第16話 六姉妹の朝

 月曜日——。


 徳田六姉妹はいつものように起床し、母親の作る朝食を六人揃って食べ、制服に着替えてお揃いのカチューシャをつけ、六人並んで登校する。


 彼女らが同じ学校の生徒たちと会うことはまずない。


 αクラスは自分達だけだし、βクラスの生徒たちは旧校舎に寝泊まりしている。


 町に家がある事になってはいるが、そこは彼らの家ではないのだろう。




 いつもの様に白衣を着て、それぞれの席に着くと、端末の電源を入れる。


 ここまで、一糸乱れる事のない六人同一の行動——。


 その核を担う一花いちかはふっと気を緩めた。


 同時に二花にか三花みか四花よんか五花いつかも緩む。


六花ろっか?」


 どうもこの頃、六花ろっかの調子が悪い。自分とズレが生まれてきている。


「調子でも悪いの?」


 聞かれた六花ろっかは慌てて首を振る。


「なら、いいけど」


 一花いちかは首を傾げた。




 ガラッと引き戸を開けて、サクラが入ってくる。


「起立……」


 同時に立ち上がる六姉妹。


 と、サクラに遅れて包帯グルグル巻きの篠宮(?)が入って来た。


「……礼、着席」


 六人全員が不審者を見る目で包帯グルグル篠宮を見ている。


 コホン、とサクラが咳払いをした。


「皆に残念な知らせがある」


「?」


「えー、図書室の学習端末スケアクロウが故障し、現在修理中だ」


 それを聞いた六姉妹がどよめく。


「そんな、酷い!」


「あれしか楽しみはないのに!」


「なんで壊れたんですか⁈」


「あっ、『悪役令嬢〜先が見えてるので財産持ってさっさと引きこもります〜なのに攻略キャラが会いに来る!?』の新刊観れないんじゃない?」


「えぇーッ⁈」


「……最悪」


 様々な文句の中で、最もサクラにダメージを与えたのは、これだ。


 なんで壊れたんですか?


 さすがのサクラも頬を紅くしてうつむく。篠宮のあまりにズレた発言に、ついうっかり学習端末スケアクロウごと制裁を加えてしまったのだ。


「……すまない、みんな」


 サクラが事情を話すと、一花いちかを筆頭に全員が明るく笑った。


「きゃあ、それで篠宮先生がそんな姿なんですか?」


「かわいー」


 かわいい?


 サクラは耳を疑う。

 サクラが彼の方を見ると、かわいいと言われた篠宮が包帯の上からでもわかるくらい、デレデレしている。


「デレるんじゃないッ!」




 つづく

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