第37話 変人認定される篠宮先生
怒りの形相で篠宮を睨みつける黒羽の瞳は紅く燃えていた。
「紅い目……」
ショートカッの黒髪に片目を前髪で隠した色白の繊細な顔。その瞳は紅く、黒羽が異形であることを示していた。
だが篠宮の目線はその少し下——黒羽の胸に移っていた。
キッチリと白いブラウスの首元までボタンを止めて、襟元には黒のリボンタイを結んでいる。
そのリボンタイが乗るのは、少し膨らんだ女性の胸。
女子だ!
と、思うと篠宮はすぐにデレつつにこやかに挨拶する。
「初めまして、よろしくね」
そう言って右手を差し出す。
だがその手は黒羽に弾かれた。
「僕らに構うな」
それでも篠宮はめげない。女子に挨拶するのは彼のポリシーなのだ。
「名前、なんていうの?」
「なっ……⁈」
黒羽は思わず鴫原校長を見た。これが例の新任教師かと、目で問う。校長はその口髭をピンと整えながら、うなずいた。
「面白い人でしょう?」
「変人じゃないか!」
「この子は黒羽リリ、三年生のβです。水槽にいるのは……ま、ご覧のとおり人魚のエメロード。こちらは一年生です」
鴫原校長に丁寧に紹介され、黒羽リリは仕方なさそうに頭を下げた。
「リリちゃんとエメちゃんかぁ。会えて良かった」
例のごとくニヤーッとデレデレの顔で挨拶する。黒羽リリは背筋に悪寒が走った。
コイツ変態だ。
黒羽リリは再び鴫原校長を見た。それに気がついた校長は小さく咳払いをする。
「ほら、垣根の無い人でしょう?」
「垣根を勝手に乗り越えてくるヤツですよ!」
「まあまあ、とにかく新しくここで働く方ですからね、顔も知らない名前もわからない、ではいけません」
敬愛する校長先生にそう言われては仕方ない。黒羽リリは渋々うなずいた。
その隙に篠宮はエメロードのいる水槽に近づこうとする。
それにハッと気が付いた黒羽リリがまたもや篠宮の襟首を引っ掴んだ。
「エメロードが水着を付けるまで近づくな!!」
つづく
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