おっさんテイマーは、はばからない!〜ソロテイマーだったのに、気が付いたら最強組織を作っていました〜

琥宮 千孝(くみや ちたか)

始まりの章

第1話 異世界への旅立ち

『ロスト ブレイブ オンライン』が発売されて半年。

 俺はいま、これにかなりハマっている。


 人なりに稼ぎもあり、結婚もして、子供も生まれて育ててきた。


 子供が小さいうちは、なかなか時間が取れなくて若い頃にはまっていたオンラインゲームはやらなくなっていた。


 しかし、近年の技術発達は目覚ましく、ついに体感型のVRMMOが可能になったと若い頃に夢だった内容のニュースを見たときは、年甲斐もなく興奮し、あのときの情熱が甦ってきた。


 中学生になった娘に、しばらくゲームにはまると宣言し(かなり苦笑いされたが)、妻にも生活に支障をきたさないと約束してやっとのことで手に入れたこのゲーム。


 専用のハードが必要なのだが、これがかなり高かった。(妻には、それ買うなら私にもと、同等額の指輪をねだられてしまった)


『ロスト ブレイブ オンライン 』(略してLBO)は、専用のハードを装着してスタートすると体が睡眠状態になり、はっきりとした夢を見るかのようにゲーム世界を体験することが出来る。


 すべての五感が再現されるわけではないが、かなりリアルな風景に、ログインした初日は感動しすぎてゲーム内で涙を流したほどだ。


 LBOは、よくあるMMORPGを体感型にしたものだ。

 ストーリーは、”魔王によって勇者が倒され人類は魔族に侵略を受け、支配領土をかなり減らした。

 そこで、冒険者ことプレイヤー達は、倒された勇者の代わりに立ち上がり、各町の魔族や魔物を討伐して治安を改善したり、他の冒険者を支援する生産者になったりして人類を復興させよ!”って内容だ。


 最終的には、メインイベントにより魔王討伐クエストも発生するようだが、すべて無視して趣味に走ってるプレイヤーも沢山いる。


 敵領地は魔王の配下達が支配しており、それぞれの特色によりその地区の魔族や魔物たちの特色も変化している。

 今のところは、魔王は最深部の魔王城から出てくる気配はなく、自ら侵略してくる様子はないようだ。


 LBOにはレベルの概念は無く、スキル熟練度によるスキル習得と、ランクUPによってステータスおよびスキル上限値を上げて強くなっていくシステムだ。


 スキルは熟練度を上げると、その系統のスキルを覚える事が出来る。

 戦士なら、剣スキルや斧スキルを上げて、武器攻撃スキルを習得したり、生産系なら、お約束の鍛冶スキルを上げて武器を作るスキルを覚えたりする。


 当然、スキル値が高いほど効果の高いスキルを覚えていくのだが、ランク毎に上限が決まっているので、スキル上げだけやっても高位スキルが覚えれないということだ。


 必然的に、最初はみんな武器を持ち、ランク上げを目指した。


 ランクは最初はGから始まり、F,E,D,C,B,A,Sと上がっていき、最高でSSとなる。

 SSSランクもシステム上存在するが、人間プレイヤーにはなることは不可能とされている。


 ランク上げる方法は大体決まっており、基本はギルドが発行するランクアップクエストを達成することが条件となる。


 ランクアップクエストは、所持しているスキルのひとつが最高値になった場合に発生し、戦闘職はそのランクでの最高位モンスター討伐となる。


 上位になればさらに条件による縛りが発生する。

 例えば、一人で倒すとかだ。


 ちなみに生産系専用のランクアップクエストも、素材が高位のモンスタードロップの生産品の高品質の作成だったりするので、基本は何かしらの戦闘手段をもたないといけない。(商売で稼いで他のプレイヤーから買う人もいるがほんの一部だけだ)


 ただ、この世界はマジックアイテムが、レアモンスターやボスモンスター、宝箱からしか入手出来ないため希少価値が高く、生産品がメイン装備になる人が殆どのため、生産職のランクアップには皆進んで協力している。


 協力すれば、優先的にいい装備を売ってもらえるため、持ちつ持たれつという感じだ。


 俺はというと、動物や魔物を手懐けて使役する調教師テイマーを選んだ。

 昔からペットを育てて育成するゲームが好きだったのでこれにしたのだが、これまたランクアップが厳しかった。


 テイマーのスキルを上げて発生するクエストなので、当然そのランク最高の魔物をテイムすることが条件なのだが、時間制限があるのだ。


 クエスト対象の魔物は探すこと自体も大変で、さらに他の職業と被ることが多いので余計に時間が掛かった。

 そのせいでテイマーをやっている人は、どんどん減っていったらしい。


 会社から帰ってきたら飯をかっ込み風呂は数分で済ませ、すぐさまゲームにログインする。

 そんな感じで毎日ログインしては、ゲーム世界生活をしていた。


 ───始めてから5ヶ月くらいした頃、ついに目指していたランクに到達した。


 おっし、やっとこのクエスト達成したわー。これまじで鬼クエストだったな。とかいいながら、1人で喜んでいた。


 え、仲間?いや、テイマーなので、人の仲間とかいらないし、決してぼっちではないですよ?と、誰に言ってるのか分からないいいわけを独り言でいいながら、調教済みの大型の白い鳥獣のような魔物を撫でた。

 クルルーって鳴いて可愛い。


 この子は"ファルコニア"という魔物で、顔はシロフクロウで体はライオンに大きな羽が生えたような感じで背中も羽毛で包まれている。

 とっても、もふもふしてて気持ちいい。


 一目見たときから欲しかったのだが、テイム難易度がAランク時で最高難易度なので、捕まえるのはかなりキツかった。


 ランクアップクエストの捕獲対象なのもあり、レア度も強さも段違い。

 捕まえるまでに何度死んだか分からない。


 そもそも見つけるのにも、かなり苦労した。


 それもあって、今一番のお気に入りだ。


 捕まえたファルコニアに、勝利の女神からニケと名付けてギルドにペット登録した。

 これで周りからペットであることが判るようになる。

 ニケの背中に乗り、空を駆け巡ると世界が見渡せた。


 よく作られた綺麗な景色が眼下に広がり、とにかく最高だった。



 ───それから1ヶ月くらいたった現在、いつものとおりニケに乗りながら狩りをしていた。

 ニケのスキルもあがっており、テイムした頃よりも強くなっている。


 さて、どこいこうかー?またスキルあげかなー。

 そんなことを考えていたとき、


 なんだ?まだ、夜にならないはず。

 というか、こんな変化の仕方は初めてだな。

 なんかのイベントかな~と思い、最近良く使っている近くの村へ降り立った。


 その時だった。


 突然、目の前が真っ赤に染まる。


 世界が砕け散り、光に吸い込まれいく。


───そして、そのまま俺は意識を失ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る