事件の原因

 俺とお義母さんは、ひとみがお風呂に入ってる間に今日起きた件を話していた。


 話していた中で、今回の事件で行き着いたある疑問。


 それは、俺自身があまりにも近くにいたからこそ気づいていないことだった。


 あの時、はぐれてしまった時に周りには女子はひとみ以外にもいるのは分かっていた。


 ひとみ自身も大人ぶってる訳でなく、品行方正な制服の着方をしているので、そんな子が痴漢に遭えば声を出せないと、相手は思っていたのかもしれない。


 当然、バレれば社会的にも抹殺されるのは相手も分かっているはずなのに、ひとみを狙った理由は一つしか思い浮かばなかった。


「もしかして、ひとみが他の男からしたら魅力的に見えたってことですか?」

「そうです、相手だってそれなりのリスクを背負ってる訳ですからどうでもいい子にする理由はないはずです」

「でも、だからと言って仕方ないって言うのは………」

「捉え方を間違えれば酷い言い方になるのは分かりますが、別な捉え方をすればいいのです」


 捉え方?なんだろう、俺がいつもみんなに言ってそうな事を言われる気がするが聞いて分かったのは、みんなこうゆう気持ちになっていたんだな。


 あ、そうゆうことか。


「その顔は理解できたようですね」

「完璧には言えませんし、自分から言うのも変な感じなので」

「ひとみを変えたのは一彦さんです。一彦さんがひとみを一流の女にしたってことです」


 い、一流の女って。お義母さん、少しは言い方を考えて!?


 要は、男だってどうでもいい女の子にする意味はない。


 リスクを払うなら高嶺の花を狙うということで、その男からしたらひとみは高嶺の花だったいうことだ。


 それは、彼氏もとい旦那からすれば名誉なことだが、それでひとみがいい女って思われるのは少々癪だが………


「お義母さん、ありがとうございます」

「いえいえ、一彦さんのことだから私が言わなくても分かったでしょうけど」

「いえ、今回は頭に血が上っていて全然ダメでした。解決方法だって最低な方法しか思いつきませんでした」

「今のひとみは自分の意思はハッキリと伝えていると思いますのでそれに応えるのが旦那の仕事です」


 えっと?お義母さま………いいの?


 それって容認してるけどいいのかな、許可が下りてしまったら俺は単なる狼に成り下がりますけど。


 正直、ひとみのお願い事は一つを除いてはずっと叶えるつもりでいる。


 例え、下にお義母さんが横に亨君がいてもそんなの何の意味を成さないのだと。


 なら、俺は重い腰を上げて奥様の為にするべきことをしようと立ち上がる。


「では、上で奥様を待つことにします」

「ひとみをお願いしますね。朝起きたらいつもの顔に戻ってることを期待してますから」

「はい」


 お義母さんとの会話を終えて、上に上がったひとみの部屋で俺はひとみが戻ってくるのを待っているとドアが開いて、湯上がりで火照った奥様がいて胸の鼓動が早くなった気がしたのでなく、早くなった。


