Turn223.勇者『聖愛からのお願い』

「あの、お願いがあるのだけれど……」

 余程精神を病んでいるようで、珍しく聖愛が頼みごとを口にして来た。こういう時は気丈に振る舞いそうな聖愛なのに、それ程に気が滅入っているのだろう。

「放課後に紫亜とスポーツラウンドに行く約束をしているのだけれど、あなたも来てくれないかしら……」

──ボディーガード兼任ということらしい。

 スポーツラウンドは、ゲームやカラオケは勿論のこと、野球や釣りなど様々なスポーツも遊べるという巨大娯楽施設である。

 しかし、なぜこのタイミングで遊びに行こうと言うのか。時期が時期なだけに、家の中でジッとしておいた方が良い気もするが──。

「紫亜が変に気を利かせてくれちゃってね……。気持ちが沈んでるから体を動かして発散しようって……善意だから、何だか断りにくくて……」

──まぁ、そうかもしれないが、それで襲われでもしたら元も子もないような気もするが……。

「貴方だって、次に狙われるかもしれないのよね? どっちが狙われるか、実際のところ、分からないわ。そらなら二人で同じところに居た方が、襲われた時に対処しやすいんじゃないかしら」

「それはまぁ、そうかもしれないけど……」

 それでも、引き籠もることが最良のように思えるが──要は、聖愛は友達との約束も大事にしたいのである。

「まぁ、そういうことなら任せてよ。もしも、誰かが襲ってきたとしても返り討ちにしてやるから。君のことは絶対に守るよ」

 散々に聖愛を苦しめ、不知火に怪我を負わせた危険人物に、これ以上好き勝手はさせない。

 僕は聖愛に頷き返し、腕を鳴らすのであった。

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