第2話 ゴジラって概念あるんですね

 「もう!やっと起きたのね、アシュリー。」


 …? どういうことだ……とはならない。今の私は実質30代後半の思考の持ち主。昔小学生の頃、先生の言っていることを理解できずチームから追い出されたあの頃とは違う。

すんなり現状を理解できた。なるほど、デッドボールを境に意識が別の世界に飛んで…もしくは意識だけが飛び出てたまたまこの少女に乗り移って……うん、難しいことは分からん⭐︎


 「アシュリー!聞いているの?朝ごはんできてるわよ、早く来なさい!」


 「あ、すいません、行きます。」


 「ん?あなたなんで敬語なの?」


 「あ、ごめん、行く」


 言葉も通じるし敬語の概念もある。どうやら私たちは親子かな? 

リビングに行くとそこには父親らしき人物がいた。他には誰もいない…一人っ子かな?

父親らしき人は私に目もくれず朝食をとっていた。


 「あ、おはようございます。」と挨拶してみる。

 ピクッと体を震わせ私を見たがそれ以上何もなかった。 朝食を食べると…


 「そういえば今日のアシュリーの入学式にはパパもママも行くからね。」


 疑問に思う点がいくつかあった。入学式?私の?小学校?中学校?あとこの人たちは父親、母親でビンゴだ。


 「まあ、普通に行ってくるよ。」動揺はしない。


 「あら?緊張してると思ったのに案外飄々としているのね。」


 そうしなければならないのであれば一応そうしておこう。体の大きさからしてまだ学校に行かなければならない年齢であることは確かだからね。  

 身支度を済ませてから、ランドセルをからい……ランドセルということは…そういうことでしょう。了解しました。


 「では、行ってきます。」


 「何言ってるの?一緒に行くのよ!」


 「あ、うん。」



 入学式は滞りなく終わり、帰ろうとしていたらグラウンドの方から懐かしいあの音が聞こえてきた。ボールを打つ金属音だ。

 親と別れたらグラウンドの方に自然と足が動いていた。野球少年でありがちな掛け声が聞こえてきて、そこには私のよく知っている光景が広がっていた。


 「野球あるんだ…」


 これは参加せずにはいられない!また一から小学生をやるだなんて退屈すぎる!どうせなら野球にでもまた打ち込んでみよう!そう思い立った私は顧問らしき人物に声をかけた。


 「野球やりたいんですけど…」


 「ん…?君、新入生だよね?うち部活は4年生からなんだ。」


 「どうしてですか?」


 「体格差があるからね。特にスポーツはある程度大きくなるまでは認めていないんだよ。」


 そうきたか……転生前はこうはいかなかったんだけどな…昔は体の大きさ故に逆サバ読みしかされていなかったのにな。


 「とりあえず君はまだ無理だよ、帰りなさい。」


 こうなったら熱があることだけでも伝えるべきだな…私はその日帰らず部活が終わるまでずっとそこに居続けた。

 そして、次の日もまた次の日も…それはまるで練習の邪魔になると陰口を言われそれでも素知らぬ顔をして練習に通うも何もさせてもらえず立っていただけのあの時みたいに…。


 だが!ここからは違う展開に変わったのだ。呆れた顧問が私にティーバッティングの体験くらいさせてやると申し出てきたのだ!

バットを持ち構える態勢に入った。元々私はスイングスピードに自信があり、ボールを手元まで引きつけて一気に叩く手法をとっていたが今回はボールは止まっている。何も考えず取り敢えずインパクトを残すために遠くに飛ばそう。

 そう心に決めた次の瞬間、バットを物凄い勢いで振りボールを打った。すると目の前に置いてあった遠くにボールがいかないようにするためのネットを突き破りそしてグラウンドを囲っていたネットまでも突き破ったいき学校の外に出てしまい近くの民家に直撃したのだ。しかしそれだけに留まらず建て付けが悪かったのか、それとも家の急所に当たったのか家の一部が崩れ落ち、それが連鎖に連鎖を重ねなんと、倒壊してしまった。

 周りにいた部員たちは手を止めその光景をただ眺めているだけだった。やがて部員たちこう呟いた。


 「ゴジラだ…」  

 

 「家を壊したぞ…」 

 

 「リアルゴジラだ…」


 そこで私は思った……





 「あ、ゴジラって概念この世界にあるんですね。」


 ゴジラ伝説の幕開けだ。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る