ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった

太伴 公建

第1章  裸の女性、猫、そして死神

第1話 早くおいで

 俺、富士ふじ 翔悟しょうごは、ぼっちの高校一年生である。


 クラス内ではノリの悪い陰キャとして、クラスメートと話すこともなく日々を過ごしている。

 自慢じゃないが丸一日、誰とも喋らなかったなんてザラだし、額を覆う長い前髪のせいで最近は人と目を合わせた記憶さえない。

 特にここ一年ほどは出来るだけ人と関わらないよう息をひそめ、世界の隅で俺は生きていた。




 そんな典型的ぼっちである俺の目の前に、いま、一糸まとわぬ姿でベッドに横たわっている女性がいる。




 少しブラウンがかった巻き髪に透き通るような肌の白さの彼女は、いわゆる「ゆるふわ系女子」と言えばいいんだろうか。

 街を歩いていて人が振り返るような美人ではないけれど、微笑むと目が細くなって頬にエクボが浮かぶのが特徴の、とても可愛らしい女性だ。

 彼女を初めて見たときはそんな印象だったから、二十五歳という年の割に、彼女からは「歳相応の色気」なんて微塵も感じなかった。


 でも、西洋画の裸婦像のように右半身を下にし、こちらを向いてベッドに全裸で横たわる彼女は、さっきまでのスーツ姿からは想像つかなかったほど巨乳だし、それでいて腰はしっかりくびれていたし、そこから伸びる腰から下のラインも美しい曲線を描いていた。

 その姿は「歳相応の色気」なんて陳腐な言葉を通り越し、もう「神々しい」とさえ言っていいレベルだった。



 学校ではクラスメートのエロ話にも全く興味がないような顔をしているが、俺だって人並みにエロいことには関心がある。

 抑えきれない性的欲望リビドーのもと、女性の裸だって見たこともある(もちろんネットやエロ本で、だけど)。


 でも今、俺の目の前に裸でいる彼女の身体は、そんなヌードグラビアを飾る女性たちに勝るとも劣らないほど綺麗だった。

 リアルな女性の身体とは、こんなにも美しくてエロいのか、と驚愕した。



 彼女の名は狩野かのう くるみ。

 俺たちは、たかだか二時間ほど前に初めて出会っただけの仲だ。



 そんな俺たちがこれからセックスをするなんて、一体誰が想像出来ただろう?




「早くおいで、翔悟くん♡」


 俺をベッドへと誘うくるみの声が、俺を再び現実へと引き戻す。

 間接照明で薄暗く照らされた彼女の部屋の中で、彼女の声はとてもなまめかしく聞こえた。


「クぁっ」


 カッコつけて、ああ、と応えるつもりが、カラッカラに渇いた俺の喉から出たのは返事にもならない音の塊だった。


「フフッ♡ なあに? いま、なんて言ったの?」


「ンッ、ン……。い、いや、な、何でもない……」


 くるみが可愛らしく笑いかけてきたので、俺は咳払いをして誤魔化す。

 あー、恥ずかしい。


「え? この人、ガッチガチに緊張してんじゃんwww 童貞かしら、ヤダーwww」


なんて思われたりしたら軽く死ねる。

 できれば緊張などしてないように見せたい。


 でもガッチガチに緊張しちゃってるのだ。

 だって童貞だから。


 そして、俺の下半身の相棒はもっとガッチガチだ。

 まっすぐに立ってるのも辛いぐらいガッチガチだ。

 いや、まっすぐにはってるんだけどね。



 ――って、くっだらねぇ!

 いったい何を考えているんだ!



 普段とあまりにもかけ離れたイベントに遭遇したせいで、頭が大パニックに陥っているぞ。

 一度、深呼吸をして落ち着こう。



 俺は目を閉じ、小さく細く、それでいて深く呼吸をした。

 頭の中で、細かい粒子のような空気の泡をイメージする。

 口から取り込まれたその粒たちが、肺を経由しながら血管を通じて胴体や手指や足の先まで到達し、再び口まで戻ってきて吐き出されるイメージをする。

 これを、ゆっくり三回繰り返す。

 昔からどれだけ悲しいことがあっても、どれだけ怒ることがあっても、この深呼吸さえすればひとまず気分が鎮まるのが俺の特技だ。



 ……ふう。

 ほらな。

 深呼吸をしたおかげで落ち着いた。



 そして、ゆっくりと見開いた俺の目に再び、くるみの裸体が飛び込んできた。



 アカーーーン!



 俺の心の叫び(なぜか関西弁)が脳内に響き渡った直後、俺の相棒はこれ以上背伸びできないほどMAX状態になってしまった。

 頭の中で「ボキ勃起ーーーン!」とかいう擬音が鳴り響いたほどだ。

 俺の相棒は、もうトランクスを突き破らんとするかの如く勃っていた。



 そ、そりゃ、そうだよな……。

 どれだけ落ち着こうが、女性の全裸こんなもんを見せつけられたら健康な男子高校生はこうなるに決まってるって……。



 俺はピサの斜塔よろしく、トランクス越しにそそり立った自分の相棒を見て、ため息をつく。

 コイツとは長い付き合いだけど、ここまで元気になったのはさすがに覚えがない。

 血液が集まり過ぎて、貧血でも起こしちゃうんじゃないかと心配になるほどだ。


 俺の性欲は、いよいよ爆発寸前のところまで来ていた。

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