Turn58.勇者『眠りの夢』
高架線を新幹線が猛スピードで走り抜けていく。
待ち合わせの駅から電車を乗り継いだ僕らは新幹線に乗っていた。
二席ずつ前後に分かれ、それぞれの席に腰掛ける。僕の隣には不知火が座っていたが、他の乗客も居るので余り会話を続けているのも憚られた。
不知火は既にヘッドホンを耳にはめ、持参した携帯ゲーム機に没頭していた。
僕は退屈しのぎに、窓の外を眺めることにした。
ビルや民家──町から山へ、景色がどんどんと移り変わっていく。
──後、どれくらいで目的地につくのかな?
などと考えていたところ、不意に僕の視界がブラックアウトする。
『……えっ?』
咄嗟に口を開いたが声は出なかった。
確かにそれまでは新幹線の座席に座っていたはずなのに──いつの間にか真っ暗な空間の中に、僕の体は投げ出されていた。
上も下も前も後ろもない、真っ暗な闇──。
手足を動かすが、動いているのかさえ分からない。
ふと、前方に眩い光が見えた。
はじめは小さな米粒みたいな光だったが、次第に大きくなっていく。
光が近付いてきているのか──あるいは、僕の方から近付いていっているのかさえ不明であるが、その強い光は僕の目の前までやって来た。
──手を伸ばせば届きそうだ。
僕はゆっくりとその光に手を伸ばした。
──バチンッ!
ところが、その手は唐突に弾かれた。
何か邪悪な力──電撃のようなものに阻まれ、光を目前にして僕の体は後方に吹き飛んだ。
すぐ側まで迫っていた光は、また遠くへと徐々に離れていってしまうのだった。
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