第2話エランディールの冒険者
この動画を見てくれているみんな、はじめまして。もしくは、お久しぶり。
以前他のチャンネルでマイチューバーをやっていたから知っている人もいるかもしれないな。
今回、わけあって心機一転新しくチャンネルを開設してやっていくことになったんだ。
またみんなに楽しんでもらえるように頑張るから、面白いと思ってくれたらチャンネル登録よろしく頼むな。
さて、俺が今いる場所がどこだか分かる人はいるかな?
ヒント1
道路はご覧の通り未舗装だ。
街中なら石畳が敷いてあるところもあるが、一歩外に出たら大都市近郊以外はどこもこんな感じらしいぞ。
ヒント2
あたりを見渡しても高いビルなんかは見つからない。
そのかわりにさっき額から角が生えているウサギを見つけたな。
お、あっちには角オオカミの群れがいるな。
ヒント3
これは大ヒントだ。ほらあそこ、革鎧を着た戦士や、杖を持ってローブを着込んだお姉さんが角オオカミのに向かっていったぞ。
これだけヒントを出せば分かるよな?
そう。ここは異世界エランディール。
まあすぐには信じられないかもしれないけど、本当なんだなこれが。
思い返せば俺がここに来てからもう1か月近くになる。
右も左も分からない異世界に行くことになって、どれだけ苦労したことか⋯⋯。
ただ、エランディールに来たのが俺1人きりでなかったたのはせめてもの救いだったかな。
あと、異世界といえばお約束のチート能力にも助けられ⋯⋯てはいないな。
いや、実はまだ使いこなせていないんだ。
誰だって剣と魔法の世界に来て、自分に魔法が使えるとなったら試し打ちしたくなるもんだよな?俺だけじゃないよな?
はい、やりすぎました。手加減が分からずあたり一面は元風景が分からないほどの阿鼻叫喚の地獄絵図に⋯⋯。
ま、まあその話はまた機会があればすると思う。予定は未定だけどな。
「ヒカリさん、あの方達、角オオカミと戦うようですよ」
声まで気品溢れるこの女性が、俺と一緒にやってきたメルトリーゼ。俺はメルルと呼んでいる。
銀色の髪を伸ばし、しなやかですらっと長い手足に整った顔立ち。控えめな胸以外は抜群のプロポーション。
彼氏彼女いない歴=年齢の視聴者諸君はもちろん、リア充とかいう希少な連中だって老若男女関係なく目が釘付けになるはずさ。
何しろ彼女は、女神なんだからな。
「ヒカリさん」
おっと、とりあえず彼女のことは置いておいてこっちに集中するか。
「はあっ!」
戦士が剣を構え、声を張り上げ角オオカミと対峙し、その後ろに隠れるように魔法使いのお姉さんが位置取りをしている。
「タック、右から2匹くるわ!」
「く、左からもだ。右の2匹はベティーに任せた」
「わかったわ。任せて」
角オオカミと戦っている彼らは、俺たちが雇った冒険者だ。
チャンネル登録を増やして再生回数を増やす方法はいろいろあるが、俺たちは冒険者として様々な冒険をしていくことを基本方針とすることにした。
とはいえ、俺は魔力だけは有り余ってているがいまだに制御がうまくいかない。しかも肉体的には地球にいた頃のままなので、体力や身体能力はこちらの世界の平均にも満たないだろうと考えた。
この1か月、俺たちはまずは生活基盤を固めることとエランディールの常識を学ぶことを目的として過ごしてきた。
幸いというかなんというか、この世界の言葉は読み書きも含めて理解できるので助かったな。
ちなみに、今はナーロッパ大陸の共通語で話しているんだけど、この動画を見てくれている視聴者の諸君にはそれぞれの国の言葉で聞こえているはずだ。
うまく聞き取れていない国の人がいたら、コメント欄に書いておいてくれたらメルルに頼んで調整してもらうからよろしくな。
ああ、念のため概要欄にも書いておくか。
お金に関しては、俺が今までマイチューバーとして稼いだ分だけは、こちらの世界の通貨に両替されて持ってくることが出来ていた。
あまりたいした金額ではないけど、無一文で放り出されたり、魔王討伐に王命で向かうのに雀の涙ほどの支度金しか渡されない勇者に比べたらずっとましだと思う。
ちなみにこの動画にも広告は付くはずで、それが俺たちの活動資金にもなるから本っ当にチャンネル登録まだの人はポチっと宜しくお願いします。
まあ、そんなこんなで冒険者の仕事と生活ぶりを見学することをギルドに依頼した結果、彼らと同行することになったわけだ。
「土の精霊ノームよ、我が魔力と引き換えにその力を示せ【アースショット】!!」
「うらっしゃああ! 次! そいやあぁ!」
魔法使いが呪文を唱えると、テニスボールサイズの土の塊が角オオカミ目掛けて撃ち出される。
一撃で倒し切るほどの威力は無いようだが、それでも当たった音が「ボキッ」と聞こえることから、かなりの威力はあるらしい。
1匹の足が折れ、もう1匹の角オオカミが魔法で怯んだところへ追撃のアースショットが命中する。
「ベティーよくやった。後は任せろ」
自分の受け持ちの2頭を瞬殺したタックが魔法のダメージで動きが悪くなっている角オオカミに飛びかかり、あっという間にその息の根を止めた。
「大丈夫だったか? 怪我はないかヒカリ、メルル」
肩で息をしているタックが聞いてくる。
「ええ、大丈夫です。それにしても、さすがDランク冒険者ですね」
俺のかわりにメルルが答えると、照れたように頭をかきながら「いやあそれほどでも」と答えるタックにベティーが「調子に乗らないで、しっかりまわりの警戒は続けなさい!」と怒られていた。
うん、どうやらヒエラルキー的にはベティーのほうが上らしいな。
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