Turn69.勇者『気が付けば』

「おーい! 大丈夫かぁい?」

「……えっ!?」

我に返った僕の目の前には、不知火の顔があった。その後ろには伊達村の姿もあり──彼らは横たわる僕の顔を覗き込んでいた。

「こんなところで寝てると虫に食われるよ。本当に、食べられそうだけね……」

不知火がケラケラと白い歯を見せて笑った。

──僕は戯けたそんな不知火の肩に手を置き、切迫しながら叫んだ。

「あ……あの獣は、退治できたのか!?」

「え、獣? なにそれ? 熊でも出たのかい?」

きょとんとした表情で不知火が尋ね返してくる。


──いや、今はそんなことよりも……。もっと大切なことがあった。

「せ、聖愛が……大変なんだ!」

「えっ! 聖愛さんが……? なに、どうしたの?」

不知火と伊達村は神妙な顔付きになって、目を合わせたのだった。

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