Turn195.元賢者『最後の一手』

「……きたっ!」

 ようやく何かを掴んだ──。

 鏡から取り出したそれは──三つ又の槍だ。

 ニュウは握ったその三叉の槍に、魔力をどんどん吸い取られていくような感覚がした。

 その分、この武器もまた強力であるのだろう。

 いくら魔力を吸い取られようとも──命が削られようとも、不死身の軍勢を殲滅するパワーを得られるのなら構わない。

 ニュウはなんの疑問を抱くこともなく、その三叉の槍に自身の魔力を与え続けた。

──やがて、三叉の槍は禍々しい邪悪なオーラを発する。まるで、ニュウから全ての力を吸い上げたようになる。


「いっけぇえええぇええぇっ!」

 まるでそうやって扱うことを初めから知っていたかのように、ニュウは天に向かって三叉の槍を投げた。

 三叉の槍はニュウの投擲力とは別に、自然と天へとのぼっていった。雲を掻き分け、宇宙へと消えていってしまう。


「これで……どうかしら……」

 ニュウはバタリと地面に倒れた。

 もうこれ以上、一歩も動くことはできなかった。

 みんなを守ると言ったのに、無念なことである。


 薄れ行く意識の中で、最後にニュウは見た──。

 空が神々しく輝き、強烈な光を発した。

 天から巨大な光の槍が、地上に向かって落下してきた。

 巨大な天地の槍が地面に突き刺さると、周囲に光の爆発を巻き起こした。

 激しい衝撃波が全てのものを飲み込み、不死の軍勢たちを薙ぎ倒していく──。


 眩しさにニュウは目を閉じ──そのまま意識を失ってしまった。

 そして、世界の時は動き出したのだった。

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