Turn186.勇者『妄想の説明』
「これは、最強無敵砲台バズーカ王だよ!」
僕はメモ帳に描いた砲台の絵を聖愛へと見せてやる。途端に、聖愛は呆れたような表情になって目を瞬いた。
「なによ、そのネーミングセンス……」
「名前にはあんまり時間を掛けてないから、仕方ないんだよ。……それより、この砲台は凄いんだ。一撃で山をも吹き飛ばし、大地を抉るほどの威力があるんだ!」
「へ、へぇ……」
僕は唾を飛ばしながら意気揚々と語って聞かせたが、勢いに聖愛は引いてしまっているようであった。──それでも、僕は何故だか、それを語らずには居られない。
聖愛が困ったようになっているのは重々承知しているが、僕はひたすらに口を動かした。
「エネルギーをチャージした時間の長さでね、その範囲も威力も変わるのさ。多勢を相手にするなら、結構なチャージ時間が必要になるね。……まぁ、一撃目はサービスで最大出力までチャージしてあるから、ぶっ放すだけだけどね!」
「お待たせ致しました」
一通り説明し終えたところで、老婆が注文していた飲み物を運んできてくれた。
「ありがとう御座います」
老婆がテーブルに飲み物を置いてくれたので、聖愛は丁寧に会釈を返した。
「威力は甚大だからね。仲間が周囲に居る時には巻き込んでしまうから、撃つ方向を考えないとね!」
──次から次へと頭の中に浮かぶ設定が、口を出て止められなかった。
聖愛は飲み物に口をつけ、冷ややかな眼差しを僕へと向けてきた。完全に置いてきぼり状態にしてしまっている。
それでも僕はお構いなしに、暴走した口を止めることができず説明を続ける他なかった──。
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