Chapter1【次元の勇者様】
Turn001.勇者『気になる教室』
廊下に佇む僕の視線の先には、鍵の締まった扉があった。
『理科室』──という教室札が天井近くに設置されたその部屋に僕は心惹かれていた。
何故だろう──?
僕はその扉を開けたくて仕方なかった。それも、今すぐにでも──時間が経つのが惜しい程に、扉を開けたくて開けたくて堪らない。
その理由は、僕自身にも分からなかった。
別にこの教室に用事があるわけでもないし、そこに興味があるわけでもない──。
それに、鍵を開けるためにはわざわざ階段を下りて職員室にまで行かなければならないので面倒だ。
鍵を管理する教科担当の先生になんと事情を説明したものか。
正当な理由がある訳でもないので、そう易易と鍵を貸してはくれないだろう。白い目で見られるだけだ。
ことだろう。
そんな面倒臭いことを単なる気まぐれなんぞでやりたくはない。
僕は自身の衝動を抑えて、先を急ごうとした──。
──でも、胸騒ぎがしてならなかった。虫の知らせという奴だろうか?
もしも今この場でここの扉を開けなければ、僕は一生後悔することになるだろう──だから、何がなんでもこの扉を開けなければならない。
そんな思いが湧き上がってくる。
「……しゃーないか……」
直感というか──自分の感覚を信じてみようじゃないか。
面倒に思いつつも、僕は鍵を取りに職員室へと向かうことにした。
──まぁ、職員室に行くことが面倒といっても、校舎がそこまで広いわけでもない。
数分も掛からず、僕は職員室の前に辿り着いた。扉の前で足を止め、ひと呼吸置く。──気軽に入れるような場所ではないのだ。
どうにも緊張してしまって、些か心の準備が必要になった。
「失礼します!」
僕は呼吸を整えると、職員室の中へ足を踏み入れたのであった。
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