第11話旅は道連れ世は人情
この動画を見てくれてるみんなこんにちは。もしくは、はじめまして。
オレが異世界実況ヒカリチャンネルの春野ヒカリだ。
今オレ……オレたちのパーティーは異世界エランディールにあるチャチャッカレっていう街を出て北にある廃坑を目指して歩いてるところ。
はじめて見てくれた人で 「はあ? 異世界だ? 何言ってるんだこいつ」 と思った人は初投稿からの動画をぜひ見てほしい。
さて、まずはパーティーメンバーを改めて紹介しよう。
銀髪のスレンダー美女はメルトリーゼという女神様。主に後方警戒と支援、回復担当だ。
「みなさんこんにちは。メルルと気軽に呼んでくださいね。いつもヒカリチャンネルを観ていただいてありがとうございます。まだあまり目立った活躍は出来ていませんが、皆さんに楽しんでいただけるよう頑張りますね」
続いては赤髪のダークエルフ。ちょっとしたトラブルに巻き込まれていたことをきっかけに知り合った爆乳さん。臨時メンバーのはずだったが、出来ればずっと一緒に冒険したいもんだ。
「あー、あー、え、もういいのか? わたしはミリゼットという冒険者だ。ヒカリ殿たちと縁あって同行させていただいていて、斥候兼前衛を務めている。正直ドウガというのはよくわからないが、応援してもらえると嬉しい。よろしく頼む」
最後がオレ。6属性の魔法を使って攻撃する後衛だ。いちおうパーティーリーダをやらせてもらってる。
オレの魔法で先制攻撃を加え、ミリゼットが突っ込みメルルが後方で状況判断し指示を出す。
そんな感じで今のところうまくパーティーは機能していて、今回の遠征はFランクからEランクへの昇格試験。
たったの1泊とはいえ、はじめての遠征だから楽しみ8割不安2割ってとこかな。
チャッチャカレの街を出て数時間。
特にトラブルに合うこともなくオレたちは順調に進んでいる。
森の中ではあるものの、道幅もそれなりに広く馬車もたまに見かけるくらいに交通量もある。
なんでも、チャッチャカレと北の海峡を渡った先の交易都市を結ぶ主要道路になっているそうで、目的地の鉱山のすぐ近くには宿場町もあるらしい。
それならここまでしっかりした準備はしてこなくてもいいんじゃないかとも思ったけど、それでも備えておくにこしたことはないとミリゼットに言われると、確かにそんなものかもしれないなとは思う。
「このペースならもう2時間ほども歩けば着くだろう。このあたりで休憩にしよう」
オレがパーティーリーダーではあるけど、こういった現場判断はミリゼットに任せている。
冒険者生活が長い彼女は、まだ新人で体力に不安があるオレの様子を見ながら的確な判断をしてくれるのがありがたい。
道路脇にある倒木を利用して作られた椅子に腰をおろす。
こういった休憩ポイントがあるのも、鉱山でジュエルタートルこと亀を倒して素材を持ち帰らないといけない冒険者のためらしい。
「お、あれヒカリじゃないか? おーい」
急に呼ばれて声のしたほうを見ると、冒険者登録前にいろはを教えてもらったタックとベティが手を振っていた。
「久しぶりね。今日はこのあたりで狩り?」
「いえ、北の鉱山でランクアップ試験なんです」
「お、もう受けるのか? ああ、ダークエルフの姉さんもいるなら余裕だな」
「ん、2人とも知り合いなのか?」
「知り合いというほどじゃないが、同じ街のギルドにいるんだ。顔くらい知ってるさ」
「Dランクのタック殿にベティ殿、久しぶりだな。お互い壮健で何よりだ」
「そうですね。あの、ミリゼットさん。あの時は……その……ごめんなさい」
「いや、気にしないでくれ。魔力のないわたしを断るのは当然といえば当然のことだからな」
「いえ、断ったのは魔力ではなくて……その……」
ベティの視線がミリゼットの一部からタックに移り、ふぅ……とため息をついた。
なるほど、そういうことらしい。
メルルもミリゼットも分かったのか苦笑していたが、
「まったくよー、オレはいいと思ったんだぜ? あんたをパーティに入れたってさ」
と、タックが口にしていたのがただただ哀れだった。
「オレたちも亀を狩ってきたんだぜ」
タックが担いでいた袋の中にあったのは、1メートルほどの金属質の甲羅。亀甲模様が入っていることを考えても、これがジュエルタートルの甲羅で間違いなさそうだ。
「これは何タートルだ?」
「アイアンタートルさ。レベル的にはヒカリたちが倒すカッパータートルの2つ3つ上ってとこかな」
「触ってみてもいいか?」
「おう、いいぞ」
甲羅は擦り傷があるが、戦闘でついたような傷は見当たらない。たぶん、亀が生活しているあいだに自然についた傷なんだろう。軽く叩いてみると、確かに金属質な音がして冷んやりとしていた。
ミリゼットはDランク程度の冒険者の攻撃では甲羅は傷つけられないって言ってたしな。
「どうやって倒したんだ?」
「悪いがそいつは秘密だな。お前も冒険者なんだ。ライバルに簡単に情報はやれねえよ」
「そうか。いや、そうだよな。悪い忘れてくれ」
「おう!」
ニカっと笑いながら親指をグッと立ててるタックはとても爽やかだ。
「ヒカリ殿、大丈夫だ。いつもの用に立ち回ればカッパータートルごときわけなどないさ」
ニカっと笑うミリゼットの顔は自信に満ち溢れていた。
2人と別れて夕方にはまだ少し早いくらいの時間には鉱山にほど近い宿場町に到着。
結局戦闘は1回もなかったが、もう足腰はガタガタだ。
思い荷物を持っての旅程は思いのほかしんどかった。
あれ、まてよ?
帰りはこれに亀の甲羅やらの素材を持ち帰らないといけないんだよな?
…………。
よし、最初にもらう能力はストレージがいいな、うん。
ここには何度も来ているというミリゼットおすすめの宿に泊まる。
男女別々2部屋を希望したが、女性陣2人が節約のためですと言い張って3人で1部屋になった。
オレは気まずくて仕方がないのに、メルルもミリゼットも嬉しそうなのはなんなんだ。
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