ふふふ、お礼にこれを差し上げよう。〈裁きの槍〉!」


 そういうと、力を溜めて腕を振り下す動作をした。


 光り輝く無数の大きな槍が空から現れて、恐ろしい速さであちこちに降り注いだ。


 俺は咄嗟に、それらを回避したが何度か掠った。


 他の皆も、うまく回避しているようだが数とその降り注ぐ速度が尋常じゃない。

 ヒュンヒュンヒュン、ドンドンドン、ヒュヒュヒュン、ドドドン!!

 何度か回避しきれず、ダメージを貰ったようだった。



 だが…


「この程度で終わりか?ならば、…ここで消え失せよ!」


 カルマは、そういいながら魔法陣を作り出す。

 数は4つ。

 そこから悪魔の顔をした炎が顔をだしミカエルに襲い掛かった。


 さらにニケもスキルを使って畳みかけた


『私の雷で落ちなさい!〈召雷〉!!」


 ドーン!とイビルフレイムで燃え盛るミカエルに大きな雷が落ちた。


 追撃で、フィア達は一斉に口からファイヤーボールを吐き出した。

 さらにクロ達も魔法を展開しシャドウジャベリンを発動したあと、口から赤黒いレーザーみたいなブレスを吐き出した。


 〈黒雷ブラックスパーク〉のビーム版みたいなものだ。


 皆が最後のとどめとばかりに、様々な魔法やスキルを使い叩き込んでいく。

 その間に、ミカエルのHPを再度確認した。


 虚像の熾天使ミカエル ランクSS 種族:熾天使 HP1374/12800

 

 !よし、あと少し。

 だが俺のMPも残り僅かだ。

 スキルが切れる前に畳みかけるしかない。


「ニケ、カルマ、クロ、フィア!あと少しだ!いくぞ!」


 そう言うと、全員がおう!と応じ最後の肉弾戦に移行する。

 

「ここから回復されては厄介だ、我が〈黒炎〉よ!さあ、喰らえ!」


 カルマが、黒い炎を纏い体当たりを繰り出す。

 ぶつかると同時に、黒い炎がチリチリとミカエルを灼いていく。


『はぁぁぁ!喰らいなさい!』


 ニケが青い羽根の弾丸を撃ちだす。

 ドドドッと、着弾しバリバリと電気を帯びる。


 そこに目掛けて、空中に飛び上がってから急降下して右前足を大きくスイング、そして魔力を纏った一撃でミカエルを吹き飛ばした。

 当たった瞬間に羽根がスパークし、さらにダメージを重ねる。


「これで、最後だ!」


 そういいながら、神秘術ミスティックで双剣に闇と爆破だけを付与して、効果が消えないうちに叩き込んだ。


 ミカエルも最後の反撃とばかりに、体から黒煙を上げながらも剣で振り払う。

 一合、二合と切り結ぶ。

 力はほぼ同等。

 いや、スキルがある分こちらが上か。


 三合目で、ミカエルの剣を弾き飛ばした!


「これで、トドメだああああああっ!」


 右手で弾き、左手に持った剣で横薙ぎに一閃。

 そして、通り抜けすぐに切り返し、左右の剣で切り裂いた。


『グオオオオオッ!!……く、ここまでだな。期待以上だニンゲン。だが、まだまだ足りない。もっともっと鍛えるのだニンゲンよ。主はお前を…』


 そう言い掛けて、ドオオン!と光が天井に昇っていき、ミカエルは灰に戻った。


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