第145話 幸せの仔犬。



 ◇


 今日は一日、楽しかった♪︎


恋濡こいぬ、美味しい?」

『わう! でも、あるじたまのおりょうのほうが、こいぬ、すき!』

「はぁマジ可愛い。今日だけで恋濡こいぬの事が何倍好きになったか分からない……」


 たくさん可愛がって貰って、その後またお外で遊んで、もうお空にお星がキラキラしてる時間。

 恋濡こいぬは主様に案内されて、とっても豪華なお店で夕食なの。主様とデート、楽しかったなぁ。

 それでデートの最後の最後、このお店で主様と二人っきりで夕食なの。えへへ、うれしぃ♡


『こいぬも、あるじたま、もっとすきになったぁ……♡』

「……この、この天然ちゃんめっ」

『ゎぅ、またあるじたま、だいしょぅ、……ぅう』


 な、なんで主様は、恋濡こいぬが普通に話してるだけで、そんな、恋濡こいぬのこと食べたくなるの……?

 嬉しいけど、びっくりしちゃう……。


「ん! でももう夜だし、どうせ帰ったらまた、色々するからね。今は我慢しよーっと」

『わぅ、こいぬ、またかわいがってもらうの、たのしみっ』

「おっとぉ、個室だと恋濡こいぬもストレートに言ってくるから凄い刺さるぞぉ♪︎ 私はロリコンだって言ってるでしょうがぁ」

『……? しってるよ? あるじたま、ちいさいおんなのこ、すきなんだよね?』


 恋濡こいぬだってもう、流石にそれくらいは、しってるよ?

 一応、恋濡こいぬも主様の故郷の言葉は大体知ってるし。ロリコンって言うのは、主様みたいに小さい女の子を好きになっちゃう人の事だよね。

 急にそんなこと言って、主様はどうしたのかなぁ?


「……自分の可愛さに無自覚なギャンかわ幼女がここまで手強いとはっ」

『ぇと、えへへぇ、かわいいっていわれるの、うれしぃ』

「ぐぅぅ、高級料理じゃなくて恋濡こいぬが食べたい……!」

『……ゎぅ、こいぬも、あるじたまに、たべられたぃ』


 お話ししてると、二人ともお手々が止まっちゃうね。

 でも流石に、人が居ない個室でも、お店ではダメなんだよ。恋濡こいぬ、そこまで悪い子じゃないよー?

 えへへ、でも、大好きな主様にまた可愛がってもらうの、楽しみだなぁ。夜はみんな居るから、ルル様とタユ様も居るし、たくさんぎゅぅってして貰える。


「今日は楽しかった?」

『うんっ! たのしかったぁー!』

「そかそか、なら良かったよ。今日は恋濡こいぬ達への、日頃のお礼だからね」

『……でも、こいぬたち、いうほどなにも、してないよ?』


 うん。そう、そうなんだよね。

 恋濡こいぬ達って、結局はただの武器なんだ。だから戦って敵を倒すことが一番の仕事なのに、恋濡こいぬたちって全然お仕事出来てない。

 主様達は恋濡こいぬ達が居なくても、普通に強い。凄い強い。ビックリするくらい強い。正直な話し、別に恋濡こいぬ達なんて必要無いんだ。

 主様なんて、素手でも強いし。


『…………こいぬ、じょうじゃなくて、かたなになりたかったな』

「ん? あ、私のメインが刀なの、やっぱり気にしてる?」

『……わぅ』

「…………んー、それはまぁ、正直ごめんねって思うけど、だからって嘘つくのも恋濡こいぬに失礼だしねぇ。私は刀が一番好きだし」

『わぅ、うそはやだなぁ。おなさけで、いちばんすきっていわれた、かなしくなっちゃう』

「一番得意なのは間違いなく杖術なんだけどね。私もルルちゃんの兎丸見ると、新しい最上級刀装備欲しいなって思うし、恋濡こいぬが刀だったら間違い無くメインウェポンだったよね」

『…………かたなになりたぃ』

「………………あ、だったらさ、契約し直してみる?」

『……わぅ?』


 …………? あ、そっか! 恋濡こいぬの武器種が決まるのって、契約の時だもんね! 一回契約を解除してから、もう一回主様と契約したら、もしかしたら刀に変われるかも知れない!

 主様頭良い!


「ほら、私って一番得意なのが杖術で、一番好きで使用率が高いのは刀じゃない? 相性って意味なら結構トントンだと思うし、ワンチャン行けるんじゃない? こう、ガチャ的な?」

『わぅ! やってみる!』


 ほ、本当は、ほんの少しでも主様と契約切るなんて、泣くほど嫌なんだけど……。

 でも、またすぐに契約してくれるし、契約の時にまた主様とちゅって出来るの、ちょっと期待してるし、なにより刀になれるかも知れないなら、試してみたい。


『えと、じゃぁ、いっかい、きるね……?』

「ほい。すぐにまたちゅっちゅして、契約してね? ……て言うか、契約切りながらちゅーする? 切った瞬間に契約し直しても良いでしょ別に」

『わぅ♪︎ あるじたま、おねがぃ♡』


 わーい♪︎ 主様とちゅーするの好きぃ♡

 個室だし、ちゅーくらい、良いのね?

 椅子から降りて、テーブルぐるーって回って、主様の座る椅子によじ登る。

 我慢出来なくて、主のお口にもうキスしちゃう。ちゅっちゅっ♪︎

 主様のお口きもちいぃ……。わぅ、舌いれちゃぉ♪︎ にゅるにゅるきもちいぃ……、お肉の味がするぅ。

 お料理食べながら、主様も食べてるみたい。えへへ、しゅきぃ♡

 ……あ、違う、契約切らなきゃだよ。えと、わぅ、不安だから、もっと舌をにゅるにゅる絡めても良いかなぁ?

 あ、主様がちゅぅって吸ってくれた。嬉しい。うん、今なら大丈夫。


 ……えぃ!


 ……………………ダメだった。悲しい。


「……えと、恋濡こいぬ? ほら、何回かチャレンジしたら、成功するかもよ? ほらおいで? もっとキスしよ?」

『……ゎぅ』


 ちゅぅ♡


 …………。失敗。失敗、失敗。

 ………………。失敗、失敗、失敗失敗失敗失敗……。


 ひぐっ、うぇっ、出来ないよぅ……。


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