Episode002.魔王『勇者とお姫様』
勇者の前に魔王が現れたのは、まだ冒険も序盤であった。功績を積み重ねていき、ようやく『勇者』という称号が相応しくなった彼のところに、ラスボスである魔王が出向いて来たのだ。
「勇者様……」
勇者を慕うお姫様は、不安げな瞳を勇者へと向けた。
「君は下がっていて。僕が、どうにかするから」
「でも、私は怖いのです。勇者様が、どこかに行ってしまわれないかと……」
恐怖に震えるお姫様の肩を勇者は抱いて、勇気付けた。
「大丈夫、必ず約束するよ。僕はずっと君の側に居るから……。こうして、君の側で、君のことを守り続けるから」
「勇者様……」
お姫様は勇者に体を預け、その手の中で目を瞑ったものだ。
とても温かく──力強く──大きく──頼りになった。
「私も、勇者様のことを信じておりますわ」
「ありがとう」
お姫様から手を離し、笑顔を浮かべる勇者──。
柔和な表情から一転し、勇者は険しい表情となる。
立ちはだかる敵──人々を苦しめる諸悪の根源である魔王を倒すため、剣を握り締めた。
「行くぞ、魔王っ!」
そして、勇敢にも魔王を成敗すべく駆け出したのであった。
──しかし、それが勇者とお姫様が交した最後の言葉となってしまうのであった。
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