突然ですが、ゲーム世界のキャラ達から命を狙われることになりました。

黒野さつき

STAGE1「なるほど、わからん」

朝、いつもの自分の部屋で目が覚めた。

もう朝か…と起き上がってみると、目の前には何故か、見知らぬ男が座っていた。


こんな状況に遭遇したら、普通の人はどうするだろうか?

おそらく大抵の人は、こう思うだろう。




「はー…これは夢だな」


目の前の見知らぬ男を見てそう思った自分は、どうやって夢から覚めようかな…と考えていると、


「いやいや待て待て。夢じゃないから。これ現実だから」


その見知らぬ男は、自分に向かってそう声をかけてきたのだ。


「夢じゃない………夢の中の住人が『夢じゃない』って言う事ほど、信用できるものはないよね…」


「…おまえさんが何を言ってるのか分からんが、とにかくこれは夢じゃないぞー。自分の頬つねってみ?」


この見知らぬ男に指示されるのは何となく癪だが、実際に自分の頬をつねってみる。


痛い。

痛みを感じる。

………夢じゃないのか。

いや、そもそも。

これだけ自分で考えることが出来て、自分の考え通りに手足も動いている…ということからも、夢じゃないことは明白だった。

まだ、頭は完全に起きていないらしい。


「痛いだろ?ほれ、夢じゃないだろ?んじゃ、夢じゃないと分かったところで…って、おまえさん、今度は何してんの?」


「警察呼ぶから」


夢じゃない…ということなら、これは不法侵入ということになる。

目の前の見知らぬ男は、ここまでで特に危害を加えてくる様子は無さそうに思えるが…それは自分には分からない。

とりあえず警察を呼ぼうと、布団のそばに置いてあったスマホを手に取り、緊急ダイヤルの110を押す。


「あー…うん、まあ、そうなるかー…」


男はどこか呆れたような、「面倒だな…」と言いたげな顔をしている。

そう言いたくなるのは、むしろこっちだというのに。これから初めて警察に厄介になるかもしれないのだから………。


『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません』


「………は?」


繋がらない。

何度警察に…110番にかけても、同じメッセージが流れるだけで、一向に警察には繋がらない。

そんな…そんなことがあるか?

緊急ダイヤルなのに?

繋がらないなんてことあるのか!?

こんなんで有事の際にはどうするんだ!?


「あー…無駄だと思うぞー。今おまえさんのスマホは、どこにも繋がらないようになってるはずだ。警察とかめんどくせえから…俺の『カミサマ特権』発動ー!…ってな」


「………はあ?」


警察に繋がらないのは自分の仕業だと、目の前に座っている見知らぬ男は言った。

あろうことか、自分を「神様」とも呼称している…。


「…マジで頭おかしいやつじゃん…」


「あーはいはい、俺が頭おかしいやつでも何でもいいから、とりあえず話聞いてくんない?話聞いてくんないと、俺いつまで経っても帰れないんだけど」


帰れない?この男の話を聞かなければ、こいつはいつまでもここに居座り続けるというのか?冗談じゃない!

………待てよ?

逆に言えば、話を聞きさえすれば、こいつは帰るということか?

だったら簡単だ!とっとと話を聞いて、こいつを帰らせよう!

セールスとかの話だったら、聞くだけ聞いて「はいさよなら」すればいいだけだ!


「…話聞くだけで良いんなら聞くんで、終わったらとっとと帰ってください」


「お!そうかそうか、それはありがたい。俺もとっとと話だけして帰りたいと思ってたんだよー!」


さっきとは打って変わって、途端に嬉しそうな表情になる男。

じゃあ話さなくていいから早く帰ってくれよ。

とは、いかないらしい…。


「うんうん、じゃあ今から説明するから、よーく聞いとけよー。2回も説明するのは面倒だからなー。1回で済ませたいからなー」


こっちだって1回で済ませたい。言われなくてもそうする。


「じゃあいくぞー………おめでとう!君は、『第262回、ゲームキャラ達の魔の手から逃げ切ろうゲーム』のプレイヤーに選ばれましたー!はい拍手ー!」


「……………はあ?」


なるほど、わからん。

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