Turn250.賢者『新たな敵の手掛かり』

 神からの啓示を承り、ニュウは顔を上げた。

 そんなニュウに気が付いたお姫様が、不安げに視線を向けてきた。

「どうでしたか……?」

 ニュウはお姫様に頷き返した。

「……『噴水』です。それと……『ホトトギス』ですね」

「ホトトギス……? あの鳥のことですか?」

 ニュウが口にした言葉に、お姫様が首を傾げる。

「恐らくは……。『噴水』……『お花』『ホトトギス』……これらのキーワードが繋がる場所に、私たちの目的の人物は居るようです」

 お姫様は次に、テラへと視線を送った。

「テラ様……」

 お姫様の意図を察したらしいテラが、すぐさま台の 上に地図を広げた。

 六つの大陸に八つの島──世界地図が記されたその紙に、みんなの視線が集まる。

「噴水があるのは……」

 テラは頭を悩ませながら、地図のあちこちにインクで印をつけていく。

 しかし、候補地として五大陸四島──五十箇所以上の町や村が挙がり、まだまだ特定するには難しい。

「剣聖様たちが今、いらっしゃるのは?」

 お姫様に問われ、テラは西の大陸を指差した。

「ここのオールゴーの町ですね。……ただ、周辺を調査していると思いますので、もう移動しているかもしれませんが……」

「その近くで噴水があるのは……?」

 お姫様が、地図からオールゴーの町を見付け、その周辺に視線を走らせる。

──その近くにある、噴水が設置されている町は一カ所であった。

「ストルディアの町ですね。他の場所は、海を渡るか大陸を端まで行くかしかありませんから」

 お姫様は頷いた。

「それでしたら、剣聖様たちをこちらの調査に……。もしや、こちらに勇者様を苦しめる魔物が潜んでいるかもしれませんから」

「ええ。しかし……」

 テラは一旦頷きこそしたが、不安に思うこともあるらしい。アルギバーたちにそのことを伝えたいのは山々であったが、なにせ連絡手段が何もない。

 使いの者を送るにしても、そもそもアルギバーたちがどこに居るのか分からなかった。


「……お困りのようですね」

 礼拝堂に入って来たのは、ロディッツィオ・ノーキンであった。

「それなら、僕がどうにかしてみましょう」

 そう言いながら、ロディッツィオは自身の肩に止まっている鳩を指で優しく撫でた。

 なんの能力も持たないロディッツィオだが唯一、動物と心を通わせることだけは出来る。伝書鳩もロディッツィオの目的を果たすために居場所の分からないアルギバーたちにメッセージを届けてくれることであろう。

「それならば、ロディッツィオ様……宜しくお願いします」

 お姫様はストルディアの町に向かうように命令を紙に綴り、それをロディッツィオへと差し出した。

 ロディッツィオはそれを伝書鳩の脚に結び付けると、鳩を手に移動させた。

「……さぁ、頼むよ。使令を届けてくれ」

──クルックゥー!


 鳩は一鳴きすると翼を羽ばたかせ、開かれた窓から大空へと飛び立って行った。

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