*月猫*

よる

プロローグ

そこは

まだ

エジプトが二つの国とよばれいたころ。


緑に囲まれていた

ナイル川のほとり。


いろいろな神が

いろいろな場所でまつられていた。


その中の一つ。


ブバスティスの地に


ひんやり冷たい大理石でできた

月の神殿と

よばれる場所があった。


音楽と笑い声。

甘い匂い。


そこには

月の巫女 とか

月の天使 とよばれるものたちがくらしていた。


東西南北 それぞれに

新月、上弦の月、満月、下弦の月と

分けられた部屋があり


真ん中には

大きな噴水が

いつも清らかな水をたたえていた。


新月の部屋には

生まれた日が新月に祝福された巫女たち

満月の部屋には、、と

それぞれ

皆 毎日 自分がどの月に愛されているか

恩恵を受けているか 

感謝しながら過ごしていた。


月が

その周期の時には

そのグループが祈りをささげる。

7日ほど自分たちの月に向かって

踊りや歌を供える。


乙女たちの姿 以外に

何十匹という猫が

住んでいた。

もともと

猫を神の使いとして

大事にしていた場所だからだ。


顔かたちも性別も年齢も

いろいろな猫がいる中で

霊的なパワーをもつ猫として

乙女たちに

かわいがられていた

『夜』となづけられた猫。


左右の目の色がちがう。


昼と夜

満月と新月

光と闇 


まるですべてをみとおすように感じられていた。



そう、それが僕。


『夜』とよばれた猫。


清らかな乙女たちに

愛され

彼女たちを見守ってきた

僕の魂の生まれた

前世の話をしましょう。




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