正しい仕事のサボり方

ぐうたらパーカー

プロローグ

 うわあああああぁぁぁぁぁああ、もうこんな会社辞めてやるううぅぅあああああああ――


 夕暮れ時の会議室に男が2人。1人は痩身で白髪交じりの髪を持つ40代ほどの男。いかにも上司という風貌。

 そして1人は――


「……もうこんな会社にいる意味もないな……はは」


 うつろな目をして黒い髪を両手でかき乱し、涙をボロボロとこぼす20代の男。とても社会人とは思えない言動。

 壊れたように嗚咽を漏らす彼に、上司風の男がバツの悪そうな顔をして頭を掻きながら声をかける。


「なあ蜂谷はちや、仮にも直属の部長を目の前にして”こんな会社”なんて言わないでくれよ。それに、お前にとっては悪い話ばかりじゃないだろう? 出世だぞ、出世」


 蜂谷と呼ばれた若い男が、涙で赤くした目を上司風の男に向ける。


「僕は出世なんかに興味ないです。責任なんてないまま言われたことだけやっていたい。自分の仕事だけをきっちりこなして優しい女性の上司に褒められたいんです!」


「…………お前なあ」


 上司風の男はがっくりと肩を落とし――


「俺だって、なんで蜂谷なんかにって思うよ……」

「なんか! 蜂谷なんかって言いましたね! もう絶対引き受けるか!」

「うるせえ、いいから引き受けろ! 来月からお前がチームリーダーだ!」

「なんですかそれ! パワハラですよパ・ワ・ハ・ラ!」


 蜂谷の放った4文字は、今の時代「上司」と呼ばれる人たちには少なからずダメージを与える。

 ぐっ、とくぐもった声をあげた上司風の男は眉間にしわを寄せ、こめかみに青筋を浮かべた。


「パワハラ上等だ、この野郎! ほら、辞令だ。受け取れ。」

「嫌です! これは受け取れな――お、おいポケットにねじ込もうとするな、やめ、やめ、やめろおおおおぉぉぉぉ!!」

 

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