蕗櫻

カラナ

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 自分に自信がなかった。偉大な父と、寛大な母のもとに生まれ、下ばかり向いて生きてきた。せめて父の名に恥じぬよう、母が誇れるようにと必死になってみても、ただ空回りを続けるだけで、何も成し遂げることは出来なかった。何も出来なかったのだ。何も…。愛する両親の最期でさえも。


 手が震えた、頭が真っ白になった。父に教わった剣術も、母に習った武術も、何一つ繰り出すことができないまま、何度も私を包んでくれたその胸を真っ赤に染めて両親は私を庇って倒れた。

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蕗櫻 カラナ @karana2525

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