第137話 まずはお友達から


「あたしみたいのとは、友達になれないかな?」


「いいえ! 何言ってるんですか! 女友達なんて大歓迎です! 友情からの恋愛とか萌えますよね⁈」


「そこは同意しない」


「えー」


 残念そうな篠宮の声に、カエデの小さな笑い声が重なる。


「じゃあね」


 カエデはそう言い残して去っていった。


 一人残された篠宮は空を見上げる。東京では拝めない星空だ。そしてカエデが敬遠されている訳を考える。


 子どもの頃の『密告屋』。そのせいでαにもβにも、それからおそらく一部の研究員達にも嫌われたのではないだろうか。


『便利屋』になった今でも必要な物資を手に入れるために皆は接するが、それは多分、友達や仲間として受け入れているとは言いがたい。


 みんなカエデさんを苦手そうにしてたからな……。


 でもカエデの方も寂しかったのだ。どうして良いかわからないまま、日々を過ごしているのだ。望まない身体を抱えながら。


「ま、俺が最初のお友達ってのは悪くないよな。そして徐々にお近づきになって——ふへへ」


「その気持ち悪い笑い声は篠宮か?」


「うわっ⁈」


 サクラさんだ。


 別に悪い事はしていないのに、篠宮は慌てる。田舎の夜は暗い。真っ暗な校庭の隅にサクラがやってきたらしい。


「はな、花火はどうでしたか?」


 カエデと二人きりでいた事にどこかやましさを覚えて、篠宮は台詞を噛んだ。


「ああ、楽しかった。が、お前何を慌てている?」


「いえ、別に……」


「カエデに手を出すつもりではあるまいな?」


「なぜそれを⁈」


 失言。


 パキパキと指を鳴らしながら、サクラは篠宮に近づいた。


「あれでも一応、妹なのでな——それに」


「それに?」


 あわあわと後退する篠宮に標準を合わせながら、サクラは構えた。


「後片付けをサボるなぁー!!」


 どーん!


 篠宮は花火の如くアオバヤマ町の夜空に散っていった。





 つづく

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