大洋連邦建国記

参十陸

序章

本題に入る前に、まずはこの世界に大きな変革をもたらした二つの変革について説明する必要がある。


一つは高度なAI技術による革新である。

2017年ころから急激に成長したAI技術はまず2022年に気象観測、防犯対策、災害監視、離島には領土監視などを目的とした地域AIを全自治体や離島に設置され、AI同士が相互にコミュニケーションをとり、状況予測を立てるシステムを確立。

更には2023年、ついに生まれたばかりの子供にサポートAIを埋め込み、その子と共に成長し、生活全般をサポートするというAI技術を確立。

保守的な日本もAI後進国になることを恐れ、2024年に、5人の新生児にサポートAIを埋め込むテストを行い、2031年には一般にも解禁し、任意にもかかわらず、2033年には新生児への埋め込み率99%を達成した。


もう一つは国際政治の大転換である。

2035年、北朝鮮の独裁者の暴走による緊張はついに限界を超え、米軍による武力制裁が実行された。


大陸間弾道ミサイルを保有していてもそれに搭載される核弾頭は開発できておらず、電撃的な作戦により、独裁者の発見、射殺に成功するも、平時でも数百万を超える北朝鮮陸軍を中心にしたゲリラ戦術に、散々消耗しベトナム以上の損害を出した挙句に目標を達したとして2041年に撤退。

残った北朝鮮は軍閥が割拠する無法地帯と化した。


アメリカも大統領が任期を全うした後は、戦争の大消耗の反動から孤立主義政策が更に苛烈になって台頭し、海外基地の全撤退を決定し、2044年に世界の警察の座を退く事となった。

結果として中東など不安定な地域の治安はますます悪化の一途をたどる事となる。


そんな中で、世界の警察の座を新たに担おうと出てきたのが中国である。

しかし、中国はそれまでの強引な海洋進出や、領土紛争、一党独裁などで国際社会の信用が得られず、その座に就くことは出来なかった。

そこで2046年に中国の国家主席はそれまでの中国第一主義を撤廃、海洋進出や、領土問題をすべて国連の採決にゆだね、その決定に従い、一党独裁体制の段階的見直しを掲げ、真の国際社会の主導者としてスタートする事を目指した。


しかし長い間、中華第一主義を信じてきた軍部と党幹部は反発。

2048年、遂には軍部によるクーデターが起き、新国家 真中華の樹立を宣言すると同時に、中国こそが世界の中心であり、過去中国の王朝に朝貢した国は自治州として真中華の傘下に入るべきだとする主張を展開。


危機を感じた日本、インド、オーストラリアを中心に東南アジア諸国は2048年に西太平洋経済技術連携機構を結成。

当初は国際社会への無用な警戒と真中華進出の口実にさせないために国際協力での軌道エレベーター建設を目的とした団体として活動を開始。

日本国内では、憲法改正が行われ、自衛隊を自衛軍とし、防衛主体なのは変わらないが、積極的防衛を容認する内容へと変わった。


2050年に真中華クーデター軍は国内の表立った反対勢力の一掃に成功。

2051年 7月に無法地帯化した北朝鮮の武装勢力を懐柔しつつ敵対勢力に対しては電撃的に攻撃、占領しその勢いでソウルを占拠すると指揮系統の混乱に乗じて半島のほとんどを手中におさめ、韓国政府は済州島で頑強に抵抗し臨時政権を樹立。


また、同年8月に台湾にも真中華海軍が侵攻し占領。


台湾の政治家が、亡命を求め沖縄に入るが、日本政府は受け入れを拒否。

他国への受け入れ先が決定するまでの一時受け入れにとどめたが、それを口実に同年10月に沖縄へ真中華軍が進軍。

離島を失う物の沖縄本島でどうにか撃退に成功。


その後、日本は方針を転換。

国内に台湾政府の亡命政府を樹立し、沖縄攻撃を新中華からの戦線布告と見なし、反撃を決定、12月に奪われた離島を奪還。


2053年 3月に軌道エレベーターが完成。

島に囲われた海で台風などの熱帯低気圧のルートから外れているセレベス海に設置され、戦争へのきな臭い流れから、移動できるように作られていた。

名称は建設参加国が信仰している宗教から名づけられ、基部はサンサーラ、エレベーター部分はジェイコブズラダー、静止軌道ステーションは浄土、静止軌道ステーション併設の研究、発電・研究施設は高天ヶ原と名付けられ、イスラム教は偶像崇拝の恐れから命名には参加せず、イスラム伝統のモザイク模様などが施設内に施された。


2053年 4月 軌道エレベーター護衛軍を元に西太平洋条約機構を設立し極東戦争が勃発。



極東戦争勃発時の勢力は下記の通りである。


真中華側

・真中華

・傀儡朝鮮

・傀儡台湾


西太平洋条約機構

・日本

・インド

・オーストラリア

・ベトナム

・フィリピン

・インドネシア

・台湾亡命政権

・済州島 韓国臨時政権


国の数では西太平洋条約機構が優勢だが、兵員数では真中華が飛びぬけており真中華側の優勢であった。

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