Turn171.魔王軍元賢者『人間の敵は人間』

 お姫様たちは砦の中に逃げ込んだところで、不死身の軍勢はようやくその後に追い付いてきた。

 そんな不死身の軍勢を苛立ったように見詰める少女の影が一つ──。

「圧倒的な力には、何人も敵うことはできない……」

──アァアァアァアアッ!

 砦に詰め寄る不死の軍勢たち──それを阻むようにブラックシャドウナイトが立ちはだかり、次々にアンデット共を蹴散らしていく。

 しかし、相手の膨大な数に太刀打ちすることが出来ず、徐々にブラックシャドウナイトたちはアンデットの波に飲まれていく。

「……だというのに、何をしているのよ。いつまで時間を掛けているというの……」

 ニュウ・レンリィは歯噛みをしていた。


 不死身の軍勢がお姫様たちを追ってからどれ程の時間が経過しただろう。戦力の差は歴然であり、簡単に手を下せそうなのもである。

 ところが城からは逃げられ、魔の森を抜け──ついには砦の中にまで逃げ込まれてしまった。それなのに、未だに兵士一人の首すら打ち取ることが出来ていない。


「……どういうつもりなの? ……やらないというのなら、私は私で動かさせてもらうわ」

 そう呟きながらニュウは砦に向かって歩き始めた。


 かつてお姫様の護衛の一人として魔王に立ち向かった賢者ニュウ・レンリィが——今度は魔王側の一人として人間たちに牙を剥くのであった。

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