 そして、俺はひとみの姿にびっくりしてしまったのだ。


 だって、今ひとみが着てるのは寝間着ではなく制服を着ているから、びっくりしない訳がないのだが、理由がいまいち理解できなかった。


 そんな奥様は、笑顔で俺にこんなことを言ってきた。


「えへへ、驚いてくれた?」

「これで驚かない方がおかしいだろ……それでなんで制服?まさか、今から学校に行くとか言わないよな?」

「もう、そんな訳ないでしょ~。意地悪な旦那様♪」


 上機嫌のまま、ひとみは俺の横に座って頭を俺の肩に乗せてこう語り出した。


「制服にしたのは、あのままでいたくなかったの。知らない男に触られた制服に袖を通すのが嫌だったの」

「そうか、制服のままでひとみを壊せってことでいいんだな?」

「うん、あなたで思いっきり私ごと汚して欲しいの」

「分かった、約束通りで俺で制服もひとみ自身もいっぱいにしてやるな」

「お願いします♪」

「でも、その前にちょっとだけ聞いてくれるか?」


 俺は、先ほどお義母さんと話していたことを少しだけ話すことにしたのだが、ひとみにとってはいい話ではないが自分を卑下してもらいたくないから。


「そういう時は大事な話だと思うからちゃんと聞くし、何でも答えるよ」

「あのさ、ひとみは痴漢に遭ってるときに怖い以外に思ったことはある?」


ひとみがなんて言うかは大体想像出来るが一応、確認の為だが。


「最初に思ったのは、なんで私なのかなって思ったよ。自分で言うとあなたは怒るかもしれないけど、私っていかにも普通だから遭うことなんてないって思ってた」

「俺もひとみが品行方正で制服の着方もちゃんとしてるから、そんなことされたら声が出せないのをいいことに手を出したのかと思ってたんだ」

「私もそれは思ったよ、実際声出せなかったし。けど、絶対に助けに来てくれるのは分かってたから♪」


 やっぱり、俺が思っていた通りではあったか。人にはいつも『格好いい』なんて言ってくる癖に自分のことは『普通』なんていうんだもんな。それじゃ、不公平だろ………


「さっきな、お義母さんと話しててさ俺は気づいてなかったんだ」

「気づいてなかった?」

「ひとみがいつの間にか他の男の目に留まるほどにいい女になってることに」

「いい女……私が!?」


 俺の言葉にひとみは混乱してるようだが話を続ける。


「ああ、手を出した奴はリスクを背負ってもいいから高嶺の花に触れたいって思ってしまったんだ」

「ちょ、ちょっとどうしたの?私は、高嶺の花なんかじゃないし、あなたがいればいいんだから」


 ひとみは、両手を左右に振り『あなた、なにを言ってるの!?』って感じであわあわ状態になっていた。


「俺にとっては、高嶺の花以上の存在なんだけどなひとみは。そうじゃなくて、今回は痴漢に遭って嫌な気持ちにはなってると思うけど今度遭ってしまったら、もっと気丈でいればいいってこと言いたんだ」

「それって、私に手を出したら『とんでもないことになるわよ』ってこと?」


 人には、見えない感覚と言うかオーラがあるとは思う。


 よくあるのは、見た目は普通なのに近寄っちゃダメな時があると思うがまさにそれである。


 それは『近づくな』ってオーラを放っているから近づかないのだ。


 思い返せば、俺が馬鹿なことをした時に洋太達が俺に近づけなかったのも『オーラ』だったらしいからな。


 なら、今回のことも今後そのようなことがあれば気丈且つ『触るな!』っていうオーラを出せば相手だってさすがに気づく。


「そうゆうことだ、手を出すってことはいい女ってことなんだと思う。実際、被害に遭ってるひとみにこれを言うのは申し訳ないと思ってるけど、自分を卑下にしてもらいたくないんだ」


 ひとみは、俺の言葉を聞いて『ふふ♪』っていきなり薄笑いをしていた。


「自分を卑下にしてる訳じゃないの、ただ、いくらいい女って言われても私はあなたしか欲しくないし、触られるのはあなた以外には指一本だって嫌なの。異性で女と見ていいのは志村一彦ただ1人だから」

「そんなのは、俺だってそうだよ。ひとみは俺のだけの物で他の男には絶対に触らせたくない」

「ありがとう、これで今度からはちゃんと対処できそう」

「本当にごめん、嫌な事を思い出せて」

「え?だって、同じことをしてくれるんだよね?」


 ふぇ?同じことって何を!?


 あ、察ししてしまった、要は俺が痴漢役をしろって言うことですね。


 うん、それはいいけどさ……頼むから相談の一つくらいは欲しいんだけどって思ったけど、これってさっきの勝負の要件なのかな?


 それ以外にない気がする。


「なぁ、もしかしてだけどそれ以上も望んでないか?」

「ふふ、それはあなたの想像にお任せするね♪ちゃんと汚してね」


 お風呂に長く入ってた所為で、のぼせてしまって頭が結構ポンコツ化してるなこれ。


 明日の朝、ぐったりしても文句は無しだからな?煽ったのは奥様だから責任はちゃんと取ってもらうからな。


「分かった、毎日電車に乗る時に今からすることを思い出させてやるからな」

「どこまでされちゃうのかな♪この痴漢さんは♪」

「さぁな、少なくとも手摺りに頑張ってしがみついてないと立ってられないくらいにはするつもりですが?」

「早く私を治療して。お願いせ・ん・せ・い♡」


 あれ、なんか色んなものが入り混じって滅茶苦茶になってますけど。


 これ、端から見たら絶対にやばいやつだし、見られたくもないし誰も見せてやるものか!


 ひとみのこの姿と声を表情を見ていいのは、俺以外はいないんだから。

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